/// 63.ルビリアとローライトの読書週間
大樹の家の強くて可愛いアイドル、双子ちゃん。ルビリアとローライトは今、図書室でお勉強である。
「タケルのためなら私は死ねる!闇にうごめく我が魔力!ここで尽くす事こそ大儀!『大宇宙爆発!』」
「私だってタケルに捧げるこの愛を!見ちゃう見せちゃう見せつけちゃう!真紅の瞳に炎を滾らせこの世のすべてを焼き尽くす!『愛の獄炎!』」
「「二人なら!この愛!この闇!この魔力!咲かせて見せる!愛のれぼりゅ――――ション!!!」」
二人はのりのりで決めていたポーズを解くと、テーブルの上に開いてあった愛読書のページをめくった。
「おねーちゃん!やっぱりタケルくん面白いね!」
「そうだねローラ!絵が描いてないからポーズはわからないけどきっとこんなポーズでかっこよく決めたはず!」
この愛読書は、どこかの転移者が持ち込んだと言われるライトノベルの複製本であった。この類の本は、副ギルド長のハイビスカスの趣味、私物らしい。
大人気シリーズの『異世界転生タケルくん!今宵も闇を明るく照らせ』というライトノベルである。実はこの本は、持ち込んだ転移者こそが、過去に地球で自社出版して数冊しか売れず、失意に泣いた黒歴史の遺物であった。
肌身離さず持ち歩いていたため、一緒に転移されたという。
主人公タケルが異世界でチートとふわっとした英語知識で分けの分からない魔法名を叫びながら邁進するというストーリーだが、この異世界においては大人気ライトノベルとなってしまった。
先ほどから双子ちゃんが演じていたのはヒロインの二人で転生者のカナ&エリである。
二人はまだ6歳、かなり早い中二病デビューであった。
アンジェたちが武具をルドルフに預け、時間に余裕があった双子がめでたく開花した中二病。この病は約ひと月程度続くことになる。
「タケルくん逃げて!この女たちからは闇の波動を感じる!私が、私たちが必ずここを守り切る!ラブandピース!」
「カナだけにいいかっこさせないわ!私だってこの邪気を感じてるもの!タケルくんをどうにかしたいって・・・させないんだから!フォーリンラーブ!」
「「タケルくんの!正妻は!私たちなのよー!『相思双愛台風!』」」
ひとしきりポーズを思案する双子ちゃんの日々は過ぎてゆく。
「ふう。今日もいい汗かいたわね」
「うん!お風呂いく?明日からまたダンジョンだって」
「お風呂ー!ダンジョンも楽しみ!」
「ねー!」
翌日から再開したアンジェ、キュル、双子ちゃんの4名であるが、すっかり影響されたセリフ回しで狩り進む一行。アンジェの苦笑いにも気づかずに、その黒歴史という傷を深めていった。
そしてさらに数週間。その間に双子ちゃんは7歳となった。大樹の家を上げてのお祭り騒ぎである。他の子と違ってすでに冒険者として確固たる地位をゲットした双子ちゃんは特別扱いになってしまうのだが、普段から余ったお菓子という恩恵を受けていた他の子どもたちに文句はなかった。
そんなある日、宿舎で今日もポージングを決めた双子ちゃんだが、たまたま残ってみていたルームメイトに、その極め切ったポージングを盛大に笑われたことから、どちらからともなく双子ちゃんの病は完治することになる。もう二度とこのような過ちを起こさないと二人で誓う。
早めの治療、早めの完治。こうして双子の平和は守られた。
しかし、そのとばっちりを受けたものがいた・・・アンジェである。
散々狩り中に聞かされたセリフに、少しづく感化されていくアンジェ。思えばアンジェも15歳になったばかり。中二病を発症してもおかしくはない。
一人ゾンビを狩る際には「私の中の青き魂よ!この死者に永遠の安らぎを」などと言っては【聖浄の炎】を放ったりしていた。ゴーレムを切り刻む際にも、『残』などとつぶやいてもみた。もちろんいずれも小声である。
セリフを考えることに集中することで、いまいち狩りに集中できない日々は続く。
そんなアンジェも徐々にその病は治り、通常営業となるのはそれから半年の長い闘病生活を送るのであった。
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