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六機との距離は、すでに各火器の有効射程圏内に入っていた。滲む視界を拭い、目視とレーダーで敵機の位置関係、フォーメーションを素早く確認した俊哉は、六体の亡霊をかわす位置取りをイメージする。
六機は二機ずつの編隊を組んでいるようだった。二機編隊は戦闘機任務における最も基本的な単位。これは現実でも、『W.A.R.』の中でも同じだ。
つまり、三つのチームを、たった一機で相手にしなければならないことになる。
聞こえていた声とはあまりにも対照的な、露骨な殺意を放つ〝ライオンハート〟の気配はすさまじい。戦闘状態になったこの空を覆い尽くす、圧倒的な存在感を感じた俊哉は、肌が粟立つのを抑えられなかった。
感じたままに生きていい。鼓膜を通さずに聞こえた『声』を、俊哉は脳の中でもう一度聞いた。
感じたまま。俊哉はそれを反芻する。
三つのチームが効果的に動き回り、俊哉のイメージの先手を取ろうとする。多勢に無勢の状況では、まず回避に専念するしかない。背後には常に一つのチームが回り込み、他のチームは牽制と進路妨害を仕掛けてくる。コックピットは警報音と赤い光の明滅が常になり、自分がいつ撃墜されてもおかしくない状態を知らせていた。
感じたまま。危機的状況はわかっていたが、俊哉は三度、その言葉をイメージした。
――ほら、見えるだろう。お前の感じたままでいい――
遠退いたあいつの『声』がまた戻ってきた。その瞬間だった。コクピット画面に、うっすらと光が見えた。陽光でも、その反射光でもない。正確には光の帯と言ったほうがいいそれは、画面正面へと伸び、その先で真っ逆さまに降下していた。
これは『声』だ。〝ライオンハート〟が自分を呼ぶ声。それがどこからきているのかが『B・M・I』によって視覚化され、画面に映し出されているのだ。俊哉は何の疑いもなく、戦場の空に伸びる光をそう解釈した。
この『声』を辿った先に、あいつはいる。
――来いや、〝ソーサラー〟。おれを超えてみろ――
挑発にしては優しすぎる『声』に、俊哉はイメージすることで答えた。光の帯をなぞる様に《X―2》を制御する。




