作戦開始
はーー…魔石で体力回復したとはいえ、心の疲労まで取れる訳では無いのに…
「ヤマトさん、寒くはありませんか?」
「あ…はい…大丈夫です」
俺は今何故敵の車に乗っているのだろう…
そう、事は20分前。俺は約束をブッチしようと時間になっても部屋から出なかった…のだが、訳あってこんなことになってしまったのだ。
――20分前
コンコン
このノック、誰だか予想がつく。
「…なんです?わざわざ部屋まで出向くなんて。」
「こんにちは。中に入れてくれるかな?」
やっぱりハユンか。こいつは何故かいつもインターホンを鳴らさずに3回ノックをする。
仕方なく部屋の中へ入れ、椅子に座らせた。
「手短にお願いします。俺今日やることがあるので。」
「それは"星加"に行くことか?」
「…え?なんでそのことを知ってるんですか?」
星加はヴィンさんが所属するギルドの名前だ。
「いや〜実は既にお客様が来てるんだ。」
「はぁ!?あの人達もう来てるんですか!!」
確かに昼とは言ってたけど!ていうかこの人はなんで敵を客扱いしてんだよ!
「1階で今お茶を飲んでいるよ。」
「何考えてんですか…」
「実は頼みがあるんだ。」
「無理です。」
こいつの頼みなんてろくなことないに決まってる。
「話だけでも聞いてくれ。報酬は渡すから。」
「…話だけですよ。」
「星加のリーダー、ジン・サンウに仕返しをしようと思うんだ。」
「仕返しって…なんかされたんですか?」
「アンナを襲った反対組織、あれはサンウが指示したようなんだ。」
「でも反対組織って異能者が嫌いなんでしょ?なんでサンウ…さんの言うことを聞くんです?」
「あいつは人を丸め込むのが上手いからな。利用されたんだろう。」
ジン・サンウに仲間をやられたから仕返ししようってことか…たまにはいいとこあるじゃん。
「これで奴も少しは大人しくなるといいんだが」
いや、こいつはギルドに手を出されてムカついてるだけか。プライドの高い奴め。
「そういうことならもちろん俺も協力します。」
俺だって大切な仲間を傷つけられて怒ってるんだ。
「そう言ってくれると思ってたよ。」
「で?俺は何をすればいいんです?」
「作戦はこうだ。」
ハユンは足を組んで話す。
「まずヤマトがサンウと接触し、アンナを襲った反対組織の居場所を聞き出す。そしたら私達がすぐにそこへ向かう。」
「ちょっと待ってください。居場所を聞き出すって…そんなの俺にどうしろと?!」
「そこはヤマトくんのコミュニケーション能力に任せるよ。」
「はあ?!」
こういう時だけヤマトくんって…
「これ、居場所を聞き出せたら同時進行できるようポッケにでもいれておいてくれ。」
ハユンは俺に小さな小型マイクを渡した。
椅子から立ち上がり、玄関へ向かうハユンに質問を投げかける。
「居場所を突き止めたらどうするつもりですか?」
首を傾け、片目でこちらを見て不穏な笑みを浮かべた。
「…組織の建物ごと吹っ飛ばす。」
うわー…やることえげつないな。
「そんなことだろうと思いましたよ。」
「怖いか?」
「いいえ、全く。」
するとハユンは口角を上げて軽く息を吐いて笑った。
「そうか。お客様を待たせている。そろそろ行っておいで。」
「はい。行ってきます。」
「あ!それと、私が合図したら――」
――そうして俺は星加ギルドへやってきた。
「初めまして。本日案内役をさせていただきます。星加ギルド所属のキム・ソアです。」
スラリと背の高い女性だった。長い髪を後ろに束ねている。
「初めまして。"戒星"ギルド所属のヤマトです。今日はよろしくお願いします。」
戒星ギルドはハユン用いるギルドの名前だ。実はギルドに名前があるのを俺も最近知ったのだ。
ソアさんから差し出された手を握り、握手をしたらすぐに離した。
「では、サンウリーダーのお部屋へ案内します。」
彼女に連れられ、俺はジン・サンウの部屋に来た。早まる心臓を抑えて部屋の中に入る。
「――初めまして。会いたかったよ、ヤマトくん。」




