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2-6 カノ国 東京ブランチ

 ※ご案内: この章に登場するカノ国の話は、『異次元間ショッピングシステム パラセル 俺が異次元娘の身元引受人になった件』がベースとなっており、今回のカノ国の説明はその要約です。

 前作の世界を前提としていますが、本小説では独自に物語は進みますので、詳しい説明は割愛いたします。

 要約以上に詳しくお知りになりたい方は、前作をご参照ください。 ちょっと長いです。

 東京都、埼玉県、千葉県の3つの県が接する三県境。

 県境には大きな川が流れており、その川により千葉県側とは別れている。

 この付近にはきちんと県境すら定義されていない、地図的に東京都に属するはずであるがそこには住所が無い、いわゆる番外地がある。


 昔から流れているその川は、大きな堤防が出来るまでは、現在の場所をまっすぐ流れていた訳では無かった。

 数十年ごとに発生する大洪水のたびに川の流れは変わっており、流れが移動すると、もとの川の跡には沼地や湿地が取り残された。

 洪水のたびに川の姿は変化し、現在の堤防が出来た事により、それは初めて固定化された。


 堤防が作られた当時は、日本もまだ おおらかな時代であり、川の流れを真っ直ぐにしたことで、川の周辺にあった湿地帯は、堤防の陸地内にとり残された。

 もともとは川であったいくつかの沼地や湿地は、その時はまだ土地とはみなされていなかった。


 しかし、時代と共に湿地帯は徐々に埋められていき、中に土地登記簿上の幻の土地が出来上がっていた。

 さらに時代が進み、周囲には大きな公園や、防災施設などが出来て取り囲まれ、登記台帳にすら記載がないその土地は、誰も触れない眠った土地となっていた。


 しかし、現在そこに住む人たちがいる。

 いや、彼らが不法占拠した訳ではない。



 この土地には、とある国の人たちが住んでいた。

 その国はまだ出来て100年にも満たない、新らしい国である。


 国の歴史こそは新しいが、日本の国としての成り立ちにすらかかわってきた関係があり、その経緯を知る皇族からの依頼により、この地はその国に譲渡されていた。

 そして、今その土地は、名古屋にあるその国の、東京の領事館とした扱いとなっている。


 米軍基地などと同じように、日本国内にも別の国が点在しているのだ。

 その周辺には人がほとんど住んでいなかった事もあり、それはその国が希望している条件にあっていた。

 そこは、日本の行政区分とは異なる事から、電気やガス、上下水道など日本のインフラは届いていない、そこはいわゆる辺鄙な場所であった。


 その土地には、昭和の時代を思い出させる社宅のような、何の変哲もない4階建ての古い鉄筋の建物と、その周囲には温室のような施設がいくつか見えた。

 幸い? 隣接した東京都と道路だけは繋がっているが、柵など敷地には国境は設けられてなく、普通に歩いたり、車で入っていくことが出来るようであった。


 そう、電気がつながっていないここは、今回の停電の影響はなかった。

 と言うよりも、ここは電気を使っていなかった。


 しかし、電気や水道が来ていないと言って、古代人のような真っ暗な生活をしているわけではない。

 彼らは独自の文化による明かりを持っていた。



 ◇◇◇ ◇◇◇ ◇◇◇



 彼らの国とは、カノと言う国、そう『カノ国』である。

 カノ国は、太平洋上、日本から時差二時間ほど東の沖に浮かぶ『カノ島』に創られた独立王国である。

 この島は、生い立ちからちょっと特殊な島であった。


 この島が一つの独立国でもあることは、それほど大きなことではない。

 カノ島は直径が100kmほどの丸い島で、それが国土の全てであるため、国としては小さな国であった。

 日本で比べると、静岡県と同じくらいの面積と言ったところだろうか。


 この島が特殊である理由は、次元を超えてこの世界に来てしまった、いわゆる異次元の人が安心して暮らしていける国として、ある男が創った国なのだ。

 彼はまずこの島を作り、そこに国を創り、そして初代の国王となった。

 次元が異なる地球からやって来て、帰る術を持たない人たちを引き取り、この世界の人たちと協力して普通に暮らしていた。


 次元を超えてまで、この世界に人がやってくる大きな理由の一つに、特別な薬草の存在があった。

 後に、発見されこのカノ国で生産する事になる薬草であるが、その薬草は、『パラセル』と呼ばれる異次元間での商品売買を行うショッピングサイトで、かつて販売されていた。

 パラセルでの販売が途絶えてしまってからは、それを探して異なる次元から人がやって来たのだ。

 多くの要望がパラセルに寄せられ、その薬草の販売を再開するために、パラセルでもその薬草を探していた。


 パラセルでは、仕入れ先となる可能性がある相手に、『スレイト』と呼ばれる黒い板状の電子端末を発行していた。

 スレイトは、パラセルでの商品売買を行うための取引端末である。

 パラセルでの異次元間取引をスムーズに進める為に、スレイトには取引機能以外にも、いくつかの重要な機能が提供されていた。


 スレイトには、その使用者である『マスター』に合わせたAIアバター型の『ヘルパー』を備え、ヘルパーは取引方法や実際の取引の実行、パラセルに関する問い合わせなどをアシストしてくれる。

 マスターはスレイトを使用し、パラセルが求める その薬草に一歩ずつ近づいていく。


 カノ国の成り立ちにおいて重要な事として、3つの異なる次元の地球から、その薬草を探す娘達がやってきた。

 彼女たちは、彼が知らない その薬草を求めてやって来たのだが、彼はそんな彼女たちを受け入れ、保護し、そして一緒にその薬草を探すことになる。


 彼が持つ手がかりにより、彼らはついに薬草にたどり着く事が出来、その後パラセルへの薬草販売も無事に始まった。

 そして、その薬草から最終形態として作られるという、万能薬『エリクサー』の開発までもが彼らの手で行われ、そのエリクサーはこの世界にも福音をもたらした。


 さらに異次元から来た彼女たちが持つ新たな技術や能力などを利用し、それはこの世界の科学と融合し、新たな技術が生み出されていく。

 新たに作られた技術やパラセルとの薬草売買を通じ得た資金により、その男は異次元の人であってもこの世界で安全に暮らしていくために、独立した国を創り出すことを考えた。


 異次元からもたらされた新しい技術は『摩導具』と呼ばれ、その技術を用いて太平洋上にカノ島を造り、その島をカノ国として独立国家の宣言をする。

 カノ島の技術の中心となっている摩導具であるが、これは宇宙空間から地球に流れ込む『フォース』が結晶化した、『マナクリスタル』と呼ばれるものを使用していた。


 しかし、残念なことに、この次元の地球にマナクリスタルは存在していなかった。

 ところが、魔法力を持つ異次元人の能力により、体内のマナ溜りにフォースを結晶しマナクリスタルが生成できることが判った。

 その後、地球の地磁気が集まる北極においてフォースを人工的に結晶化する無人工場が作られ、マナクリスタルの量産化に成功し、それは摩導具の大量生産をも可能とした。


 それまで北極の製造工場で造られ、カノ島へ送られてきたマナクリスタルだが、今回の太陽風によってそれが失われてしまった。

 その為現在、カノ国では将来のマナクリスタルをどう確保するか大問題となっているのだが。



 カノ島では、基本的に摩導具を中心とした生活基盤を用いているため、基本的な文化が異なっている。

 カノ国を創る際に何人もの仲間と知り合い、彼らと一緒にカノ国を作っていく。

 異なる次元からやって来た彼女らは初代の奥さん、妃となり、カノ国の歴史がそこから始まる。


 初代達が生み出した摩導具は、珍しい事もあり最初は世界的なブームとなりカノ国からの輸出も多くなされたが、現代にはすでに電化製品があふれていた。

 そのため、既に使っている電気製品を捨て、お金を払って新たに摩導具に買い替えるほどのメリットがなかったため、やがてブームは去っていった。


 本来、摩導具はブームなどでは済ませられるものではない。

 それは、今の地球のエネルギー問題をも解決する重要な物であった。

 しかし、電気エネルギーを必要としないエコな明かりも、残念なことに生活の明かりとは成り得なかった。

 今までも電気を使わない明かりはあり、コンサート会場の観客が振ったり、夜店で腕輪として売られているケミカルライトなどと同じく、摩導具はちょっと奇異な製品ぐらいに見られることになった。


 しかし、一般には知られてはいないが、この裏では石油メジャーを中心としたエネルギー産業、自動車産業や電気産業など、マナクリスタルや摩導具が普及すると大きく衰退すると予想される多くの産業界が圧力をかけていた。

 それら企業は、マスコミの大スポンサーである。

 テレビや新聞のすべては、ネガティブキャンペーンが密かに行われ、やがて摩導具は世間から葬り去られてしまったと言う話が真実のようだ。


 日本は、カノ国立ち上げの時から友好関係にあり、名古屋のカノ国大使館は今でも健在ではあるが、日本以外の国との国交は事実上途絶えている。

 カノ島は既に島内だけでの自給体制が確立しており、島内に存在する異次元人の安全の事もあり、不用意な島外からの人間の入国を減らしたかった。

 その為、自然と日本以外との交流は途絶え、鎖国したわけではないが、カノ国や摩導具の記憶は人々の意識から消えていった。


 カノ国の初代国王や妃たちは、人知れずにカノ島から姿を消し、それからかなり長い年月が過ぎていた。


 初代王により、カノ国国王はスレイトのマスターであることが定められ、マスターのみが国王の資格を得て、国の権力を持つと決められていた。

 例え王の直系であってもスレイトを持たない者には統治権は無く、一般の国民と平等に扱うと言う強い決まりがある。


 そのスレイトだが、所有者であるマスターが死亡すると一旦世の中から消え、そのマスターとなりうる遺伝子を持つ者が現れると、決められた場所に再び現れると言われている。

 次にマスターになる者は、スレイトに呼び寄せられて、スレイトがマスターを認めた時、あらたなカノ国国王が誕生する。


 今、スレイトは戻ってきていないので、初代がどこかで生きている可能性が残されているので、王の消息は不明ということになっている。

 そして国王不在の場合、カノ国評議会が王に代わってカノ国の運営を行う事に成っている。

 そして王が姿を消してから何十年も過ぎ、スレイトが戻らないまま、第2世代すらもカノ国の運営から退き、現在のカノ国の運営は第3世代、そして第4世代達に受け継がれている。



 この三県境にあるカノ国の土地は、彼らの間では『東京ブランチ』と呼ばれており、マリエはここでは正式な名前であるマリーと呼ばれていた。

 マリエは留学時から東京ブランチに住んでおり、現在はアルバイトとして、湯島に有る遠藤建築都市計画事務所まで、ここから通っている。


 マリエは気が付いていないが、東京で暮らす事になった彼女を密かに見つめる男がいた。

ちょっと書き溜まっているので、日曜日にも更新を行います。

当面は火木土日の週4日とします。


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