/// 62.新装備!完成したよ!
◆エルザード帝国・武器工房『頑固な武器屋』帝都中央店
2週間きっちりに出来上がりが連絡されたアンジェは、いつものように双子ちゃんを含む5人で『頑固な武器屋』へと集まっていた。
「どうでい!会心のできだ!」
いつものようにルドルフの目は真っ赤に充血しており、目の下にはクマがある。まさか2週間寝なかったということはないのだろうが、ドワーフの体力はどうなっているかは分からないので、もしかしたらそんなことも可能かもしれない。
双子ちゃんの姉、ルビリアには赤い瞳に似合う真紅の魔石がはめ込まれた魔力補助のための小さな杖、紺の髪に似合う黒ベースの素早さ強化の腕輪、動きやすく軽い銀色の防具一式に飛び跳ねて喜んでいた。防具一式も伸縮性に優れた魔力布を使われているため、多少の成長にも耐えれるであろう。
実際には成長と共にルドルフが色々と調整するのであろうが、きっとそのうち謎素材を使ってとんでもない魔力鎧などに改造されるのかもしれない。
妹のローライトには紺の髪にぴったりの黒ベースの色合いの魔力補助の効果もあるダガー、瞳の色と同じ真紅の魔石が装飾されている魔力盾、ルビリアと同じ軽い防具一式が装着されている。当然のことながらこちらもサイズはぴったりである。
本人はやや落ち着いているようだが、武具を見つめ、口元がニヤニヤしているのが分かる。
そして裏に設置されている広い訓練設備で、互いが向き合うようにして動きを確かめていた。
そして次に確認すべきはキュルの両手の物である。
+2の成長を遂げていた『竜撃の爪』は『竜撃の魔爪+3』へ、『氷撃の爪』は『氷撃の魔爪』となり+1の補正がついていた。まったく意味が分からない。勝手に成長したとでもいうのだろうか。
さすがにここで試すのは勘弁してくれと言われ試してはいないが、ルドルフの話では竜気の使用量軽減と威力向上になるだろうとのこと。それはまあ嬉しいパワーアップである。
「ルドルフさん・・・キュルちゃんの装備の含有魔力量が以上です・・・」
「苦労した・・・特にあれと精霊魔樹の素材をなじませるのに・・・」
「えっ・・・そんなのどこから手に入れたの?」
「エルザの姉さんに頼んだ・・・」
「・・・」
ルドルフはこの帝都に来る前、エルザに精霊魔樹の素材をくれと丁寧に頼み込んだ。最終的には流れるような所作の土下座と、アンジェとキュルにしか使わないと伝えたところで了承を得た。その素材を惜しみなく使い強化したのがキュルの両手と、アンジェの武器であった。
『星切』は『星魔刀+1』と名前を変え、『火竜の杖+1』は『火竜の妖杖+2』となっていた。
星魔刀を振れば妖しく光りの閃光が走り、剣速が異常に向上していた。火竜の妖杖はルドルフの話で大幅な威力の向上と、80発までため込むことのできる大容量仕様となっているらしい。その分魔石は湯水のように吸収されるのだが・・・
精霊魔樹は、エルフの里の奥に生息する魔樹がさらに魔力をため込んで育った魔物で、大人しい魔物なのだが、エルフたちは率先して捕獲したりはしない。必要な分のみ太い枝を切り、共存しての生活をしている。
ラビも話しを聞いたことがある程度の超高額素材である。ハーフエルフであるエルザはそんなに簡単に手に入れれるものなのだろうか?疑問は尽きない。
「ルドルフさんってエルザちゃんと仲いいんですか?」
「まあ、仲がいいかは別にして、付き合いはなげーな。もう千年以上たってるからな」
「・・・じゃあエルザちゃんの本当の能力を鑑定したことあります?」
「・・・」
ルドルフの時が止まる。
「俺は何も言わねーよ?勘弁してくれ。俺はまだ死にたくない・・・」
「あら、じゃあやっぱりエルザちゃんって偽装魔具とか付けてるんですね!どうせエルザちゃんには言いませんよ!どうです?話してスッキリしちゃいませんか?」
「そりゃー偽装は俺が作った腕輪を付けてるからな!」
ラビがなぜかノリノリで尋問している。ルドルフは「俺が作った」という部分だけは得意げであった。アンジェは星魔刀を「えい」「やー」とうわの空で振りながら、聞き耳を立てていた。
「レベルは40オーバー・・・後は・・・言えん!」
「40っ!・・・年は・・・」
「知らん!いや本当だ!年齢だけは強烈にガードされてる!念入りに覗いたんだが。多分あれ以上長く覗いてたら目が抉られそうだった!」
「・・・」
ラビがのどをゴクリと鳴らし緊張を隠せない様子であった。
「じゃあスキルとか何があり、ますか?」
「・・・レベル40で驚いて、年齢が視えなかったことに苦慮した俺に、視る余裕があったと思うか?」
「で、ですよね・・・」
「この話はやめよう・・・そして忘れた方がいい・・・口を滑らすなよ。巻き添えで死にたくない・・・」
ラビがコクリと頷いたところでこの話は終了となった。
それから4人が充分に装備を確認した後、ルドルフが「もう充分だな。ラビ、後は頼んだ!」と一言放ち、その場で動きを止めた。
武具作成マニアのドワーフ・ルドルフは、目をつぶり両腕を組んで立ったままの態勢で寝息をたてていた。口元を緩ませながら・・・
「さあ、帰りましょうか」
ラビの合図でこの場はお開きとなった。
◆ウェストダンジョン・150階層
武具の納品となった昨日、4人はダンジョンに試し狩りとしてウェストダンジョンの150階層に来ていた。
『火炎ゴリラ』『牙飛び亀』『爆発鼠』が出現するが、爆発鼠の誘爆にさえ気を付ければ、少しパワーアップしたことを思えば、双子ちゃんでも十分対処できそうだと思ったからである。もちろん6歳という年齢だけ考えれば無謀ではあるが、実際は問題なく対応できている。
「天翔ける土の聖霊よ!我らを守る盾となれ!【城壁】!」
ローライトの言葉で双子ちゃんの前に光の壁が出現する。
「空を駆け抜ける風の精霊よ!お姉様の心に届け、【力の根源】!そよげ春風のように!【神回避】!」
アンジェに向かって杖を振るルビリアから2つの光が放たれ、それはアンジェをやさしく包む。次の瞬間、魔物の群れは蛟と星魔刀の二刀流アンジェによって消滅した。
そこに、すぐそばから湧いて出た爆発鼠がアンジェに飛び掛かかるが、すぐにローライトの声がこだまする。
「絶対に守る!【壁】!私の命に代えてでも!お姉ちゃんは死なせない!」
アンジェの周りに出現した障壁にぶつかった爆発鼠は、ボフっと音を立てて消えていった。苦笑いを浮かべならが双子ちゃんを見るアンジェだったが、何やらよく分からないポーズを決めたまま動かない双子ちゃんを見て深いため息をついていた。
キュルは嬉しいそうに鳴きながら上空を旋回していた。
武具を作成する間、ずっとお勉強に励んでいたはずの双子ちゃん。今回の狩りではずっとこの調子であった。本来この世界で呪文なども不要だし、なんならスキル名も叫ぶ必要はない。もちろん【壁】を何度つかったところで、そうそう命の危険にさらされることはない。
まあ本人たちは楽しそうにやっているのだから良いだろう。その程度には思っていたアンジェは気にしなかった。
結局150階層においても苦も無く立ち回れることを確認したアンジェ達は、一旦ギルドへ戻ると、午後の個人活動に勤しむのであった。
もちろんアンジェは午後からはキュルと一緒に、230階層付近を無双していた。
本来は焦る必要はないのだが、どうしてもエルザのあの攻撃が忘れられないでいたアンジェ。もっと強く!もっと稼ぐ!アンジェは次々と足を進めていくが、まだ余力は残っている。できればギリギリの戦いとなる程度には潜りたい・・・
アンジェの向上心は止まらない。
◇◆◇ ステータス ◇◆◇
アンジェリカ 15才
レベル9 / 力 S+2 / 体 S+ / 速 S+3 / 知 S / 魔 S+1 / 運 S+2
ジョブ 聖女
パッシブスキル【肉体強化】【危険察知】【絶対☆聖域】
アクティブスキル【隠密】【次元収納】【大回復】【防御態勢】【神速】【聖浄の炎】【範囲回復】
装備 神刀・蛟(女神の祝福) / 星魔刀+1 / 聖者の衣(女神の祝福) / 生命の首輪(女神の祝福) / 漆黒のローブ(隠) / 罠感知の指輪 / 鑑定リング / 竜撃の指輪 / 力の指輪(女神の約束) / 火竜の妖杖+2
加護 女神ウィローズの加護
使役 キュル(神聖竜)
装備 竜撃の魔爪+3 / 氷撃の魔爪+1 / 神徒の魔力輪(女神の加護)
リビリア 6才
レベル4 / 力 C / 体 E / 速 D / 知 C / 魔 C / 運 A
ジョブ 法術師
パッシブスキル【魔力回復】
アクティブスキル【守護者】【力の根源】【神回避】【鷹の目】
装備 真紅の魔杖 / 紺碧の羽腕輪 / 銀の軽鎧
ローライト 6才
レベル4 / 力 C / 体 C / 速 D / 知 C / 魔 E / 運 A
ジョブ 結界師
パッシブスキル【存在感】
アクティブスキル【壁】【城壁】【注目】
装備 黒魔刀 / 真紅の魔盾 / 銀の軽鎧
◆神界
「やるわね双子!私も、負けちゃいられない!イでよ!私の中の黒き暗黒のブラックドラゴンよ!漆黒に彩られた世界に・・・、いまいちね」
どうやらこの変態に、ボキャブラリーはたりていなかったようだ。
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