第二話 私は魔族でも一向にかまわん!
やれやれ、目の中に入れても痛くない愛娘が亡くなったんだぞ。
それなのに豪商のハスワールという男は、自身の仕事を優先するのか――ま、今は酔っ払うほど飲んでいる最中のようだが。
ま、俺には関係ないけどな――が、しかし、良い気分にはなれないないな。
それはともかく、そんなハスワールから養女にならないか!? なんて誘われたわけだが――。
「うん、いいだろう。どうせやることがないしね」
ム、もう少しは考えてからの方が良かったかな? それはともかく、俺はハスワールの養女になることを了承する。
なんだかんだと、この世界において俺には目的がない――当然だろう? 何せ、俺は異世界転生者だ。この世界ことブルーノワールについて何も知らないのだから。
「ハハハ、そうこなくちゃ! 私は魔族でも一向にかまわんぞ!」
「む、むう……」
魔族の俺を養女に迎えて後々、後悔しなきゃいいけどな、この御仁。
ま、俺としては有難いけどな。居場所ってものが、この世界にゃまだないわけだし。
「フフフ、ハスワール卿。貴方より奥さんの方が喜ぶんじゃないかな?」
「そうだな、マリウス。妻の落ち込み具合が尋常じゃなくてな。いつ自殺をするか気になっているところなんだ」
「ちょ、おまっ! 呑気にこんなところで酒を飲んでいてもいいのかよ!」
え、奥さんがいつ自殺をするか分からない…だと…!? そんなに落ち込み具合が尋常じゃない人物を放っておいてもいいのか!? つーか、酒を飲んでる酔っ払っている場合かよ!