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第2話

「生きることはさ、舞台に立つってことなんだよ。ずっと舞台の上で演技をしている。本当の舞台で演技をする役者さんもそうだけど、わたしたちもみんなそうなんだよ。大人とか、子供とか、職業とか、学生とか、どこかの用意をされた舞台の上で、なにかの役を演じている役者さんなんだと思う。あるいは、『自分』だってそうかもしれない。わたしたちはいつの間にか、『自分を演じるようになるんだよ』。家族とか友達とか、はじめて出会う人の前とか、それから自分を見ている自分の前でね。ねえ、虎はさ。演技をしていて、そう思ったりしない?」

 激しく長い嵐みたいな稽古のあとで、たくさん流した汗をふかふかのタオルで拭いているときに、そんなことを龍は虎に言った。

 虎と龍。(とらとたつ)

 二人は高校は違うけど、同じ二年生の十七歳で、二人とも劇団さかさまの青猫に所属している劇団員だった。

 ただ一つ違っているところがあって、虎はまだ演技を始めたばっかりの新人で、龍は小さな女の子のころから子役などをしている役者歴の長いベテランの劇団員だってことだった。

「うーん。演技か。確かにそうなのかもしれないね」

 湯気の出ている、ぼんやりとした汗だくの真っ赤な顔をしながら、どこかのなにもない空中を見つめてた、疲れて座り込んでしまっている虎は、(演技の稽古が終わったばっかりだから、なんだか魂が抜けてしまったみたいだった)龍の声を聞いてうつろな瞳で龍を見た。

 龍は虎と同じように汗だくだったけど、稽古場の床の上に立っていて、まだまだがんばれるって感じだった。

「だけど、やっぱり、まだそんな難しいことはよくわかんない。でも演技をするってとっても楽しい。それはすごくよくわかってる」

 虎はそう言ってから、にっこりと子供みたいな顔で笑った。龍はそんな虎の笑顔を見て自分もにっこりと笑った。それこら二人は見つめあったままで、楽しそうな顔で声を出して笑い合った。

「そっか。そうだね」

 龍はにこにこしながらそう言った。

 それから虎はふと稽古場の古い壁を見た。

 稽古場の壁には『翡翠色の小さめの水着姿の笑顔の龍のポスター』がはってあった。

「虎。あんまりじろじろ見ないでよ。恥ずかしいんだからね」

 と、顔を赤くしながら恥ずかしそうな顔をして龍は言った。

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