レッツ・ショッピング!!
お久しぶりの投稿になります。
叶に連れてこられたところはそれはもう、展望台がありそうなほどの高層ビルだった。
……マジすか。
「叶くんや?」
「なんですかな?」
「……ここ、値が張るんじゃないの?」
「当然でしょ?てか姉さ……王華様は三沢家のご令嬢なのですから服にも気を付けないといけませんよ」
何故急に表向きの言葉使いにしたのかはわからないけど、今はそれより叶の言葉に絶望しかない。
だって高いんだよ!?安易に汚せないじゃん!!
こうなったら叶にも内緒で安物の店にいくしかないのか……!!
しょうもない計画を練っているオレをスルーして中に入ってく叶。おーい、置いていくなよー。
あー、にしても中も中ですっごい煌びやかだな。胃が痛くなってきた……イタタタタ。
「そういえば、王華様は学業を学び直しているそうですね?やはりそちらの方も……?」
「ええ。といっても、簡単な歴史ですけど」
「でしたら俺も少しは手伝えるかと……王華様は自分の苗字に入っている数字の意味をご存じですか?」
「数字……?漢数字なら入っているけれども?」
「それはですね、一から三までが同等の権力があるということなんです。そしてその御三家より四から六、七から十と分かれていて、それぞれが階層を表していたりするんですよ」
「それは習いました。ピラミッドみたいですね。……でも、その場合私とあのこんや……三沢様はどう説明すればいいのでしょうか?」
「同等、と思ってもいいかと。……それ以外の理由もありますが」
「へー。じゃあ一応三沢のオレは三番目か」
「……言葉使い」
おっと危ない。ギリセ?叶をみたら横目で呆れていた。あ、ギリアウトでしたか……。
うう、この素はどうやっても無理だ。叶が相手だと隠す意味もないし。
てか、それ以外の理由ってなんだろう?
もう叶が話さないから聞かないけどさ、今は。そう、今は。
絶対後で聞いてやる。隠しても気になったから根掘り葉掘り聞いちゃうからね~!!
エレベーターに乗って三階に行くと、そのフロア自体が服屋かって思うぐらい服だらけだった。
……うん。めちゃくちゃ高そう!!何買えばいいの!?てか買っていいの!?
「俺は二階のサービスコーナーにいるので好きに買って来てください」
「え、叶君は一緒に行ってくれないの!?」
「俺アイス食べたいんで」
「オレにもください」
素が出たけど叶も半分出てたからお相子じゃないかな!?
つーか!!お前荷物持ちしたくないだけだろ!?絶対そうだろ!?
アイスは買ってくれると約束して(一方的に)叶はさっさと下に降りて行った。……ちくしょうめっ!!
さて、あらかた叶に文句を言ってすっきりしたけど、どうしよう?
とりあえずズボン……ジーンズの安めのを買って……夏も近いからこの体に合いそうな夏服を買お。中身が自分じゃないと思ってれば一種の着せ替え人形だよね!!うん!!……この歳でそれはダメだよな。
今までの自分の体とは違うからスタイルと顔を見直したほうがいいかもしれない。
|私(王華)の体って美脚なのと美人顔ってのはわかってるけど……わざわざ試着室に入って合わせるのって何年ぶりだ?前世なんてもう自分の体なんてわかりきってたから見て買うようになったぞ?
服を買う前に階を見て回っていると綺麗なアクセサリーの店があった。
ネックレス、ペンダント、イヤリング……このペンダントは叶に合いそー……ん?
店内を見回していたらペペンダントのコーナーに見覚えのある髪の色の奴がいた。うわぁ、まじないわぁ。
回れぇ右をしようとしたらそいつが振り返ってしまい、目が合った。
「「……」」
なんでこんなところに婚約者サマがいるのかなー?
あ、聞いてくださいよ皆さん!!オレ頑張って婚約者の名前覚えたんですよ!この婚約者、三沢春っていうらしいです。……なんで季節の名前入ってんだよって思ったのオレだけ?
にしてもついていない。折角の休日でこんな奴に会うなんて。
だがオレは中身は大人だ。大人の対応を見せてやろう!!とりあえず先日の事はなかったことにして。
「おはようございます、三沢様」
御機嫌ようは今のオレに合わない気がして、ついこう言ってしまう。
でもさよならしないで相手の顔見てあいさつしただけマシだと思うんだ。
てかこうも距離が近いと実感するが……こいつ、身長いくらだよ。あの初対面の時にも思ってたんだけど……。
女子の中でも高い身長であるオレが見上げるぐらいとか、ホントなんなん?
……男子の成長期うらやま。
「……三沢様?」
「何か間違っていましたか?」
いいじゃん、苗字で。
千穂さん情報だとオレが名前に様でこいつが苗字に様付けだって知ったのに。
同じ三沢だからそう分けてるって。
まさか|私(王華)はこいつのこと名前呼びだった?
だったとしてもオレはこいつの名前なんて呼びたくないぞ。マジないから。
ありえな~い。
「……記憶喪失なのは本当らしいな」
「ええ、そうらしいです」
「てっきり俺の気を引く演技だと思ったぞ」
「……」
おい。誰か金属バット寄越せ。こいつ殴るわ。
なんで!!オレが!!お前の気を引かなきゃいけないんだよ!!この野郎が!!
あーもう駄目だ。げきおこスティックファイナリアリティぷんぷんドリームだわ!!
早く服選んで叶のところに戻ろう。そうしよう。
「すみませんが私には貴方の気を引く理由がないので、それは気のせいですね。それと、こんなところでそのような話をするのはどうかと思いますが?」
「は」
「私はまだ買い物がありますので、これで失礼します」
一礼してさっさとその場から離れる。
さあ戻ろう!!離れよう!!がっつりショッピングして破産したろうか!!
そしてオレは焼肉を食べるのだー!!
その勢いで片っ端から見ていく。またあの婚約者に会うかもしれないと思うと気が気でない。
着れそうなのと雰囲気に合いそうな服を買い込んでさっさと叶に会う。
下の階でアイスを食べ終わったのか物色してた叶の肩を掴む。それはもう、がっちりと。
「よう。てめぇならわかってたんじゃないか?」
「……何が?てか痛い」
すぐ離された。しょぼーん。
て、そうじゃないそうじゃない。今オレが言いたのはだ。
「オレがいたところに三沢春がいた」
「…………まさか……」
またブツブツと言い出す叶から離れてそこら辺の物を見る。
今の叶、話しかけても反応返してくれないって知ってるからヒマだわぁ。「ストーリーが……」とか「ヒロインも……」とか言って……叶の呟きが終わるまでそこら辺見よう。
ここら辺はフード店、かな?個別に出しているのを見るとどうも駅の地下にある店を思い出す。
あるよね?駅弁とか特定の産地からのお店。
叶が食べてたのって何かなー?オレのも早く奢ってくれ。
「王華さん、急いで行くよ」
「え、アイス奢って――」
「焼肉の後にアイス奢ってあげる!!」
「――よし来た!!」
焼肉後のアイスって格別においしいよな!!
さっさと歩いていく叶を追いかけていく。叶と身長は同じだから足幅はなんとかなるとして……後は体力勝負だな!!
先を行く叶を見失わないよう着いて行くの精一杯のために周りは見ない。見る余裕ないし。
だが一人ぶつかることなんてないさ!!このオレは前世、某ビックなフェスに夏と冬と行っていたかいがあって人にぶつかることなんてないのさ!あ、ちょっとぶつかりかけた。
まあ人混みの中を歩くのが慣れてるって言えば慣れてる方。通勤ラッシュとか出張とかあったし。
大分人が少なってきたと思ったら裏道っぽい細道に入っていく。
ここ都会だよな?なんでこんな道あんの?都会だよね?都会だからあんの?田舎者ワカンナイ。
まだ歩くとしたらへばりそうだなぁと思ってたらやっと開けた道に出た。
「……着いた」
「おお」
人がまばらにいる行き交うそこには、確かに焼肉屋が……!!会いたかったよ焼き肉ちゃーん!!!
焼肉屋に入ってからはまた叶に任せよう。叶はここ知ってるようだし、何も知らないオレよりいいでしょう。
さーて、楽しみだな~。




