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十話


いやー大分期間が空いてしまいました。申し訳ございません。



 「――よもやあれで生き残り、ここまで来るとわな。目的は私への復讐か?」


 アルト・ヴァン・テレウスはがんぜんに佇む化け物に向かって言葉を投げかけた。

 かつての厳かだが柔和であった雰囲気などかけらもなくただ無機質に問う。


 「言わなきゃわからないか? 随分と玉座(ここ)でふんぞり返って何も学んでないようだな愚王」


 悠は王にさらなる憎悪と軽蔑を向けた。

 手にしていた血塗れの鉈の柄がミシミシと悲鳴を上げるほどに力を込め、今にも飛びかからんとしている身を押さえつけていた。

 そこには横合いから場違いなほど陽気な声がかかる。


 「――旧NATOの(かしら)だな? お前、我と一騎死合おうぞ!」


 現魔王イシュタル・ブランシェルが悠に向かって勝負を申し込む。


 「誰だ小娘。ごっこ遊びなら他所でやれ」


 しかし悠は知らんとばかりに切り捨てる。そもそも二人が対面するのは今回が初めてであった。


 「ほぉ、『現魔王』である我にそれほど不遜な態度を取るものなどひさびさだのぅ」


 その意気やよし、とばかりに腕を組み笑ってみせる幼子に再び視線を向け言葉を発する悠。


 「現魔王だと――? シルフィート・ラル・クロイツはどうした?」


 悠は今はもう前魔王である女性の名を聞いた。イシュタルは少し思い出すような仕草をしてから語りだす。


 「あぁ、あいつか。あいつなら我が殺したよ。

 何かを憂い、自ら命を絶とうとしていたのを我が殺し、肉を喰って我が魔王となったのよ! 食われまいと反撃された時は随分ダメージを負ったがあやつも十全ではなかったからのぅ――ああ! そうじゃったそうじゃった、あいつから言伝を頼まれておったんじゃ。たしか「私は貴方への恩を仇で返してしまった。もう貴方には顔向けできません。せめて、せめて最期には貴方に謝りたかった……悠」とか言っておったな。あの女に大分愛されていたようじゃなお前」


 「……そうか。馬鹿な女だ。死ぬとはな」


 冷徹な悠の言葉にイシュタルは目を丸くする。

 その時、悠の背後から誰かが悠の肩に手を置く。


 「だい゛じょ゛う゛(大将)……」


 「もう過ぎたことだ。気にするな大河」


 悠は大河にそう言って肩の手を外す。悠を除き、知らない。その双眸は閉じられ、瞼の裏に焼き付いて離れない、いつまでも悠が憧れ、強く、気高く、愛しく思っていた女性の微笑みながらも無邪気な様が。


 思いを払拭するかのように再び開けられた双眸には変わらずに燃え続ける憎悪が宿っていた。


 「よいよい、お前、ますます興味が湧いたぞ。是非に――」


 「――――もう、御託は結構だ」


イシュタルの言葉をバッサリと切り捨て、告げる悠。


 「――どうせ、何をしても手遅れだ。お前らは殺すんだからな」


右手に旗槍を。左手に鉈を持ち、全員に聞こえるように旗槍の石突きを力強く地面に打ち付け、怨敵に今一度自身の名を告げる。


 「――――『NATO国家【元帥】、古手悠」


  左手の鉈を眼前にいる者たちに向ける。


 「会いたかったぞ、裏切り者たち」


 「――お前がいるから俺は前に進めん……だから俺のために死ね! 悠ッ!」


 悠は鉈と槍を。対する竜二は小銃と銃剣で迎え撃つ。


 「これ、お前は我と死合うのじゃぞ――むっ!?」


 斧を持ち上げ慌てて二人の死合いに混ざろうとした所を横合いから邪魔するように影が迫る。


 火花とともに不快な金属音が響く。巨大な斧とそれに比べるとても小さい手斧で魔王と人間の腕力で拮抗してみせた。


 「なっ!?」


 驚愕するイシュタル。そこにガラガラ声だが妙に渋みのある声がかけられる。


 「だい゛じょ゛う゛の゛じゃ゛ま゛じじゃ゛な゛ん゛ね゛ぇ゛よ゛。ま゛ぁ゛、だい゛じょ゛う゛の゛う゛ら゛み゛に゛ゃ゛お゛よ゛ばね゛ぇ゛が、でめ゛ぇ゛の゛あ゛い゛でばお゛れ゛だぜ(大将の邪魔しちゃなんねえよ。まあ、大将の恨みにゃおよばねぇがてめぇの相手はおれだぜ)」


 「この、生意気ぞ!」


 「な゛どーごっが、【だい゛じょ゛う゛】――ど どろ゛ぎ だい゛がだ。ごい゛ぐぞがぎ(NATO国家【大将】――轟 大河(とどろき たいがだ。来いクソガキ)」


互いに拮抗するだけの力と力がぶつかり合う。


 「――王よ、こちらに」


 死闘を繰り広げている最中、ガリウスは王を逃すべく動いていた。


 「――随分と舐められたものよね。元帥と大将と少尉(わたし)がいる中で逃げられると思っているなんて」



 「思っているから動いているのだよ」


 ガリウスはコツリとパンプス音を一度だけ響かせる。すると澪が光の輪に包まれ、腕を体を足を縛られる。


 「こうしてしまえばても足も出んだろう。それ光属性の高位束縛魔法だ、あがいても無駄だ」


 少しの間確かめるようにしていたが、興味がなくなったかのように無機質に告げる。


 「――児戯」


 「なっ――」


 その光の輪をなんでもないとばかりに強引に引きちぎる。


 「――NATO国家【少尉】――星野(ほしの) (みお)。お前はもう喋らなくていい、ただただ死んでいけ」


 血の滴る斧を振りかぶり、有無をいわさない速度で投擲する。


 

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