ep.33 普通のポーションには戻れない
数日後、以前「四本分を一本で飲めたらいいのに」とこぼしていた女が、再び店に立ち寄った。
「補充に来たわ。相変わらず……あら、これは?」
棚の隅に置いた小瓶に、女は目を留めた。ほかの魔力ポーションより、少しだけ色が濃い。
「試作品なんですけど、四本分くらいの効果を一本に詰めてみました」
「本当に? あの時の話、覚えててくれたの」
女は驚いた顔をしてから、興味深そうに瓶を手に取った。
「値段は、普通の五本分になります。安くはないんですけど」
「高いわね……味は試せる?」
「少しだけなら」
シャーロットは試飲用の匙へ数滴落とし、女へ渡した。
女は恐る恐る口に含んだ。眉を寄せたのは一瞬だけで、すぐに表情が変わる。
「苦いのは苦いけど……思っていたほどじゃない。本当に一本で四本分効くの?」
「私が二度試した限りでは、それくらい戻りました」
女は小瓶をしげしげと眺め、自分の鞄と見比べた。
「これなら、腰にぶら下げる本数が四分の一で済むってこと?」
「そうなります」
「飲む時間も、四回分が一回で済むのよね」
女はしばらく考えてから、小瓶を調合台へ戻した。
「まず一本買うわ。次の遠征で試してみる」
「ありがとうございます」
女は代金を払い、布で包まれた小瓶を鞄へしまった。
「今はまだ数が少なくて、たくさんは作れないんです」
「使ってみて良かったら、また来るわ。できた分から買わせてもらう」
女は鞄の口を閉じながら、ぽつりとつぶやいた。
「正直、味だけなら普通の方がましかもしれない。でも、本当に四本分なら……もう普通のには戻れないかもね」
そう言って、女は軽く手を振り、店を出ていった。
シャーロットは帳面を開き、濃縮ポーションの欄へ一本と書き込んだ。
顔を上げると、棚には小瓶一本分の隙間が空いていた。




