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【完結】内気な聖女アンジェリカは目立ちたくない  作者: 安ころもっち
エルザード帝国・イースト地区編

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46/74

/// 46.覚醒の時

昨日、素材の一部を回収に出すとやはりミスリルゴーレムの落とした塊はミスリルであった。と言ってもミスリルの原石なので、純粋なミスリルの量はその三分の一程度であるという。それだけでも十分な買取金額とはなるのだが、すごかったのはミスリルドラゴンの方である。


1匹だけではあったが、その頭のてっぺんから足の爪の先まですべてが買い取り対象であった。ただしお肉はなかった。その中身は固い筋肉繊維のため、防具などの緩衝材や魔法耐性を付与する防具など利用するというものであり、完全な食用ではなかった。


その1匹だけで買取合計が1000万エルゼとなっていたので、末端はどのぐらいだろうと考えてしまう。


そして今日は朝からラビとデートである。


昨晩相談した結果、武器工房『頑固な武器屋(すたぼんうえぽん)』のルドルフに相談をという形となったため、久しぶりのショッピングデートとなった。



◆武器工房『頑固な武器屋(すたぼんうえぽん)


「こんにちわー!」といつものようにラビが声をかけながら店内に入る。


ドタドタと音がして奥からルドルフがやってきた。


「おお!しばらくきやがらねーから心配してたぞ!」


「なんの心配ですか!」


ルドルフの言葉にラビが突っ込みを入れると「いや・・・他の奴らんとこに持ち込みとか行ったりしてねーかなーって・・・」なんとも小さな声でごにょごにょと話すドワーフである。


「まーなんだ!今日はどうした?」


誤魔化しながらも御用聞きをするルドルフに、ミスリルドラゴンについての話などをしていると、所々食いつきがすごく、迫ってくるたびにラビに怒られ中々話がすすまなかった。


「てーことは・・・そのミスリル原石もまだ大量にあるんだな!」


鼻息荒くして、さあ早く出せ!と言いたそうに手をだしているルドルフに、ミスリルの原石をごろごろと5つばかり出してみるアンジェ。そしてそれを受け取ると熱心に観察しだすルドルフ。しばしの沈黙が続いた。


5分ほどその状態は続き、やっと満足したのかルドルフがカウンターにその原石を置くと、キュルに竜撃の爪(ドラゴニッククロー)を見せてくれと話しかけてきた。


キュルがそばまで飛んできて、差し出されたルドルフの手に、お手をするように竜撃の爪(ドラゴニッククロー)を付けている右手をポフリと乗せた。そしてまたしばしの観察タイムが訪れる。


「よし!」と一言発したルドルフは、カウンターに置いてあったミスリルの原石を竜撃の爪(ドラゴニッククロー)に近づけた。そして魔力をこめてさらに押し当てると、青白い光と黄金色に輝く竜気がバチバチと弾け混ざりあい、そして溶けるようにミスリルの原石が吸い込まれていった。


竜撃の爪(ドラゴニッククロー)が心なしが大きくなっているようだった。


「キュルも頑張っていたようだな。竜撃の爪(ドラゴニッククロー)もかなり成長したがっているしもう2~3個なら吸い込めるかもしれん。とりあえずやれるだけ使っちまってもいいか?」


アンジェは頷きながら、心の中で武器合成イベントきたーー!と叫んでいた。


それから3つのミスリルの原石を吸い込むと、キュルの手に装着されている竜撃の爪(ドラゴニッククロー)は倍ぐらいの大きさになっていた。


「重くない?」と聞いてみると腕をブンブン振って「キュル―!」と楽しそうに鳴いたので問題はなさそうであった。


「早速試すだろ!なっ!裏に来いっ!もしかしたらアダマンタイト砕けるかもしれん!」


急かすルドルフの言葉に若干の恐怖を感じながら裏まで移動する三人。アダマンタイトというのは、前に竜撃の爪(ドラゴニッククロー)を試し打ちした強化したアダマンタイトのことであろう。


あの時は竜気を最大に込めた攻撃でそれなりの傷をつけた結果に終わった。


裏に行くと、前回と同じようにたたずむ強化アダマンタイト。それに向かって上機嫌のキュルがいつものように軽めの竜気をこめて真空刃を放つ。バチバチと音を立てて放たれたその真空刃は、標的にバチンとぶつかり弾け、大きな傷を残していった。


「おお!いいぞ!前回の全力よりもすげー傷が!武具進化に成功した!やったぞキュル!」


ルドルフがキュルのところまで走ってくると嬉しそうに抱き寄せて頭を撫でていた。キュルも喜んでいたのでまんざらでもないのであろう。


「今度は全力だ!やっちまっていいぞ!」


そういって離れたルドルフは、その攻撃を今か今かと待っていた。そしてキュルは力をためる。残りの竜気を振り絞って一撃を放つ。バチバチと竜気が・・・竜気?紫色に染められたそれは、高速で打ち出されアダマンタイトの標的にあたると、ドカーン!と漫画の様な音をたて、後には砕け散ったアダマンタイトの欠片が床にまき散らされていた。



「痛っ!いたたた・・・」


欠片が飛び散った瞬間、軽く危険察知が反応したので、ラビの前に出て防御態勢(ガード)を発動させるアンジェ。それでもいくつかはその体にダメージを与えていた。そしてルドルフは回避しきれないその攻撃?にかなり被弾して小さな傷を作っていた。


「ありがとうねアンジェちゃん・・・なんかすごいことになったわね・・・」


ラビからのお礼の言葉に気を良くしつつも現実離れしたこの光景に頭がついていかないアンジェだが、とりあえずはとルドルフに近づき、大回復でその傷を治していった。


「ああ、す、すまん」と全力でやってしまえと言った手前、怒ることもできないルドルフに、ミスリルの原石を追加で3つほど無言でそばの床に置き、これで許してくれんかな?といった表情で見ていたアンジェ。


さっきの表情ななんだったのかという勢いで「いいのか?」とアンジェの前で正座する謙虚なルドルフ。もちろんと頷くアンジェを確認すると、フヘヘと笑顔を浮かべて床の原石を拾い、どこかへ消えていった。


ヘロヘロと力なく飛んできたキュルとため息をついて座り込んでいたアンジェに「帰ろうか」とラビが帰宅を促した。その後はすべてを忘れるようにイースト地区で聖都ダンジョン産の最高級・黒毛バッファローのお肉を提供してくれる、5つ星・高級焼肉店・東々園(とうとうえん)で贅沢の限りを尽くすのであった。



◆イーストダンジョン・47階層 / 魔窟


楽しい宴の次の日は、パワーアップしたキュルと一緒にもちろんダンジョンへ。キュルもやる気十分で鳴いている。


足早に移動していく二人の前に早速、ミスリルゴーレムが3匹現れた。「キュル!ゴー!」気分は某ゲームのテイマーのようにキュルを送り出すアンジェ。


そしてキュルは真空刃を3度放つ。それぞれに向かっていった真空刃は、1匹の胸元をえぐり、1匹の左足を飛ばし、1匹の頭を吹き飛ばしていた。昨日とはけた違いの威力である。それでも胸元をえぐった最初の1匹以外は、すぐに元通りとなってこちらに向かってきた。


慌てず騒がずでアンジェも加勢する。1匹をXの字に2回切りつければ、魔石を切りつけることに成功して崩れ落ちる目標のミスリルゴーレム。その間にキュルも再びミスリルゴーレムに近づくと、その胸元に深い傷を負わせ、倒しきっていた。本当にたくましくなって・・・と嬉しさがこみ上げた。


これでミスリルゴーレムについては大丈夫。と一安心したが、問題はミスリルドラゴンである。アンジェ自身はパワーアップしたわけではないので、キュルの援護でどのぐらい有利に戦えるのか。


しばらくマッピングしながら進んでいるが、ミスリルゴーレムばかりと遭遇する。そんなに数はいないのかな?なんて思っていた時もありました・・・危険察知が大きく反応したので、壁際まで大きく横っ飛びするアンジェ。


まず間違いなくミスリルドラゴンであろうとういうものが通り抜けた先を見ながら、横目でキュルの方を確認すると、天井ギリギリまで浮かびすぐにアンジェと同じように飛び去ったそれを見ているようだった。


少し離れたミスリルドラゴンに、キュルが真空刃を飛ばす。それを躱しながらこちらにまた飛んでくるそれを迎撃するように構えるアンジェ。距離を詰めてきたミスリルドラゴンに一撃を入れようと(みずち)を振り下ろそうとしたとき、横からキュルの攻撃がミスリルドラゴンの側面に当たった。


少しよろける感じでスピードを落としながらアンジェの横を通り過ぎるので、頭の上に構えていた(みずち)を頭上でくるりと輪を掻くようにして横に振り下ろす。少し遅れたその攻撃は、丁度ミスリルドラゴンのしっぽを丸々切り落とす攻撃となった。


「ギャー」と悲鳴をあげながら地面に落ちゴロゴロと転がるミスリルドラゴンに、さっくりと止めを刺したアンジェは笑顔を浮かべてそれを収納した。


これならなんとか進めそう。と喜びながら飛んできたキュルを抱きしめる。キュルもとても嬉しそうであった。


その後、何度かミスリルドラゴンに遭遇しているが問題なく倒しきっていたアンジェとキュル。どんどん連携が良くなっていくのを感じる。


途中休憩をはさみながらも下へと降りる階段を見つけ、その付近で夕刻の時間まで狩りを続ける二人。アンジェの収納の中には20匹ほどのミスリルドラゴンと100を超えるミスリルゴーレムの魔石とミスリルの原石が入っていた。


「今日はもう終了だね」と気分よく階段を降る。


目の前の48階層の光景は、例えるならギリシャ神話に出てくる神殿が魔王に破壊された。という感じであった。神殿のような建物の残骸が広く続いていく。薄暗い空にはうっすらと赤い光が次への階層を示してくれている。


この階層はどんな魔物がでるのか内心ドキドキしながらも、近くのポータルを踏んで帰路に就くアンジェとキュルであった。



◆神界


「やるわねキュル・・・私も負けていられないわ!もっと・・・もっと神力を注ぎこなまきゃ!!!!」


そう言い放ちながら指先に並々ならぬ神力をためるのは、変態駄女神ウィローズである。


「ほぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!おっ・・・お?んんん???」


突然の揺れ。ガタガタとその空間を揺らすその異変に、下界を覗き見ながらの変態も動きを止める。


そして下界でも大きな地鳴りと共にある場所が・・・


「なっ!!!なんじゃこりゃーー!」


平和・・・ってなんだっけ???


お読みいただきありがとうございます。安ころもっちです。

現在毎日更新でがんばります!

期待してる! 早く続きを! 読んでやってもいいよ!


そんな方はブクマや下の☆を押していただけるうれしいです!

もちろんコメントやレビューなどもいただけると飛び上がって喜びます。


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