/// 73.異世界の幸せをかみしめて
最終回です。
読み終わりましたら☆一つでも良いので評価いただければ幸いです。
それではどうぞご覧ください。
◆エルザード帝国・大樹の家・執務室
「ラビ―!アンジェー!迎えにきたわー!」
今日は朝からエルザが火竜にのってやってきた。どうしても見せたいものがあるということだった。
前日そんな連絡がきていたのでダンジョンには潜らずに待機ていたアンジェ。早速の来訪にちょっとドキドキする。何かよからぬことを言い渡されるのではないか?無理難題が降りかかるのではないか?
そんな思いでエルザを待っていたのだ。
「いらっしゃいエルザちゃん。で、迎えに来たってことはどこかに行くの?」
「そうよ!あとエルザちゃんは禁止!ギルド長って呼んで!」
「分かりましたよ。ギルド長」
「早速だけどルドルフのところに行くわ!ついてらっしゃい!」
こうして、鼻息を荒くしているエルザを先頭に、ルドルフのところへ向かっていく御一行。
途中で朝食がまだというエルザが買い食いをしながらの道中であった。
◆エルザード帝国・武器工房『頑固な武器屋』帝都中央店
「ルドルフいるー?」
「へい!もちろんだ!早速行くぜ!エルザの姉さん!」
「楽しみねー!」
裏から出てきたルドルフが目を血走らせていたことから、また何かとんでもないものを作ってしまったのだろうと感じたラビとアンジェ。
そんな思いもどこ吹く風で、興奮する二人の後について工房の裏へと入っていく。
「まずはこれだ!」
「おお・・・」
ルドルフから手渡されたのは白いローブであった。銀の刺繍が美しく上から下まで施されている。
「いいわね・・・」
「これが、聖銀を余すところなく練り上げて作った聖銀糸で装飾したローブだ!ストレートに聖銀のローブでいいだろう!生地についてはスノードラゴンの筋肉繊維を加工して編み上げてるから魔法耐性も完璧だ!」
「まあ耐性については結構どうでもいいわ!この刺繍よ!綺麗ね。聖銀の魔力も全体によくなじんでいるわ!これならアンデットも裸足で逃げ出すわね!」
エルザもルドルフも満足気であった。
「で・・・あっちの方ももちろんできたのよね!」
エルザの言葉に無言でうなずくルドルフは、奥の扉を開けると訓練場へと足を進めた。
広い訓練場の中央にポツンと置いてある白い何か・・・
「こ、これが・・・そうなのね!」
「ああ!できたぜ魔道船!会心のできだ!・・・が、まだテストしてねーぞ。出力は試して浮かぶというのは確認した。出力操作もテスト済みで問題ねー!ただし、約束どおり俺は乗ってねーからな!実際飛んだら不具合が出るかもしれん。そんときゃすまん!」
少しだけ不安そうなルドルフのその言葉に反し、エルザはにっこにこであった。
「ここに・・・座ればいいのね!」
エルザの小さな体に合わせて作ってあるそれに、ちょこんと座るエルザ。そして手持ちのハンドル部分を握って魔力を籠める。そしてそれは浮かび上がった。
「後は魔力を操作する感じと一緒だ!魔法の塊を飛ばして操作するようにするだけで、わりかし簡単にできるはず。何かおかしな挙動したら言ってくれ!」
叫ぶルドルフに「わかったー!」と応えながら、エルザは星になった。
とんでもない速さで空へ駆け抜けていった。
思えばこの訓練場に天井が無くなっていた。そのことに気づいたラビがルドルフに確認する。
「ルドルフさん。天井どうしたんですか?」
「あ、ああこれか!そこのボタンで開閉するように改造した!あっ今いじるなよ?姉さんが帰ってきた時しまってたら、しばかれるのは俺なんだから・・・」
ラビさんはため息をついて「あいかわらずね」とつぶやいた。
結局その後ルドルフは後は任せたと先ほど入ってきた方へと歩いていった。多分これから寝るのであろう。目が血走りすぎ怖い。
その後、10分ほど待っていたがエルザは戻ってこなかったため、二人で大樹の家まで帰っていく。まだお昼にもなっていないので悩むところであったが、今日は色々お休みの日、と決めて途中で新鮮野菜を大量に買い込んた。
ラビとスイートルームでごろごろしながら読書タイムとしゃれ込んで、お昼は食堂でまったりご飯。そして夜には焼肉パーティへとなだれ込んでいく。
途中で聞いた話では、どうやらエルザはそのままウエスト地区まで飛んで帰ったらしい。連絡してくれた受付のリベリアはエルザから「すごかった!」って伝えておいてと言われたらしい。
ラビが「良かったですねエルザちゃんって伝えておいてね」と伝言を返していたようだ。
今夜も幸せでお肉がうまい!この幸せをずっと続くように、アンジェはさらに頑張ることを誓った夜であった。
◆ ◆ ◆
その後、連日の修行に明け暮れるアンジェ。
ベリービットの修行をはじめ早1年。すでにレベルは40となりベリービットよりも強くなってしまった。なので一人黙々とより深くダンジョンを潜っていく。
それでもエルザにはまだ勝てそうにない。
そのエルザはというと、毎日どこかへ飛んで行っては好き勝手やっているようだ。とラビから聞いていた。
たまにアンジェにも会いに来て「毎日が忙しく大変よ!」というその顔は、幸せそうだった。
大樹の家のシステムは、今や大陸全土に広がっている。その話を聞くだけでアンジェは幸せを感じていた。
アンジェの人生はまだまだ続いていく。この世界は魔力が多い人は長生きする。そんな話も聞きながら、日々魔力が高まっているアンジェはきっと長生きするだろう。いつか朽ち果てるその日まで、歩みをとめることはない。
大好きなラビ。そしてキュルにエルザ、そして双子ちゃんたち。それ以外にもたくさんの知り合いができたアンジェは、この世界の平和を祈り、その思いを力にこの異世界を突き進む。
アンジェは今日もその力で敵を討つ。だけどやっぱり・・・
「目立ちたくないんですー!」
でも目立っちゃうアンジェの人生はまだまだ続く。
そんなこんななある日の朝・・・
寝ていたアンジェのもとに、エルゼが飛び込んできた。
「アンジェ!お願いがあるの!」
眠い目をこすりながら嫌な予感が止まらない。そんなアンジェだった。
そしてその数時間後には、アンジェはエルザと一緒に例の魔道船に乗り込んで、とある場所へと急ぐのであった。
高速で飛び続けるアンジェ、その背中にはキュルがしっかりと捕まっている。
エルザ、アンジェ、そしてキュル。3人の苦難の日々が幕を開けた。
・・・ END ・・・
ども。安ころもっちです。とりあえずこれでアンジェの物語は終了です。
まだまだ書きたいことはいっぱいありましたが、長くなってまいりましたのでこの辺で……
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