8 リーダーでヒーロー
みんなにせまられて、ぼくが魔王になりかけたとき。
「やばいぞ!あの化け物が、どんどん大きくなってる!」
やってきたのは太郎君だった。
太郎君があせった顔で走ってきた。
太郎君が指さす先を見ると、本当だった。
銅像のお化けが3階建ての家くらいの大きさになっていた。
「雪雄、あいつ、どうすればたおせるの?」
太郎君がぼくに聞いてきた。
ちょっと泣きたくなった。
太郎君は、ぜんぜんぼくを疑ってなかった。
「太郎!なんで雪雄に聞くんだ?こんなことになって、雪雄が一番あやしいだろ!」
「達也、見ろ。そういうこと言うたびに、化け物が大きくなっていく」
ぼくはおどろいた。
さすがリーダー太郎君。よく見てる。
本当に銅像のお化けは、大きくなっていた。
太郎君はぼくをまっすぐ見て聞いた。
「雪雄、何か知ってるんだろう?」
「みんなの心がひとつになれば、あのお化けはたおせる。本当だ」
ぼくの言うことを聞いて、意味わかんない、と真美さんがつぶやいた。
ぼくはまた、イライラした。
すると、銅像のお化けがまた大きくなった。
全部見ていた太郎君が言った。
「そうか。雪雄を疑うと、化け物がパワーアップするってことか。こっちが心をひとつにすれば、逆にあいつは弱くなるんだろう」
そう、そうなんだよ、太郎君!
ぼくは、ブンブンと頭をたてにふった。
「よし。みんな、聞いて。ぶじに助かるためには、心をひとつにしないとダメだ」
さすが、太郎君の言うことは、みんなが聞く。
「こわいと、だれかのせいにしたくなる。仲間を疑ったら、おれたちは負ける。そういうことだろ?雪雄」
みんながハッとした。
かっこいいよ、太郎君。
正義を語るヒーローは、やっぱり太郎君だ。
じゃあ、魔王のぼくはどうしよう。
「心をひとつに、か。どうするかな。雪雄、考える時間をかせいでもらえる?」
太郎君が言った。
ぼくは首をたてにふった。
まかせろってかっこよく言いたかったけど、夢でもはずかしくて言えなかった。
かわりにぼくは、枯れ葉に言った。
「行くぞ!」
これくらいは言いたいよね。
枯れ葉はぼくを乗せて飛び立った。