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お兄様を愛さない人生  作者: 雛雪


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8/8

エピローグ 前世のその後

 アーイシャを屋敷から追い出したあとも、サキートの怒りは消えなかった。

 彼はハビーバが死んだのはアーイシャのせいだと思った。だからアーイシャが平民になって仕事を探していると知ると、その仕事まで潰した。

 それでも気持ちは晴れなかった。

 アーイシャがいなくなれば、この憤りは消えると思っていた。


 けれど何も変わらなかった。

 ハビーバは帰ってこない。自分が失ったものも戻らない。それでもサキートは、自分が悪かったとは考えなかった。

 仕事で問題が起きれば部下のせいにした。領地の収入が減れば使用人を責めた。親族と揉めれば、相手が自分を裏切ったのだと言った。

 一人、また一人と、周囲から人が離れていった。

 それでも本人は気づかなかった。

 やがて財産も減り、屋敷には誰もいなくなった。食べるものさえなくなっても、サキートは誰かが助けてくれると思っていた。だが、誰も来なかった。最後に残ったのは冷たい屋敷と、自分を正当化する言葉だけだった。


「俺は悪くない」

 そう呟きながらサキートは一人で死んだ。

 餓死だった。アーイシャと同じように。


 けれど二人の人生は同じではなかった。

 アーイシャは誰かを恨み続けて死んだわけではない。

 最後まで、自分の人生を生きたいと願っていた。そして今生の彼女はその願いを叶えた。サキートの居ない場所で新しい友人ができ、知らないことを学び、知らなかった景色を見た。

 前世のアーイシャにはなかった毎日だった。


◇◇◇


 窓を開ける。春の風が部屋に入ってきた。

 アーイシャは空を見上げた。

 もう、あの屋敷を思い出しても彼女の胸は痛まない。

 もう誰かの妹でも誰かの妻でもない。

 アーイシャはアーイシャの人生を生きていく。


 微笑みながら、彼女は新しい一日を始めた。


伯父様のことは省きました〜(家督はサキートに継がせ、領地に引っ込んでます。が、前世ではアーイシャが亡くなる前に亡くなっているということで!)

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