第1話 君のことなんて、大っ嫌いだよ。(べーと赤い舌を出しながら)
劇団さかさまの青猫の演劇舞台。
手書きのポスターに書かれている文字。
人が死んでしまうって、どういうことなんだろう? 人が生きているって、どういうことなんだろう?
劇団さかさまの青猫
演劇 私はひとりぼっちでした。
冒頭の部分
暗闇の中で、光のあたる丸い空間の中で、小さく丸くなって座って、泣いている少女がいる。
物語の描きかたを教えるよ。
本当?
うん。本当。
教えなくてもきっと物語を描けると思うけどその手伝いをするよ。
うん。がんばる。
それで、物語を描いてさ。たくさんお金を稼いで、それで、……。
それで?
幸せになりなさい。
私は、ひとりぼっちでした。
ずっと、ずっとひとりぼっちでした。
だから物語を描こうって思いました。
とっても楽しい物語。
とっても笑える物語。
とっても愛のある物語。
それから、
……、とっても、とっても幸せな物語。
そんな物語をたくさん、たくさん描きました。
現実の私はずっとひとりぼっちのままだったけど、物語の中のみんなはひとりぼっちじゃなくていつもとても楽しそうに笑っていて、とっても、とっても幸せでした。
だけら私も物語を描いているときだけは、なんだかみんなと一緒にいるみたいに思えて、とっても、とっても、……、幸せでした。
雨が降ったら傘をさせばいい。
傘がないのなら、雨に濡れてもいい。
たまには、雨に濡れるもの悪くない。
雨の中で遊んだっていい。
びしょ濡れになりながら、雨を楽しんでもいい。
あなたが幸せならそれでいいんです。
あなたが幸せなら、わたしはずっと幸せなんです。
強い雨の中でも、強い風の中でも、大きな音で雷が鳴っていても、たくさんの雪が降っても、わたしは幸せなんです。
あなたがとっても晴れている日に、青色の空の中で、優しい風の中で、あったかい太陽の光の中で、優しい顔で、いつまでも笑っていられるのなら。
それがわたしのぜんぶなんです。
少女は泣きながら顔を上げて空を見る。
真っ暗な空からはやがてぽつぽつと雨が降り始めた。
雨の日
君のことなんて、大っ嫌いだよ。(べーと赤い舌を出しながら)
雨か。雨はいやだなー。
虎は雨が苦手だった。きらいってことはないけど(雨は天からの恵みだから)苦手だった。(高校の制服も濡れちゃうし)できればいつも青色の空が見えていて欲しかった。
きらきらと輝いている太陽が見たいなって思った。
もう、ずっと、何日も雨の日ばっかりが続いていた。
雨の降っている暗い空を見ているのは、もう何日続けてのことなんだろう。
虎は白色の折りたたみの傘を綺麗にたたんで、劇団『さかさまの青猫』の練習場の古い建物の中に入りるときに、ドアのところで、少し立ち止まって、雨の降っている空を見ながら、そんなことを思った。




