/// 48.聖女の力
昨日は新しくできたダンジョンのダンジョンマスターである魔人を倒し、ラビの元に帰り着いたアンジェ。
1階層のポータルでラビに抱きしめられ、そのまま手を引かれるように戻る。途中で冒険者の歓声をなんとなく聞いていた。そのまま部屋に戻ったアンジェとラビ、キュルの三人は、シャワーで温まると、そのまま布団に潜り込んで抱き合うように眠りについた。
翌朝、ラビに撫でられる感触を感じながらアンジェが目覚め、一緒に確認したステータスはレベルが9と2つも上がりS+2という表記に驚いたり、表示されていた聖浄の炎というスキルのことを話す。
鑑定スキル持ちのラビはスキルについても簡単な内容がみれるので、確認すると『祈りの力。魔を滅する力。』となっているとのこと。ラビから「みんなアンジェの無事を祈っていたからそれでかな?」と言う話を聞くと、恥ずかしくなってまた布団をかぶってしまう。
「これが無ければ死んでた」そういうアンジェをまたラビは抱きしめるのであった。
少し遅くはなったが、ラビはアンジェを連れてギルド長室までやってきた。
キュルはべったりとアンジェの頭に乗ったままである。
「来たわね!昨日はお疲れ様。そしてありがとう。アンジェが居なければどうなっていたか分からないわ!」
珍しく甲斐甲斐しく頭を下げるエルザにアンジェも照れて頬を掻く。
「さて!」と気持ちを切り替えるようにいつもの調子にもどったエルザは、早朝到着した帝都の先発冒険者パーティが、新しくできたダンジョンの確認に行き、先ほど戻ってきたという話を聞いた。
3階のボスはデーモンという魔物が単体で出てきて、レベル6の冒険者含む4名のAクラスパーティで楽勝だったとのこと。魔石も3cm大のが落ちるのみなので今のところはそれほどうま味は無いようだという。今後の成長を期待したいとのこと。
やはりアンジェが戦った魔人はかなりのレベルのようで、疲れ切った中でもちゃんと回収してきた20cmほどの特大サイズの魔石は、帝都のダンジョンでもかなりの下層の魔物から回収する様な高価なものだったようだ。
そしてエルザード帝国として正式にアンジェに聖女の称号を与えるとのことを聞いたが、もはやアンジェには称号などどうでもよい話ではあった。
本当は国からは英雄か勇者の称号を、帝王自らが授与式を開いて大々的にやりたいと王命で賜ったのだが、そこはエルザが「絶対に無理よ!」と突っぱねたとのことだ。アンジェもラビもそのことについては、「うんうんそりゃそうだ」と頷いていた。
とりあえず今回の件の話は終了しギルド長室を出た三人は、昼食をラビと一緒に部屋で定番となったオーク亭の直火焼きオーク弁当ボア汁付きを食べて心を休めていた。
午後からはダンジョンに行きたいというアンジェの願いを「今日ぐらいゆっくりしたらいいのよ」というラビに後ろ髪をひかれたのだが、アンジェは聖浄の炎の力を試してみたくて仕方がなかったようだ。
仕方なくラビはアンジェを送り出すと、ギルドの仕事に戻っていった。
◆イーストダンジョン・48階層 / 魔窟
48階層をキュルと一緒に進むアンジェ。空は薄暗く、神殿が破壊されている光景が続く。
早速、魔物の群れがこちらへ向かってきているのを目視した。
海底リングの結果は『死神』が1匹と『闇の騎士』が5匹。死神は見た目はまんま空想上の死神であった。柄の長い鎌に黒いローブ、そして顔は骨である。鎌から禍々しい黒い何かがゆらゆらと出ていた。
闇の騎士の方はというと、漆黒のフルプレートアーマーを着込み、目元は赤く光っている。こちらも何やら黒いオーラを全身から滾らせ、赤黒い刃の長剣を持っている。
それらはアンジェを見つけると飛ぶような速さで向かってきて、それぞれの武器を振るっていく。まずは5匹の闇の騎士がこちらに一斉に長剣を振りかざしてくる。そして・・・
アンジェは早速、聖浄の炎を発動させ右手にその青い炎を纏わせた。その青い炎は、ゆらゆらと大きく煌めきアンジェの手の動きに合わせてふわりと横にゆらめいた。
飛び込んできた闇の騎士はその炎を浴びて消滅した。足元には大きめの魔石が5つコトリと落ちた。やはり魔を浄化するということで効果は覿面であった。
そしてアンジェは目の前の死神に目を向け、『聖浄の炎』と唱えると、手に纏っていた青い炎が弾け出て、その死神を貫くと、またも蒸発するように消滅するのだった。
後には、大きめの魔石と死神の羽織っていたローブがが落ちていた。戻ってからであるが、それは魔法耐性を持った素材であるため、防具などに利用される高額素材ということで、かなりのお値段となり、アンジェの口座にはまたお金が溜まっていくこととなる。
その後も、のんびりと赤い空を目指して進むのだが、もはやこの階層にはアンジェの敵はいなかった。
死神も闇の騎士も同じパターンでなんの不安もなく素材だけが溜まっていくようであった。キュルはもはやアンジェの頭の上に留まると、寝息を立てていた。
昼過ぎに出たアンジェ達であったが、真っすぐ次の階層へと降りる階段までたどり着き、夕刻まではその付近でかなりの数の魔物を討伐し、その素材を回収することとなった。
結局、程よい時間となってから49階層へと降りていったのだが、この階層でアンジェは、一度も蛟を握ることなく終わったようだ。
◆イーストダンジョン・49階層 / 魔窟
49階層に降りると、景色は一転明るい空が広がっていた。
そして48階層とは違い、立派な神殿のような建物が並んでいた。しかしどれも柱と屋根、そしてその建物の中央には何やら神々しい石像があるといった少し変わった風景であった。
もしかしたらあの石像が動くのかな?とも思ったが、とりあえず今日のところは終了ということで近くのポータルにのり帰宅した。
それなりに回収できた死神のローブに、またイーストの株がどんどん上昇していくのは仕方のない事であった。
◆神界
「あーー、何とかなったし・・・良かったわ・・・」
何もする気が起きず今日は朝からずっとベットに寝たままの自堕落女神ウィローズ。
「とりあえずは何とかなったし、今日は休みになったし、寝るっきゃない・・・」
昨日は部屋の外からドンドンと大きなノックで異変を知らせる従者の声が響き、ウィローズが魂の叫びのような大きな声を上げているのを聞いて、女神さまは必死に対処をしていることを感じ取った優秀な従者は、そのまま会議室に戻ると、仲間の従者たちと女神様の対応がなんとか成功するように祈っていたのだった。
そして本日の朝も「現在は何も問題は生じおりません。本日はゆっくりとお休みくださいませ!」と部屋の外から女神を気遣う声がかけられていた。
もちろん女神はベットに寝ころびながら「申し訳ございません。何かあれば、おっしゃってくださいね。すぐに参りますから。今は・・・回復につとめさせて頂きますね」と甲斐甲斐しく伝えていた。
従者が「はっ!あとはお任せを!」と気持ちの良い返事を聞いてから、手に持ったせんべいをバリボリと食べ、下界の様子を見る作業に戻っていた。
「はーだるいわー」
今日は平和になって良かったね。
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