/// 54.帝都に行こう
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明日は11時にも更新。
ガタゴトと馬車は揺れる。
帝都までの道のりをイーストギルド所有の馬車に乗りゆっくりと進んでいくのは、聖女アンジェリカと、聖母ラビであった。聖竜キュルももちろん一緒だ。
とはいえ、アンジェとラビはその称号に慣れない。というか納得はしていない。神聖竜となりその称号が定着しつつあるキュルは素知らぬ顔である。
向かうは帝都の中央冒険者ギルト。およびそこに新設された大樹の家、中央本部。
ここから新たな物語が始まる。
「帝都では、目立たずまったりしたいねお姉ちゃん!」
「うーん。それは無理かな?」
「うぅ・・・」
「きゅる!」
もう目立つことは確定しているらしい・・・
これからどうなってしまうのだろうかという一抹の不安をぬぐい去るように、アンジェはラビの暖かな腹筋に頬を寄せ心の安定をはかるのであった。
「あっ・・・お姉ちゃん、なんかきた・・・」
「あら。大丈夫よ。一応護衛の冒険者もいるし。アンジェちゃんはこのままおねんねしましょうね」
ラビの甘やかしに首を横に振るアンジェ。確かにAランク冒険者が4名、馬で左右に帯同している。しかし感じる魔物の気配は多い。そして強そうな気配がする魔物を何体か確認できる。
最近のアンジェは【危険察知】が強化されたのか、そういった気配も感じることができるようになっていた。
「魔物だ!ゾ、ゾンビだ!」
「くっ数が多い!」
「絶対にこの方達を守るんだ!急げっ!」
「と、突撃ーーー!」
護衛の冒険者たちの声が響く。黙って守られることに我慢ができなかったアンジェは、馬車を勢いよく飛び出した。
「もお。アンジェちゃんったら。戻ってくるの待ってようねキュル」
ラビはまったく心配していなかった。キュルも出遅れたので多分出番はないと思っていたのかもしれない。今はラビの膝の上であくびをして目をこすっていた。
そして、2~3分の時間が過ぎた後、アンジェはちゃんと馬車に戻り、ラビから膝枕というご褒美をもらうのであった。
「な、なんだったんだろうな・・・」
「すげーな。青い炎が広範囲で放出されたと思ったら・・・ゾンビやでかい、多分ハイゾンビとかゾンビキングとかだと思うが全部消滅してたな・・・」
「俺らにゃ到底かなわねー方が乗ってるってこった」
「俺らいる?」
「ま、まあ盗賊やらなにやらだったら俺らでヤレばいいだろさ」
「後は、ギルドへの報告もやらなきゃな・・・」
「しっかしスゲーよな。黒いローブからチラチラ見えるなんか高貴な水色のドレスにきらびやかな髪・・・女神様を見たわ俺!」
「まあ、すげーよな。あれが噂の聖女様かもな・・・」
「わかる!俺も青い炎で浄化されるかと思ったもん!」
「邪念を持った男どもも消滅しちゃうかもな」
「そしたら俺ら全員消滅じゃね?」
「違いねー!」
「「「「ぶわはははっ!!!」」」」
その冒険者たちの話は、当然馬車の中にいるアンジェの耳にも聞こえてくるため、耳まで赤くなりラビの膝に顔をこすり付けるアンジェであった。
「ふふふ。アンジェちゃんもう大人気ね」
ラビの撫でる手はやさしく、温かかった。
聖女の呪いの装備の上に羽織っている黒いローブは、それなりに高級な装備でかなりの強烈な隠匿効果があるのだが、残念ながら呪い装備の加護によりその隠匿度合いはかなり軽減されているようだ。
そんなこんなで、帝都に到着した二人一匹・・・いや三人は帝都の中央ギルドへと入っていった。
◆エルザード帝国・中央冒険者ギルト
この、帝都の中央ギルドは、帝都にある東西南北すべてのダンジョンの統括する巨大な敷地を誇るギルドの施設である。もちろんすべてのダンジョンにつながる転移ポータルまである。
そんなギルドは巨大な権力を誇り、ギルド長を中心として4名いる副ギルド長を加えた5名で全てを動かしている。そしてその副ギルド長という役職に5人目、ラビが新たに加わる。
それもギルドの運営に口は出せるが実務はやることはないというポジションとのこと。イースト地区のギルド長であるエルザの力はどこまで強いのだろうか?巻き込まれたくないので考えたくもないが・・・
そればかりか、ここ数週間でギルドの周りの複数の施設、商店などを買い取り、全て2階建ての立派な建物に変更して空きの出た空間を利用して、イースト地区にある大樹の家の施設の10倍はあろうエリアに急ピッチで土木、建設スキル持ちの面々が建物を完成させた。
建て替えた商店なども複合施設のような様相に生まれ変わり、店主たちもホクホクである。帝都の新たな遊びスポットとしても好評のようだ。
そしてその空いたスペースに新設された大樹の家・中央本部、という巨大複合施設に、ラビが聖母として君臨するということで、アンジェの鼻息も荒い。
副ギルド長との兼任ではあるが、大樹の家についても複数の管理担当者がいるので、ラビは大まかな指示をする程度である。ラビは前代未聞のポジションという大出世である。さらには帝都の教会も吸収合併された。もちろん聖母ラビはそこにも口を出せるポジションで・・・まあそういう事である。
そしてその帝都の大樹の家は、アンジェ専用の倉庫を作られた。もちろんラビとの愛の巣も広々とした空間を用意された。ベットは何の配慮かは知らないが、クイーンサイズのベットが一つだけ。聖竜キュル様のために専用の篭も備え付けてあるというのだからなんとも至れり尽くせりである。
帝国を上げて国家プロジェクトで孤児を中心とした育成計画を展開するため、孤児だけではなく貧困層も含めすでに十数名ほど宿舎に寝泊まりを開始している。さらに今後は、帝都の治安の向上にも力を入れるとのことで、少しづつでも孤児などが少なくなることを願うばかりである。
これもすべては、帝国を守る結界用のとして竜玉を献上したことへの恩賞である。そのため、ギルド長など役職的には上の者たちにも、アンジェとラビの意向には全て従うように、と国からお達しが来ている・・・のだが・・・
「これはこれは・・・お早いお付きで。ラビ様とアンジェリカ様、ですね」
「お出迎えありがとうございます。一応ご挨拶に、と伺いました。すぐに向こうに行きますのでおかまいなく」
嫌味臭くラビたちを出迎えたのは、この冒険者ギルドのギルド長マクバレン・ホンダーである。マクバレン侯爵家は代々騎士を輩出する家系だが、その次男であるホンダーはできがわるく性格も悪いが、親のコネでこのギルドのマスターとして好き勝手やっているらしい。
「じゃあ、僕は忙しいからこれで失礼するよ。精々邪魔だけはしないように。大人しくしておくといい。あとは、カトリーヌ。任せたよ」
「畏まりました。ホンダー様」
そのホンダー様は似合っていない派手なマントをバフリと音を立て、何かよく分からない動きをした後、奥の部屋へと入っていった。
「あのバカが失礼しました。ここの副ギルド長を務めておりますカトリーヌと申します。あれは飾りですのでお気になさらずに。すべては私達が管理しております。もちろん重要事はラビ様へご報告いたしますので、何かあれば何なりと・・・」
そうしてふわりとスカートをつまんでお辞儀をするカトリーヌという女性。エルフ族であろう金髪と長い耳、美しい顔、そして無駄のない胸。ついお持ち帰りしたくなるであろう美女である。
そしてその横に、三人のこれまた顔審査で選ばれたのでは?という綺麗な女性たちが並ぶ。
「同じく副ギルド長のハイビスカスです。お待ちしておりました」
「フランソワーズだよ!何でも相談してね。ラビさんもアンジェちゃんも可愛いね!」
「ユリアーナと申します。荒事であれば私にお任せを・・・」
ハイビスカスは真っ赤な美しい髪をした美少女。この方もエルフであろう。フランソワーズは小柄な見た目ロリ少女。「ドワーフ族よ」とラビ談。ユリアーナは紺色ストレートの令嬢のような見た目だが・・・荒事はお任せらしい。竜人族とのこと。
「伺っているかと思いますが、私がラビです。色々とよろしくお願いしますね。そしてこちらがうちの可愛い聖女、アンジェリカちゃんよ」
「ア、アンジェリカ、です。よろしくおねがいします」
なんとか挨拶を済ませたアンジェはラビの背中に安らぎを求める。
「ではわたくしが本館まで案内いたしますね」
やさしく微笑んだカトリーヌは、奥の通路から続く『大樹の家・本館』へと案内してくれた。
◇◆◇ ステータス ◇◆◇
アンジェリカ 14才
レベル9 / 力 S+ / 体 S / 速 S+3 / 知 S / 魔 S / 運 S+2
ジョブ 聖女
パッシブスキル【肉体強化】【危険察知】【絶対☆聖域】
アクティブスキル【隠密】【次元収納】【大回復】【防御態勢】【神速】【聖浄の炎】
装備 神刀・蛟(女神の祝福) / 星切 / 聖者の衣(女神の祝福) / 生命の首輪(女神の祝福) / 漆黒のローブ(隠) / 罠感知の指輪 / 鑑定リング / 竜撃の指輪 / 火竜の杖+1
加護 女神ウィローズの加護
使役 キュル(神聖竜)
装備 竜撃の爪+2 / 氷撃の爪 / 神徒の魔力輪(女神の加護)
◆神界
「アンジェ・・・新たな一歩ね。しかしあのローブ邪魔ね・・・アンジェの神々しさが伝わらないじゃない!まあいいわ!そのうちあれも弾き飛ばしてやるから!」
ご存じ変態駄女神ウィローズは、若干不吉な言葉を発しつつ、日課の腰ふり体操に精を出すのであった。
今年も平和でありますように。
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