/// 39.ラビと行く!里帰りの旅
やっとここまで来ましたが一章はもう少し続きます。
◆イーストギルド1階
狭いギルドの中はここ最近人が増え、騒がしい時間が増えていった。44階層でドラゴン討伐に精を出す毎日を送るアンジェ。日に日に討伐数を上げていき、昨日は100匹近くのサンドドラゴンを討伐していた。
イーストギルドはもはや聖都からも問い合わせが殺到するほど素材買取の打診が続いていた。ギルドは仲介料でホックホクでエルザは毎日高笑いの日々が続いていた。
当然アンジェの口座は下手な貴族の何十倍ものお金が貯め込まれ、それこそ大樹の家を施設丸ごと作ると換算しても100箇所ぐらいならいけるんじゃないか?というぐらいため込んでいた。
初めてサンドドラゴンを狩って戻ってきた日の夜、ラビから「ドラゴンスレイヤーの称号はつかないけど、アンジェちゃんは立派なドラゴンスレイヤーよ!」と独自認定され撫でまわされたため、アンジェはテンション高くドラゴン狩りにいそしんでいたのである。
その結果、ギルド長エルザから「アンジェ!あんたはもう立派なドラゴンスレイヤーよ!ほほほほほっ!」と高笑いしながら他の冒険者がいる前で宣言されたため、定着していた聖女ではなく、ドラゴンスレイヤーと囁かれることも増えていた。
当の本人は、称号はほしかったけど周りの人にドラゴンスレイヤー!と呟かれるのは恥ずかしかったようで、やはり柱の影で赤面しながら小さくなる日々であった。
◆イーストギルド2階・ラビの部屋
その夜、楽しい夕食も終わったタイミングでラビから「1週間ほど休みを取るので里帰りします」という話を聞いた。
ラビの故郷は西部ラミアドルフ獣王国という。獣王ライオネルが治めている獣人のための国。すべてが獣人ではないが生活様式が獣人向けではあるが、他の人種が迫害されているわけではない。
寒さが強まってきたこの冬の終わりぐらいには、毎年里帰りしているらしい。そして一緒に行くかどうかを尋ねられたので当然のように同行することを決めた。今のアンジェはラビがいなくともこの部屋に引きこもった状態であっても蓄えは十分。気が向けばダンジョンに籠ればさらに稼ぎは増えるだろう。
とはいえラビと離れては寂しさマックスであることと、この世界に転生してからイースト以外には帝都に一度いったっきりだ。そのそもエルザード帝国からは出ていないので、新たな国というのは非常に楽しみでもあった。
方角的に言って、東部エルザード帝国のさらに東であるイースト地区から反対側の西部ラミアドルフ獣王国ではかなりの距離がある。途中で中央には聖都ルリアーヒルがあるし、1週間なら移動だけで終わりそうな気がする。
しかし今回の里帰りは獣王国に直接行く、翼竜にのる飛竜便を使うため、半日で行けるという。なんとも便利な世界である。まあ地球にも飛行機もあったしそれと一緒か。キュルもいずれは私を乗せて大空を・・・なんてことを考えていたアンジェ。
次の日、エルザに挨拶をしてから、イーストの外れにある飛竜便乗り場に向かい出発する。
通りでいくつかお土産として、イースト饅頭やら東の都どら焼き、イーストエンド雪見餅といった名産品を買いこんでいく。アンジェは次元収納内に入っているサンドドラゴン素材をお土産にしてくれるとすごく喜ぶと言われていたので、大量にある素材をすべて献上する気でいたが、それは逆に困るといわれて少し自重することにした。
◆イースト・飛竜便乗り場
「ラミアドルフのウェスト地区まで2枚」
乗り場までくると、受付の男にラビがそう告げると、何やら魔道具をガチャンととすると懐かしの駅の乗車券の用の小さな紙が2枚出てきた。「なくさないように。良い旅を」機械的に言われたその言葉を聞き流しながら、チケットを1枚受け取るアンジェ。
お値段なんと金貨10枚×2である。片道一人10万エルザ。それなりのお値段である。
狭い待合室に座って待っていると、他にも10名ほど待っている人が座っていた。そしてほどなく大きなゴンドラを足に括り付けている翼竜がゆっくりと降りてきて、そのままゴンドラの上に止まり大人しく首を下げた。
係員が大きなバケツを持ってでてくるとそのバケツは近くに置かれ、それをガツガツと食べ始めた。給油タイムのようだ。中は何だろう?と覗いてみたらどうやらワイルドボアかなんかの肉をミンチにしたようなものであった。
ガツガツと食べている様を見て周りの客も「おお」と歓声を上げていた。これも一種のパフォーマンスなのであろう。バケツいっぱいのその肉は1分ほどで綺麗に平らげられ、ケフっと小さな鳴き声を出すと、それが合図に様に係員がゴンドラに乗るよう合図をしていた。
中に入ると意外とゆったり乗れそうな広さだった。一番端っこにすわるとその隣にはラビが座ってくれる。キュルは膝の上で大人しくしていた。そして全員が座るとドアは閉まりすぐに浮遊感を感じた。窓の景色がどんどん変わっていく。下を見るとすでに地面はかなり離れており、すでにものすごいスピードで飛び始めていた。
これが成体となった翼竜の本気なのか!と感心するアンジェ。ラビはそれを微笑ましく眺めていた。キュルは膝の上で小さくキュッキュと鳴いていた。
8時間の空の旅。ゴンドラは超高速で飛んでいるのに全く負圧とかを感じない。何か結界のようなものに守られているのだろうか。途中で係員が座っている後方の小さな部屋から何やら操作をしながら「そのまま立ち上がらないようにお願いしまーす」と一声かける。すると天井が開きズズズと音を立ててテーブルが降りてきた。
おお!と声が上がる。そしてそのまま下がってきたテーブルは床に固定された。その上にはまるで焼肉弁当のようなものが置かれていた。陶器のトレーにご飯、お肉そして野菜少々。蓋つきカップに入ったお味噌汁まである。何とも面白いパフォーマンスとなったようだ。
味も中々であったその食事を皆が食べ終わると「あげまーす」という声と共に上へと戻っていくテーブル。物珍しさについつい最後の天井に収納されるまでを見てしまう。ラビは何度も乗っているのか、上を眺めているアンジェを楽しそうに眺めていた。
キュルはふわふわと上がっていくデーブルの近くまで見に行ってはぱたりと閉まる天井に喜びの声を発していた。その鳴き声からかなり楽しかったようでなによりだとアンジェは思った。
それからまた外を眺めながら、まだ見ぬラビの故郷に思いを馳せながら飛竜便は進む。そして夕方、少しづつ高度を下げたそれは久方ぶりの地面へと降りるのであった。
「到着しましたーゆっくりとお降りくださーい」
その声と共にドアが開くと、順に降りていく。アンジェ達は最後にゆっくりと降りると、ドアが閉まりどこかへ飛んでいった。待機室のようなものがあるのかもしれない。何はともあれ、ここが西部にあるラミアドルフ獣王国、ウェスト地区であり、ラビの生まれ故郷でもあった。
◆西部・ラミアドルフ獣王国・ウェスト
ラビに連れられ歩く。
商店街のような街並みにやはり獣人族の方々が行きかっている。もちろんそれ以外の人種の方々も多少は見られるが。建物のドアなども少し大きいかな?きょろきょろと辺りを見渡しながらラビについていくアンジェ。
しばらく歩き、商店街が途切れてから数百メートル。ラビが足を止め「ここが私の実家なのよアンジェちゃん」そういって大きな屋敷に手をかざす。うん。お屋敷だね。
大きな屋敷の格子状の門の前。アンジェ御一行がその前に立つと勝手に門が開き、執事のような男が2名。「おかえりなさいませ。お嬢様」どうやらこの二人が門を開けたようだが・・・
「お嬢様?」思わずつぶやいたアンジェにラビが「父はこの国の商業ギルドの取りまとめをしてるのよ・・・まあ私はそれを継ぐのが嫌で家を出たんだけどね」そう言って可愛く舌を出していた。尊い。
ラビの家名は、アドワルフというらしい。ラビ・アドワルフ。「素敵な名前」とアンジェは頬のスリスリになお一層の力をこめた。
男たちに屋敷へ通されるとラビお経様の部屋ということで広く豪華な家具が置いてある部屋に通された。そしてソファーに座り、ラブラブとした空気を放ちながら、ラビが大まかな今後の予定を話してくれた。
夜になったら両親も帰宅して夕食をとり、明日からはアンジェを連れて観光という名のダンジョンに入ってみないかということだった。人がにぎわう場所は苦手というアンジェへの配慮であろう。
近くにあるラミアドルフ獣王国ウェストダンジョンは、主に獣系の魔物が多くお肉がいっぱいとれるとか。10階層しかないが、すべてが広大なサバンナのようなエリアとなっており、それなりに冒険者は入ってはいるのだが、広いエリアのためそこまで冒険者同士が接近して戦うということもないらしい。
10階層はかなりの実力が必要となるが、精々エルザード帝国・イーストダンジョンの40階層程度の魔物が関の山であった。実はラビも10階層を攻略済みであった。
「お姉ちゃんの戦う姿見たい!」目をキラキラさせてラビに縋り付くアンジェに頬を掻きながらも「はいはい」とまた頭を撫でて甘やかすラビも、久しぶりの冒険者としての活動に、体がついていくか若干心配ではあったが、少しは格好の良いところを見せたい気持ちはあったので、頑張ろうとひそかに拳を握り締めたのであった。
キュルは二人の頭上をくるくると踊るように飛び回っていたので、室内のメイドたちはキャッキャと騒ぎ、お菓子を持ち寄っては餌付けされていた。やはり可愛いは正義である。
その日の夕飯時、もはや満腹となっていたキュルは与えられた部屋に設置された、いつもの寝床の籠にぽっこりお腹を上にしてすやすやと寝息を立てていた。その夕食の際にラビの両親を紹介されたアンジェは、しどろもどろながらもラビにいかにお世話になっているかをアピールしていた。
ラビの父、ライトはこの西部・ラミアドルフ獣王国・ウェスト地区の商業ギルドを取りまとめしているマッチョイケメンである。ラビの後ろから恥ずかしそうに自分を覗くアンジェを、微笑ましく見ていた。ラビの母、アイビーはスタイルも良いふくよかなあれでラビのスタイル抜群なのは母の遺伝なのかと改めて思った。こちらもアンジェをやさしい目で見つめていた。
食事の前にはお土産としてお菓子はもちろん、館にある倉庫で収納から次々とサンドドラゴンを取り出そうとするアンジェを止めるラビ。もう笑いをこらえながら「もういいわーアンジェちゃーん」と腕にしがみついていた。結局一部をしまって3匹のサンドドラゴンを献上していた。お肉は明日の晩餐に利用させてもらうということだった。
そして和やかに食事も終わり、ラビの部屋のベットでゆっくりとピロートークをしながら、明日のダンジョン探索のために早めに就寝となった。だがアンジェは楽しみすぎてまだみぬダンジョンに思いを馳せていたのだが、やはり移動の疲れなどもありいつの間にか眠りについていた。
◆神界
「今日も二人はラブラブね・・・というか45階層はいつクリアするのかしら・・・」
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