最終話:“国母”の未来と、帝国の終焉
「私は、帝国を憎んでなどいません」
「ただ――見限ったのです」
クラリッサ・フォン・エルディンは、最後の外交文書に署名しながら、静かに言った。
イストリアと帝国の関係は、正式に“同盟解除”された。
それは、帝国が“かつての誤ち”を反省するに値せぬほど、内部腐敗を極めていたからだった。
王太子ジュリアンの失脚、聖女制度の廃止、旧貴族派の崩壊――
帝国は今、“自浄”という名の瓦解を迎えていた。
イストリアでは、新たな教育機関が設立された。
その名は――エルディン女学院。
貴族・平民・他国の子女までも受け入れ、
「誇りを持ち、誤りを恐れず、力ある者が導く」ことを理念に掲げた。
そこには、かつて“悪役”と呼ばれた令嬢が、自ら教壇に立つ姿があった。
「私が失ったもののすべては、無駄ではありません」
「だから、あなたたちが未来を選ぶための礎になりたいのです」
少女たちは、その瞳に憧れと希望を灯した。
そしてある晩。
城のテラスで、クラリッサは静かに夜空を見上げていた。
「帝国が変わるには、あと十年はかかりますわね」
「その頃には、お前の名は歴史書に刻まれているさ」
王セイランが隣で笑う。
「ですが、私は“復讐の象徴”ではなく、“誇りの象徴”として記されたいのです」
「ならばその通りになるだろう。
――お前は、そういう女だ」
風が吹き抜け、鈴の音のように衣が鳴る。
「クラリッサ・フォン・エルディン」
捨てられた悪役令嬢は今、“国母”として国家と世界の未来を導く灯火となった。
その背中は、もう誰の影も追ってはいなかった。
そして物語は、ここに幕を一度下ろした――。
ここまでお読みいただき、本当にありがとうございました。
本作
『婚約破棄された悪役令嬢ですが、隣国で“国母”として崇められています。なぜか帝国が頭を下げてきました』は、典型的な“悪役令嬢×追放×ざまぁ”の構造を持ちながら、
主人公クラリッサの「誇りと実力」で真の成り上がりを果たしていくことを主軸に構成しました。
復讐劇ではなく、誇りを貫いた結果として“ざまぁ”が成される点が、この物語の肝です。
婚約破棄、聖女との対比、隣国での再生、そして帝国との対峙。
なろう系の人気要素をしっかり押さえつつ、クラリッサという“気高き令嬢”が
どこまでも前を向いて進む姿を描くことができたなら、幸いです。
今後、もしご希望があれば、
「クラリッサの国母時代の政変記」や「帝国再建編」などの番外編・続編も展開も考えているので、
「お気に入り」や感想などをいただけますと幸いです。
それではまた、どこかの物語でお会いしましょう。
ありがとうございました!