/// 34.リベンジ!このイカ野郎!
◆イーストダンジョン・42階層 / 魔窟
今日は朝からアンジェの鼻息が荒かった。昨日、ラビにこの階層の話をした際に、それならばとギルドのショップに向かい『酸素パイプ』というアイテムを購入した。口に咥え魔力を籠めると大量の酸素を生成するというだけの魔道具である。
主に海などの水中で魚や海藻などを集める海女さんのような作業員が利用するものであるが、10万エルザとそれなりのお値段ではあが、当然アンジェにとってははした金と言っても良い額なので即買いしていた。夜はお風呂に顔を沈め、その効果を試していたのでもう準備万端の状態であった。
そして復讐に燃え、朝早くからこの階層に足を運んでいた。
復讐と言っても、昨日もしっかりその場で倒しきり、今は収納の中に納まっているのだが、息がギリギリで死にかけた恨みは同族のイカに向けられていたのである。とんだ逆恨みである。昨日と同様に慣れた手つきでサンドワームと砂蠍を倒しつつ移動する。攻撃パターンを読み切った二人にはもはや作業と化しているのだ。
そして海岸沿いまでたどり着く。
口には酸素パイプを咥え、準備万端のアンジェ。キュルは回りを警戒してキョロキョロと忙しそうに目線を動かしていた。
まずは何匹かのシーソードフィッシュがその身を飛ばして迫ってくるが、そちらは冷静に躱しながら迎撃をしていく。キュルは器用に撃ち落としたそれを片手で抑え、竜撃の爪で止めをさしてからアンジェの方にポイと投げ捨てていた。
その攻撃が一旦終わると、それを待っていたかのように触手が2本ほどこちらに向かってきた。次の個体が来る前にとアンジェはそれに向かって神速で走り出し、その触手を手早き切りつけ、躱しながら海へ飛び込んんだ。
目の前には驚いた表情のダイオウイカ。とっさに墨が吐かれたが既に遅しでその本体が存在した場所に星切を力いっぱいたたきつけた。
「ぼごっ!!!ぼごぼごぼっ!!!!(このっ!!!イカ野郎っ!!!!)」
ぼこぼこと酸素を吐き出しながら絶叫したアンジェの言葉とともに額にずぶりと埋まっていく星切。突き刺したそれをそのままぐるりと返せば、その命を狩り取ることに成功して、収納へと吸い込まれていくことを確認できた。これでアンジェの心はスッキリ。満たされた心に安らぎを感じていた。
しかしまだまだ海中にいる状況。酸素パイプも正常に機能しており、海中であってもアンジェの行動に制限はないのだが、油断して良いものでもない。
そのまま海中で回りをぐるりと見まわし警戒していると、2匹程こちらを窺っているダイオウイカの存在を確認した。このまま討伐していっても良いかもと思っていたのだが、それより先に、アンジェの予想外の敵が存在することも分かった。
こちらへ向かってかなりの速度で近づいてくる黒い物体。少し時間はかかったがそれがシーソードフィッシュの群れであることを認識する頃にはその群れの中に包まれてしまっていた。
瞬間的に防御態勢で固めていたため、ダメージはなかったが、その群れの勢いのままアンジェは水中を強制移動させられていた。
慌てて星切と急遽出したロングダガーで、シーソードフィッシュを叩きながら海面へ浮上した。近くの浜辺になんとかたどり着き、そこでアンジェめがけて飛んできたキュルと合流してホッと一息をつくことができた。
一応は周りの警戒は怠ることはなかったが、リベンジに燃えたアンジェに新たな難敵が登場し、その攻略に頭を悩ませることとなった。結論を言えば、海中に飛び込むのは控えめにということだった。やはりシーソードフィッシュは海中がホームグラウンドである。狩りずらい魔物ではあるので、積極的に狩らない方が良いのであろう。
そんなこともあり、アンジェは攻撃を仕掛けてきたダイオウイカを海中に潜り倒すとすぐに砂浜へ離脱することを繰り返しながら、次の階層への入り口まで足を進めていた。
多少の困難はあったにせよ、次の階層への階段は見つかった。2階層連続で逃げるように次の階層へ進むことになった二人であるが、相性の問題もあるのだ。という言い訳で心の平常心を整え、次の階層へと降りていった。
そして当然ではあるが、次の階層で戦えなそうなら42階層へ戻り、浜辺でしばらく鍛えてもいいなとは思っていた。海辺の近くでシーソードフィッシュとダイオウイカを適度に狩れば食料としても楽しめるので飽きることはないだろう。今日帰ったらそれなりに回収したその2種を解体してもらい、バーベキューも良いな。そんなことを考えながら足取りを軽くして降りていく。
ついでにステータスを確認したが、残念ながら変化はなかった。
◇◆◇ ステータス ◇◆◇
アンジェリカ 14才
レベル6 / 力 S / 体 S / 速 S+ / 知 B / 魔 C / 運 S
ジョブ 聖女
パッシブスキル 肉体強化 危険察知 絶対聖域
アクティブスキル 隠密 次元収納 中回復 防御態勢 神速
装備 星切 / 聖者の衣(女神の祝福) / 罠感知の指輪 / 鑑定リング
加護 女神ウィローズの加護
使役 キュル(神竜)
装備 竜撃の爪 / 神徒の魔力輪(女神の加護)
◆イーストダンジョン・43階層 / 魔窟
43階層は一転、薄暗い洞窟エリアとなっていた。
これはちゃんと攻略しなくてはダメな奴だ。そう思ったアンジェ。ここ最近は広い空が広がる階層が続いていた。場合によっては、赤い空を目標に、逃げ惑いながら次の階層に進むこともできる状況ではあった。しかしここは洞窟である。
ちゃんとマッピングを埋めつつ、次の階層への入り口を見つけなくてはならない。久しぶりにダンジョンを攻略しているのだという現実に引き戻されていた。
とはいえ今日は終了である。近くのポータルに乗ると入り口まで戻り、そのまま一旦部屋にもどっていく。
◆イーストギルド2階・ラビの部屋
海水と浜風で塩っ辛く砂だらけになった肌と髪をシャワーでキレイに洗い流すアンジェとキュル。温かいシャワーに心もほっこりと落ち着きを取り戻していた。
身支度を整えると、1階へ降りて素材を提出すると、大量のイカ&魚の身が手に入った。ラビに今夜はバーベキュー!と伝えると、残りは帰りに買ってくるとのことで、アンジェはまた二階に戻り、ベットでゴロゴロと惰眠を貪っていた。今夜もきっと楽しい宴が繰り広げられる。
アンジェはそのために今を生きている。魔物を倒し、目に見える範囲で誰かを助け、支援する。そしてラビとの楽しい食事タイム。その幸せだけのためにアンジェは頑張れる女であった。夜は楽しいお食事会。明日は・・・どうしようかな?できれば食材いっぱい取れる階層だったらいいな。そんなことを願いながらただただ時間は過ぎていった。
◆神界
「バーベキューか・・・楽しそうだな・・・今度従者たちと一緒にウェーイってやってみるか・・・でもなーあいつらとじゃなー」
そんな失礼なことを宣うのは、ご存じ変態駄女神ウィローズである。すでにアンジェとラビの食べさせ合いに、涎も血しぶきも出し尽くし、腰に疲れを感じ始めたころ、寂しそうに語った一言であった。
「まあ、たまには従者たちにもこの私の美貌を見せつけつつの褒美を与えてやるのも良いかもね。そしたらまた馬車馬の様に働いて神力集めにも励んでくれるでしょ」
そんな都合の良いことを考えながら、今日が終わろうとしていた。
そしておもむろにベットに突っ伏すと、キュルの装備に忍ばせた分体に乗り移り、いつものようにその感触を堪能するのであった。
女神は連日の寝不足。それでも世界は平和です。
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