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【完結】内気な聖女アンジェリカは目立ちたくない  作者: 安ころもっち
エルザード帝国・イースト地区編

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/// 36.魂と骨と岩と死肉

/// 36.魂と骨と岩と死肉


◆イーストダンジョン・43階層 / 魔窟


今日も朝早くからダンジョンにやってきた二人。アンジェとキュルは気合十分で暗い洞窟の43階層へ足を踏み入れた。


まずはマッピングをしながら次の階層への降り口を見つけなくてはいけない。マッピング用に和紙のような丈夫な紙が束で売っているので用意をしてきた。そして鉛筆の様に使える炭ペンも。道順さえわかればよいので簡易的な書き方でいいだろうと思っている。


ゆっくりと目の前の通路を進む。突き当りまで行くと、左右の二手に分かれているので左側から進む。少し歩くと前方の上の方にうっすらと灰色の霧のような何かがそこに存在していた。念のためと鑑定リングをかざすと『ゴースト』とのこと・・・うん幽霊出た。


ちょっとびっくりはしたけれど、幽霊とかそういった類はスプラッタでなければだが割りと平気な方だった。問題はその攻撃方法や倒し方である。最悪物理無効でもキュルの真空刃であれば大丈夫では?と思ってるアンジェ。


ふと思い出したように、以前購入して護衛任務で利用したっきりの投擲用ナイフを取り出すと、それ目掛けて投げてみる。ナイフはゴーストをすり抜け、ダンジョンの岩壁にぶつかり、ぽとりと落ちた。すり抜ける瞬間に一瞬揺らいだようなので、全く干渉しないわけではないようだが、星切(ほしきり)であればやれる!とは思わなかった。


ミスリルだし、ワンチャンあるかも!なんてことを思うがあくまでそれは希望的観測である。


とりあえず、とアンジェは一歩踏み出す。神速で目の前まで近づくと星切(ほしきり)で横に薙ぐ。そしてゴーストの体はふわりと風圧で瑠れる。次の瞬間、危険察知が反応するち、目の前のゴーストは口を開けると黒い何かを吐き出した。


とっさに体をひねって躱すと絶対聖域(サンクチュアリ)の範囲内に入っていたようでジュッと音を立て消えていった。黒い炎のような攻撃だった。多分直撃したらやばいやつかも。そう思いながら警戒を強めた。


とりあえずは攻撃手段がないので、キュルの方に目線を向ける。するとキュルもこちらを向くとゴーストに向かって真空刃を飛ばす。しかし2度3度とふわふわ躱すゴーストがこちらに黒い炎を飛ばしてきた。キュルはそれを躱すと高速で飛んでいき、至近距離からの真空刃を放つ。


無事それが当たると、ゴーストがバチバチと音をたて後方へ逃げていく。一回ではさすがに倒せないようだが怯ませることはできるようだ。さらにキュルはその後を追い、アンジェもそれに追随する。


進行方向に、別の魔物の群れを見つける。カタカタと音を立てて体を震わせる骨が5匹。スケルトンってやつ?そう思って鑑定リングをかざすとやはりスケルトンだった。捻りがない。


とりあえずこちらも初見。警戒しながらも神速で近づき、振り下ろされた長剣を躱すと首の骨を狙い一撃を入れると、簡単に砕くことができ、その頭蓋はガチャリと音を立てて地面へと落下した。


しかし、肝心の胴体はそのまま剣を振り続けていた。躱すことはたやすいのだが、若干心臓に悪い。首なしの骨がグイグイと迫ってくる恐怖。そして他のスケルトンも攻撃に参加するので今度は腕を、そして足を切り離していく。


横目で最初に切り落とした頭が、カタカタと音をたてまるでこちらを笑っているように見えた。


次の瞬間には、頭の無いスケルトンがそれを拾って元の位置に戻すと、何事もなかったかのようにこちらに向かってきたのである。虚無感を感じながら再び前に立ち、今度は胴への一撃を入れる。カッと何かの手ごたえがあった。


スケスケの骨なのに攻撃を加えたその場所で何かに遮られるように止まった星切(ほしきり)。それを戻すと、再びスケルトンは長剣を振り乱していた。小さく危険察知が何度かなっているので、当たればそれなりのダメージとなる攻撃なのであろう。


ラビからこういった魔物は魔石があるということなので、もしかしたらその部分に見えないけれど魔石があるのかも。そう思ってその胸の部分に向かって両手で星切(ほしきり)を突き立てる。


するとカチンとした手ごたえを感じると、そのまま3cmほどの魔石が後ろに飛び出てきた。そして骨は砂のようになって崩れていった。そして残る4匹もなんとか同じように魔石を抜き、倒しきることに成功した。


さすがに無傷とは言わず、絶対聖域(サンクチュアリ)は当然として、聖者の衣(女神の祝福)に守られているアンジェの肌にも、聖者の衣(女神の祝福)の自動回復では消えないほどの傷をいくつか残していた。


中回復で体の傷を治しつつ、キュルの方を見ると、先ほど追いかけていたゴーストと戦闘中であったが、そこには別の個体が2匹追加されていた。黒い炎を躱しつつ真空刃を放つキュル。均衡しているようではある。


加勢したいのだが攻撃方法がないのでどうしたものかと考えているアンジェは、さらに周りから3匹のゴーストがこちらをめがけて飛んでくるのが見えた。


うん。どうしよう。


ゴーストは真っすぐとアンジェの方に向かってくる。そして黒い炎を数発放たれたので必死で躱すと・・・アンジェの横をお大回りで迂回してキュルの方へ向かっていった。


アンジェは若干パニックになりそうな頭で考えた。なんで私を避けるのだろうか?試しに中回復をキュルに向かっていった1匹に飛ばすと、嫌がるように躱していた。背後にも目があるのか・・・と別のことを考えたが、もしかしたらゲームのあるあるなのでは、と思ってキュルの方に加勢に向かう。


そしてキュルとゴーストの間に立つと、力いっぱいの中回復を飛ばした。


ジジジと燃えるような音がして、ゴーストが逃げるように後ろに移動した。少し小さくなったかも。そして恐怖を感じたのか、6匹のゴーストが一斉に黒い炎を連発してきたので、アンジェは必死に躱していた。キュルも高度を高くして天井ぎりぎりを飛んでいた。


躱しながらもなんとか近づき再びの中回復。今度は一番近くにいた個体が消滅して、スケルトンと同程度の魔石を落とす。その近くにいた2匹もかなり小さくなっていた。


その間にも攻撃は続いていたようで、何度か黒い炎を受けてしまったアンジェ。聖者の衣(女神の祝福)の効果か直接あたる前に浄化されるように消えていくのだが、かなりの熱を感じ、背中や横っ腹にやけどしたようなヒリヒリ感がある。


苦痛に顔をゆがめるアンジェだが、キュルの高いところからの援護射撃もあり、なんとかその後のゴーストの攻撃をかわしつつ全ての敵を中回復で消していった。その戦闘が終わると、周りを見渡して他の魔物が来ていないことを確認する。


ホッと一息つくアンジェとキュル。


アンジェの次元収納の中には魔石だけが増えていく。食料もウエルカムなのだが、魔石もまたウェルカムであった。魔石も換金率が高くいくらあっても良いという世界なので、この階層はおいしいかもしれないと思っていた。


2つの階層を急ぎ抜けてきたため、力不足を感じていたアンジェ「ここである程度こもろうかな?攻撃パターンに慣れてきたなら今回のような傷も追わなそうだし」と思っていた。もちろんこの階層の他の魔物がどのようなものかにもよるだろうが。


休憩がてらに先ほどまでの移動を地図に追加しておく。一気に移動してしまったので途中の脇道もなんとなくで覚えているから戻ってたどってみようかな?と考える。


「ちょっと戻って他の道もいってみようか?」


キュルにそう話しかけると、アンジェは来た道を歩き始めた。戻った道の最初の分かれ道。大体の距離感で地図に戦を書き足してからそちらに曲がる。しばらくは一本道で魔物はいないようであった。


真っすぐに伸びた道を進む。ところどころゴツゴツとした薄暗い洞窟。しかし、アンジェの進んだ先は、残念ながら行き止まりとなっていた。はぁ、とため息をついて戻ろうと反対を向いた瞬間、後方から危険察知が小さく反応する。


慌てて振り向き返しながら、防御態勢(ガード)を使って臨戦態勢を整える。すでにキュルは真空刃を放っていた。アンジェには10cm程度であろう岩がこちらに3つほど飛んできていたので、冷静に躱していた。


ようやく敵がいたのだと認識してそちらを見る。ゴツゴツとした岩の塊。よく見るとそれには手足、頭もついていた。鑑定結果は『ストーンゴーレム』であった。うん。普通。しかしその強さは、ネーミングの普通さとは裏腹に、キュルの攻撃はあまり効果がないようで鬱陶しそうにするだけで、こちらにゆっくりと向かってきていた。


キュルの真空刃があまり効果がないのであれば、それなりの強度を誇るということ。アンジェは両手に構えた星切(ほしきり)で一気に胸と突いた。次の瞬間には危険察知が大きく反応したため、躱そうと動いたアンジェの肩を鉄のハンマーで殴られたような衝撃が襲ってきた。


肩を抑えながら横に転がったアンジェは、それがストーンゴーレムの叩きつけるようなグーパンであったことを、地面を殴りつけている体勢でいたストーンゴーレムを見て認識した。


いったーい!これはヤバイ!肩がはずれる!むしろちぎれちゃう!と涙目になりながら嘆くアンジェは、全力でその肩に充てた手から中回復をかけ続けていた。


傷は治った。だが痛みは残った。そして痛かった記憶も残った。つまりはかなりビビっていた。あれをボディーに食らっていれば、頭であれば・・・死の恐怖がまたしてもそこにあった。冒険者として上へと目指すのであればどうしてもそれは付きまとうのだ。


アンジェも、ボアやオーク、なんなら森林竜あたりを毎日ちまちま狩るだけで、使い切れない財を築くことができる。しかし、周りの人々を助け、支援するためには上に行かなくてはならない。そんな思いが恐怖をかき消した。


目の前のストーンゴーレムを睨み、今度こそ!と両腕に構えた星切(ほしきり)に力を籠める。そこにバチバチと音を発した真空刃が飛び、そのストーンゴーレムの体の中央に穴が開くと、そのまま崩れ落ち、他の魔物と同じ中程度の魔石がごとりと落ちた。


その真空刃を放った主は「キュルル」と力なく鳴き、アンジェの頭の上にぽふりと乗った。どうやら全力の真空刃を放ったため魔力か竜気かが尽きたのか、疲労困憊だったようである。アンジェはその用をねぎらうべく、頭の上のキュルに手を伸ばし撫でるのであった。


ただ、アンジェはすでに気づいていた。背後で何やらガチガチと音がする。まだ危険察知は反応していないので攻撃は始まっていないのだろう。ゆっくりと振り返ると、ストーンゴーレムが・・・うーん・・・見えるだけで6匹程が見える。


やっぱり途中のゴツゴツとしたのはゴーレムが停止状態でそこにいたのか、とストーンゴーレムに遭遇した後に何となく想像していたことが、実現であったことに恐怖した。


一瞬、帰還の札を使って離脱しようかとも思ったが、やはりここは経験を積みたい。そして本日何度目かの気合をいれ、すでにこちらへ手をかざし岩石を飛ばしてきているストーンゴーレムを目掛けて走り出した。


狙うは胸部のど真ん中。さっきキュルが放った全力の真空刃の後の魔石の抜け方をみて、おそらくはそこに魔石があるのだろう。そこを打ち抜くことができれば、一撃で倒せるかも。そんなことを考えながら迫りくる岩石と、振り下ろされる拳を避けながら近づいた1匹に思いきり星切(ほしきり)を突き立てた。


もちろん追加攻撃を警戒して、すぐにバックステップで星切(ほしきり)を引き抜きそのまま距離を取る。


残念ながら目の前のストーンゴーレムの魔石をとらえることはできなかったようだ。星切(ほしきり)でできた傷の位置を確認しながら脳内で修正をする。そもそもの話、個体差があって、魔石のある位置がまちまちであれば意味のないことなのだが、そうなってしまうとアンジェは積んでしまう。今できることをやるしかなかった。


キュルの方は少し回復したようで、天井近くに飛びつつけん制の真空刃を放つっていた。それが当たるたびに反応して手で(はら)うような動作をして足が止まるストーンゴーレム。


先ほどとは違い、けん制のため頭部を狙って真空刃を飛ばしているようだ。疲れてはいてもちゃんと仕事をこなしてくれる優秀な我が()に勇気をもらいながら、また胸元めがけての一撃を加える。


星切(ほしきり)の先が何かにあたった感触が手に伝わる。しかし油断せず一旦距離を取る。そしてゆっくりと目の前のストーンゴーレムがさらさらと崩れ落ち、魔石が地面に落ちた。「ここか・・・」今さっき突いた胸の中心の少し上の方、そこがどうやら魔石のある位置らしい。


「全部同じだったらいいな!」と声を上げながら次の個体に狙いを定める。


そしてその願いは叶い、手にカチリと魔石をとらえる感触を感じ嬉しさに浮かれそうになるが、やはり念のための退避を試みる。そして崩れるストーンゴーレムの体と落ちる魔石。これなら何とかなりそう。と思っていたが油断は禁物。


別の個体から岩石が飛ぶ。討伐した2匹の同胞に怒り心頭なのか知らないが、一層激しく攻撃が繰り出されていた。気づけば近くに残りの4匹ともが集結しておりアンジェを取り囲んでいた。


この状態で拳が降ってくる。それを躱しながら、たまにその体を蹴ってバランスを取ったりと、何とか対処はでいている。上からはキュルが飛び回り、真空刃を放ちけん制してくれている。


避けることに目が慣れてきたころ、その内1匹に狙いを定めて、対面にいる個体を蹴り勢いをつけて胸に一撃を食らわせる。もうすでに位置は完ぺきだったようだ。無事魔石をとらえ、残り3匹。この時すでに何度か打撃を避けきれず、傷を作ってはいたが、今はそんなことをかまってはいられない。


痛みをこらえながらも同じ要領で魔石を打ち抜くアンジェ。残り3匹になったストーンゴーレムは、減った手数をカバーするように激しい攻撃を繰り出すが、やはりそれでは力不足だったようで、数分後にはアンジェにすべて魔石を打ち抜かれ、砂となって消えていた。


回りに追加がいないのを確認するとへたり込むアンジェ。キュルもそばに来て頬にすり寄る。キュルも併せて全体を包み込むように中回復を発動し、体を癒していく。


すでに時間はお昼を回ったであろう。収納からいつものオーク肉のサンドイッチを取り出すと、キュルと一緒にお腹を満たす。座っているうちにどっと疲れがでた。またしても感じた死への恐怖感。今日も何度目かだしゴブリン村の際にも感じたことであった。冒険者も大変な仕事である。


充分な休憩を取った二人は再び足を進める。とりあえずは午後もある程度、マッピング作業を進めなくてはいけない。結局は行き止まりであったこの道を戻り、分岐を埋めていく。


途中、何度かゴーストやスケルトンの群れ、単体のストーンゴーレムと遭遇していた。多少の苦戦はしつつもなんとか倒しきり魔石を回収する。


そして今現在進んでいる道であるが、なんだかジメジメしており、少しだけ景色が違って見えた。


しばらく進むと前方からは何やらズルズルと何かを引きずるような音が聞こえてきた。目を凝らし、薄暗いその奥を見ているアンジェだったが、急に鳴らされた危険察知に横に飛んだ。


前方からは何やら紫色の物体が飛来し、そして地面にばしゃりと広がるように落ちるとジュっと音を立てて消えていった。


「毒?かな?」


アンジェの予想は多分正解で、暗がりから出没したのは見た目は腐った死体であった。アンジェの限界を超えたスプラッタに「ひっ!」と悲鳴が上がる。鑑定リンクの結果は『マッドゾンビ』。名前から言うと毒はなさそうだが「もうゾンビだからね」と納得していた。


目の前には5体のマッドゾンビ。キュルが先制の真空刃を飛ばすが、それはバシャリと汁を飛び散らせ、見た目のグロさをレベルアップさせる行為となっただけであった。本当は近づきたくもないアンジェであったが、我慢の一撃を首へたたき込んだ。


土砂りと落ちる頭部・・・そして動きを止めない胴体から手を振るとまたあの紫の汁が飛んできた。慌てて大きくよけるアンジェだが、そのグロさにパニック寸前であった。


スケルトンと同じ現象。あちらも怖かったがこちらはもっと怖かった。


そのアンジェを庇うようにキュルの真空刃がマッドゾンビに叩きつけられる。質より量、と威力は軽めにしているのだがそれはまた汁を大量にまき散らされる結果に終わった。


同様の攻撃を続けると、心臓のあたりに向かっていった真空刃に対して、マッドゾンビはすばやい動きで回避行動を起こした。体がブレるほどの高速での回避。そこに魔石があるのだろうと容易に予想された行動ではあった。


しかしその動きに驚くアンジェ。横へ飛びつつ体を捻り、真空刃をいなすように躱す動き。まるでアンジェの様に軽い身のこなしで避けていたことに恐怖が再び強くなってきた。あの動きでこちらに飛び掛かってきたら・・・


普段自分が行っている神速でのヒットアンドウェイである。あれを魔物にやられては成すすべなく死んでしまうかもという想像。足が止まるが殺らなくては殺られるこの世界。意を決して神速で飛び込んだ。


心臓をめがけてとにかく早くと星切(ほしきり)を振る。1、2、3・・・横なぎに振った2匹はカツリとした感触が伝わり、魔石に当てることに成功したと実感する。しかしその3匹目が問題である。


素早く体をずらしたと思ったらこちらに手を向けて汁を飛ばした。至近距離からの攻撃に体をひねりながら地面を蹴って躱す。絶対聖域(サンクチュアリ)が大部分を肩代わりして浄化されるのだが、残った汁がアンジェにかかる。


焼けるような痛みがアンジェを襲っていた。それでも聖者の衣(女神の祝福)による防御壁でさらにダメージを抑えてはいるのだろう。しかしその痛みで苦痛に歪むアンジェ。


1匹になったマッドゾンビは警戒を強めてこちらを窺っていた。そこにキュルの真空刃が飛び、魔石を狙ったその攻撃に素早く躱すそれに追撃するようにアンジェも攻撃を加える。しかし手を振ったマッドゾンビからあの汁が飛ぶ。


慌てて攻撃を止めて横に飛ぶことで今度は被弾しなかったようだ。


だが、マッドゾンビの方は動きが何やらおかしかった。こちらを窺う様子を見せているが、先ほどまでのようにこちらに向かってきてはいない。警戒しているのか・・・つかれているのか。


考えてみたらあの動きができるのであれば、もはやこの階層にいるのはおかしい強さである。まあ当然ゲームではないのだからバランスなんて無関係、なんてことを言われればそれまでなのだが、ここまでこのダンジョンでは、相性の問題もあるが基本例外なく同程度の魔物が生息しているのがアンジェの認識であった。


それから考えればあの素早さはおかしい。そして結論としてあの速度は疲れる。ということなのではないか?そう思った瞬間に足が動いた。疲れているなら回復されては困る。そんな思いで攻撃を繰り出すと、またも動かず汁を飛ばすマッドゾンビ。


やはりと思いながら大きく回避しながらさらに近づき、その魔石をカツリと叩き無事倒しきることに成功した。


結果、討伐に喜ぶアンジェではなかった。このエリアは危険だと。今回は5匹であったから良かった。これがもっと多かったら?追加で何匹も途中参加があったら?考えると背筋が寒くなる。


まだ疲れの残る足で来た道を引き返していく二人。その表情は暗かった。なんとか追加の遭遇はなかったが、もしこの先に次の階層への階段があればいずれ通らなくてはならない。その時には何か対策を追加する必要がある。


地図に注意書きを書き添え、その日は一度戻ることにした。とりあえず地図を埋めるまではジメジメエリアには入らない。そう誓ったアンジェとキュルであった。



◆神界


「ああ!アンジェが穢されてりゅぅ!そして一緒にいる私も穢されてるにょぉ!あああ¨あ¨あ¨ーーー!」


そんな奇声を上げ、涎の滝を作っているのは、変態駄女神ウィローズであった。


マッドゾンビの汁に体を焼かれる様を腰をくねらせ悶えていた平常運転中の変態。


もういい加減アウトでいいだろう。人に見られていないからと言ってセーフというのはもう通用しない域に達していると思われる。どう考えても変態である。アウトである。地獄に落ちる所業である。


そこに「コンコン」とノックの音が響く。


一度「んんん」と咳払いをして喉の調子を整える女神。腰のヘコヘコもその動きを止める。


「くっそ!いいとこなにに!抜けろっ!剥げろっ!つかサネろっ!」


そしていつものように暴言で心を落ち着かせ遮断魔法を解除する。冷静に返事をしてから涎をふき取ると、素知らぬ顔でその白い空間の自室をでるのであった。


まあ仕事してるならいいよね。ってことで今日も世界は平和だよ。


お読みいただきありがとうございます。安ころもっちです。

現在毎日更新でがんばります!

期待してる! 早く続きを! 読んでやってもいいよ!


そんな方はブクマや下の☆を押していただけるうれしいです!

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