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【完結】内気な聖女アンジェリカは目立ちたくない  作者: 安ころもっち
エルザード帝国・イースト地区編
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37/74

/// 37.魔石回収業務はじめました。

◆イーストダンジョン・43階層 / 魔窟


アンジェとキュルは今日も朝早くから魔石集めに汗をかいていた。


ゴースト、スケルトン、ストーンゴーレムを相手に無双していた。さすがに2週間もここで狩りを続けていれば攻撃パターンはすべて見切ったといっても良い。初日に苦戦したアンジェは、なんとか一週間ほどかけてマッピングを終わらせたのである。


もちろん、マッドゾンビのエリアを避けてである。1週間籠り続けた結果、この階層なら楽々狩れるほどにパターン化された狩りを続けていた。


そろそろ次の階層?いやいや。その次の階層への降り口が見つからないのである。それはつまりマッドゾンビのエリアを通らなくてはならないという結論にいたる。それ以外の全体的なマッピングは終了し、広大なエリアの中で、次の階層につながりそうな道は特定した。


その一か所は階層の端でもあり、その手前にはマッドゾンビエリアが立ちふさがっていた。もちろん少しだけマッドゾンビエリアがあって、その後は普通にということもあるだろう。しかしながら最悪の降り口まではマッドゾンビ一色よ。という想定もしておかなくてはいけない。


ゆえに1週間かけてマッピングが埋まったた時点で、ジメジメエリアを通ることが必須となってしまったので、打開策としてラビに相談した結果、武器工房『頑固な武器屋(すたぼんうえぽん)』のルドルフを頼ることとなった。目的は魔道具である。


広範囲の炎攻撃ができる杖の作成依頼をしていた。これがあればマッドゾンビであっても、炎攻撃からの魔石貫きといった攻撃も可能になり、何よりそれ以外の先頭についても幅を持たせることができる。作成には1週間ほどということなのでひたすら狩りを続けていた。


本当は魔導士を加えたり、アンジェ自身が広範囲の攻撃魔法を覚えれたら良かったのだが、人見知りには追加メンバーを迎える事は厳しく、自主学習ではあるが攻撃魔法の才能はなかったようだ。


500万エルザとそれなりに高額を提示されていたのだが、二つ返事で作成依頼をしたアンジェは、その分の資金+支援分の確保+さらなるレベルアップといった目標に向かって、連日この階層に入り浸っては魔石を集めまくっていた。


当然、魔石の大部分は売り払っているが、それでも手元にはこの階層で落ちる3cmほどの魔石が、かなりの数ストックされている。


そして午後にはその依頼品が完成する頃合いというので、今日は昼過ぎに切り上げて一度ギルドに戻り、ラビと一緒に完成品を見に行く予定を立てていた。新たな武器にワクワクが止まらないアンジェであった。



◆武器工房『頑固な武器屋(すたぼんうえぽん)


ラビと一緒に『頑固な武器屋(すたぼんうえぽん)』に入るといつものようにルドルフは目を真っ赤に血走らせて、店内に座っていた。


「おはようございます。ルドルフさん・・・また徹夜続きなんですね・・・」


「おおよ!自分の限界を超える感触は何度味わってもいいもんだ!」


ルドルフが何を言っているのか理解できないといったアンジェであったが、とにかく依頼品はできているのであろうことは想像できた。そしてそのルドルフは、手に持っていた可愛らしい杖を前へと差し出すのであった。


いつものようにラビの後ろから手を伸ばすが届かない。そしてラビがアンジェを撫でていない方の手で受け取ると、流れるような所作でアンジェへと手渡した。


細く短い、10cm程度の杖。その先には5cmほどの丸い形に水竜のような青く美しい装飾が施されており、その中央にはくぼみがあった。それらをべたべた触りながら色々な角度から眺めていた。正直デザインは期待していなかったのだが、かなり可愛い作りとなっており、アンジェとラビの顔が綻ぶ。


キュルもなんだか嬉しそうに鳴いている。


ルドルフらしからぬ、その可愛い系のデザインに、もしかしたらいつの間にか変更されていた星切(ほしきり)のホルダーを気にしていたのだろうか。「とても可愛くて素敵ですね」とラビからのフォローに笑顔を見せて頷いていたことからもその可能性は高いと言えよう、


「お前さん、ゴーレムやらスケルトンやら狩ってるっていってただろ。あれの落とす魔石があればそのくぼみに付ければいい。まずは裏に行くぞ!」


そんな適当な言葉を投げつけて裏へと歩き出すルドルフを追って、ラビとその背中に張り付くアンジェ、頭にはキュルといういつもの感じで、試し打ち可能な裏へと入っていった。


「よし!魔石を嵌めたら炎をイメージして杖をふれ。魔法を飛ばすイメージで良いが、範囲魔法を出すための術式は杖から、魔力は魔石から供給してサポートしてくれる。イメージして振るだけでいい!」


その言葉を信じて、収納から取り出した魔石を嵌める。吸い込まれるようにそこに収まる魔石を眺めてしまう。その魔石を触ると、杖にがっしりと吸収されたように固定されていた。


よし!と気合を入れて炎が前に拡散されるイメージで杖を振る。ほんの少しだけ指先から魔力が抜かれる感じがしたが、そのすぐ後で、魔石が軽く光ると手の振りに合わせて2mほどの火炎放射のようなものが発射された。


イメージとしては巨大な手持ち花火を振ったような感じだった。悪くない。最初に吸われる魔力は、小回復を利用した時よりも少ない魔力であった。きっとその微量な魔力でイメージを共有しているのだろうか?なんて魔道具職人のように妄想してみる。


「おい!いいから何回か続けてやってみてくれ!」


ルドルフはこちらに少し大きな声で言ってくるので、ビクッとして腰が引けてしまうアンジェ。ラビはすかさずルドルフを睨んでいた。


気を取り直して再度杖を振る。ボウボウと炎が何度も繰り出される。5回、6回と振るっていく。8回目、振って炎が吐き出され、そしてはめ込んであった魔石は砕け、床に落ちていった。


「ほお、あのサイズの魔石なら全部で9発か。まあ、想定どおりだな・・・お嬢ちゃん!魔石に余裕があるならもっかい試してみんか?今度は9回連続で!」


そう言われて再度魔石を嵌める。文字通り売るほどあったアンジェのストックされた魔石の備蓄数はかなりのものだ。躊躇はない。本当で言えばこのぐらいの魔石で3万~8万エルザぐらいが相場である。普通にいって割高なラーニングコストになりそうだ。


再度繰り出した炎の渦。やはり9発目で魔石は崩れていった。その結果に一人うんうんと納得していたようだ。


「これならお嬢ちゃんのお眼鏡に叶ったか?」


アンジェがコクコクと頭を縦に振り肯定する。


「名前は・・・そうだな、火竜の杖でいいだろう?」


そう言われて再度アンジェが首を縦に振る。


「つーわけで、俺は寝る!ここは好きに使っていから終わったら帰れよ!」


そう言い残してルドルフはその部屋の出口に向かって歩いて行った。


それを見送ると「よかったね。アンジェちゃん」とラビが抱きしめ、頭を撫でてくれた。


「でも、魔石がすぐに崩れちゃってなんだかもったいないわね?」


「ん。でもあれ1回か2回ぐらいでゾンビ倒せれば、魔石出るから安全で楽になるならすごくいい!」


ラビの言葉に抱き着きながら答えるアンジェ。確かに9回炎を飛ばす間に1匹狩ることができれば結果プラマイゼロである。少ない回数で狩れるのであれば尚更である。まずは次の階層に行かなくてはいけない。そのためにはたとえマイナスになったとしても利用しなくてはいけないのだ。


「ちょっと・・・試してきていい?2~3回やってくるだけだから・・・」


「わかったわ。でも無理しないでね。夜は美味しいの用意しておくから、ちゃんと帰ってくるのよ」


早く試したいアンジェはラビに断りを入れると、心配そうな顔をしてアンジェを抱きしめると背中をさする。


そしていつものようにラビに連れられこの場を後にするのであった。



◆イーストダンジョン・43階層 / 魔窟


アンジェは再びこの階層に戻ってきた。この階層の入口付近、最初にジメジメした場所だ。ゆっくりと足を踏み入れていく。すぐにズルズルと引きずるような音がする。ちなみに前回疑問に思っていたこの音は、移動中にマッドゾンビが足を引きずっている音であった。


そしてすぐに危険察知が反応するので横に飛ぶ。右手にはいつものように星切(ほしきり)、左手には火竜の杖をもって神速で距離を詰める。


薄暗い通路で見えなかったその相手の数は4匹。まずますの数である。火竜の杖を振ると炎がボウという音と共に広範囲に放たれる。その炎が消えた後、目の前に2匹のマッドゾンビは皮膚が焼けただれたで白い煙を上げていた。


とりあえず1匹のマッドゾンビの心臓めがけて星切(ほしきり)で切り裂く。素早く避けることなく簡単に魔石を取り出すことに成功した。嬉しさをこらえもう1匹へも攻撃を繰り出す。一瞬回避行動をしようとするが明らかに動きが鈍い。そして無事取り出される魔石を回収すると、残りの2匹に目を向けた。


1匹は後方へ距離を取っていた。もう1匹は?見失ったので警戒を強め周りを見渡すと、後方でキュルの方へ紫の汁攻撃を仕掛けていた。キュルは軽々と躱しているように見えたので、ターゲットは後方に逃げた個体へと向けられる。


一気にそばに近づくと再度炎を放つ火竜の杖。炎が消えるのを待たずその心臓があった場所を横に薙ぐ。残念ながらそううまくはいかないようで、その攻撃はその個体の腕を切りつける程度で終わってしまった。


それでもその個体は動きを止めてウ¨ウ¨ウ¨と唸っていたので、体をくるりと反転させると再度切りつけた。実に簡単な作業であった。魔石は取り出され収納に入るのを確認すると、キュルが相手している最後の1匹に近づいた。


すぐにこちらに反応したマッドゾンビはすぐに横っ飛びで距離を取っていた。前回もそう思ったのだが、マッドゾンビは視認していなくても回避行動を起こす。匂いとか、もしかしたらオーラ的な気配を察知して動くのだろうか。もしくは危険察知スキル持ち?


そんなことを思うが、距離を取ろうとやることは同じである。その数十秒後には、無事収納に魔石が一つ追加されていた。


想像以上の効果である。合計3発の発動。まだ杖の魔石は残っている。その上で4つの魔石を回収している。なにより次の階に進むのであれば非常に有効な攻撃手段を得たことになる。2週間みっちり鍛えていた。ステータスも上昇している。後はこの階層を抜けるだけであった。


それでもここは明らかにおいしい狩場。火竜の杖用に大量の魔石を確保しておくのも良いかもしれない。ということをサラッと考えていたが、その時のアンジェの頭の中は「お姉ちゃんに報告しなきゃ!」が最優先になっていた。


その夜の晩御飯はとても甘く、そして暖かな時間として3人の記憶に残るのであった。


◇◆◇ ステータス ◇◆◇

アンジェリカ 14才

レベル7 / 力 S / 体 S / 速 S+ / 知 A / 魔 C / 運 S

ジョブ 聖女

パッシブスキル 肉体強化 危険察知 絶対聖域(サンクチュアリ)

アクティブスキル 隠密 次元収納 中回復 防御態勢(ガード) 神速

装備 星切(ほしきり) / 聖者の衣(女神の祝福) / 罠感知の指輪 / 鑑定リング

加護 女神ウィローズの加護

使役 キュル(神竜)

装備 竜撃の爪(ドラゴニッククロー) / 神徒の魔力輪(フォロワーリング)(女神の加護)



◆神界


「ぐぬぬぬぬ・・・!」


血の涙を流して下界を見つめる女神ウィローズ。場面は新たな武器をゲットしたその時であった。


「最悪よ!計画が台無しだわ!本当は浄化の水の力を宿した杖をプレゼントする予定だったのに!次にお預けになったから!・・・なったからぁ・・・」


突如号泣である。なぜこうなったかは大体想像できよう。この変態駄女神は、愛しのアンジェのために貯めに貯めた神力を、新しい武器を使う予定であった。本来は40階層でプレゼントするはずであった。そうであったなら今頃アンジェはその杖を使ってマッドゾンビを楽々攻略できていたのである。


しかし現実はうまくいかない。厳しい世界なのである。神徒の魔力輪(フォロワーリング)(女神の加護)という予定外のプレゼント。キュルの存在がこの変態の計画を狂わせたのである。まあ、自業自得ではある。


「いいわ!次は見てなさい!ありったけの神力でとんでもないものあげるんだから!私が一番なのよ!!!」


どうやら通常業務に支障が出そうなことを叫んでいるが、これが変態の一時の気の迷いであってほしいものである。


とりあえずは今のところ世界は平和です。


お読みいただきありがとうございます。安ころもっちです。

現在毎日更新でがんばります!

期待してる! 早く続きを! 読んでやってもいいよ!


そんな方はブクマや下の☆を押していただけるうれしいです!

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