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国に入るぜ!お金ある?

交渉とかやってみたい

目の前には大きな城壁がそびえ立っている。

城壁の前には入国審査街の列ができていた。

うあお〜…!でかいなあ…。あ。

ふと、トコは思い出したことがあった。

「アノイさんや、お金って持ってるの?」

「いいえ持っておりません。」

「じゃあ、どうやって中に入ろうっていうのさ!」

「確かにそうですね。思考します…」

アノイは魔導書をその場に召喚してパラパラとめくりながら調べ始めた。

さすがに万能アノイさんと言ってもお金は生成することはできないですよねえ…やれやれと首を振ってやる。

思考を終えたアノイは

「提案があります。まず、列の2つ前、商人らしき方がいらっしゃいますね。あの方にこれを売ってみるのはいかがでしょう?」

そう言って空間に手を突っ込んだ。

"マジックボックス"という生活魔法の一つで大小あれど、子供でも使えるらしい。

トコには生活魔法は使えないので無縁な話だ。ふん。


アノイはマジックボックスから黒く大きい羽根を取り出した。指の先から肘ぐらいまであるその羽根は漆黒の中から深い群青色が静かに浮かび上がる艶のある黒い羽根だ。

「おお、きれい!これを売るのかあ!高く売れそうだなあ!何の羽根?」

光にかざしてみた。

「トコさまの羽根です。」

いや、薄々ね?鳥で黒くて大きいなんて自分しかいないな〜とはね?思ったけど…。

「どこで!?!?」

「猛スピードで走るトコさまから時より羽根が抜け落ちましてそれが飛んでくるのでそれを。」

「取っておいたの??!」

なんと、アノイは興奮で70キロ以上のスピードで走るトコから抜け落ちる羽根を集めていたのだと言う。

「鑑定のスキルで1枚あたりの価格も分かりますので、何かの足しになるかと取っておきました。」

「えっ!いくらくらいなのさ??」

「だいたい金貨1枚と銀貨5枚といったところでしょうね?」

「えっえっ?日本円だと???」

「一万円五千円です。」

と、トコから抜けた羽根が…?一万円?え?

「………。」 

「………。」

「………。」

「トコさま、自分で抜いたら血が出ますよ。」

チッ!バレたか!

入国審査にだいたい銀貨5枚。2人だから金貨1枚として…とりあえず、羽根1枚で入国できる。

いざ!交渉!交渉!

意気揚々と交渉に行こうとするトコにアノイはそっと制止しした。

「僕が、交渉しましょう。」

商人の元へ行き、深々と頭を下げた。

胸元のブルートパーズや身なり、そして無駄のない所作に商人は眉を上げた。

(こいつは、貴族の従者か何かか?)

「突然失礼いたします。」

「買い取っていただきたいものがございまして、少しだけ、お時間をいただけませんか。」

荷馬車に乗った商人は腕を組む。

「買い取りかい。見るだけ見るがね。」

商人は急に現れたアノイに少し怪訝な顔をしたが話を聞いてくれた。

アノイはゆっくりとマジックボックスから一本の羽を取り出した。

長さは指先から肘ほど。光を受けると、漆黒の中から深い群青色が静かに浮かび上がる。

商人の目が細くなる。

「……ほう。」

アノイは羽を無造作には渡さず、

まず、光へとかざしてみせた。

黒だった羽が、角度を変えるたび夜空のような青を宿す。

「この色、お分かりになりますか。」

商人は思わず身を乗り出す。

「染めじゃないな……。」

「はい。」

「天然物です。」

アノイは静かに羽軸へ指を添える。

「そしてこちら。」

その場にある石をコンと当てる。

パカ!!

石は硬い乾いた音を立てて2つに割れた。

「装飾だけでなく、加工材としても優秀です。」

「芯が折れにくい。」

「先端を生かせば髪飾り、かんざし、魔道具の導線、宝飾細工の補強にも利用できます。」

商人は羽を受け取り、光へ透かした。

その表情が少しずつ商売人の顔へ変わっていく。

「……珍しいな。」

「どこの鳥だ?」

アノイは少しだけ首を傾ける。

「申し訳ありません。」

「採取地は伏せさせていただいております。」

「ただ、一つだけ。」

「同じ品質のものを大量に市場へ流す予定はございません。」

商人の指が止まる。

(希少な素材...。)

その一言が商人の頭をよぎる。

アノイは続ける。

「宝石は産地が知れ渡れば価格が下がります。」

「ですが、由来の分からない美しい品は、物語そのものに価値が宿ります。」

「商人様でしたら、その意味は僕よりお詳しいでしょう。」

商人は口元を緩めた。

「ハハ……口がうまいな。」

「いいえ。」

「僕は事実しか申し上げません。」

少し離れた場所でトコが小声で聞く。

「アノイ、大丈夫?」

「はい、トコさま。」

「あと少しです。」

その自然な呼び方とトコの胸に光るブルートパーズに、商人はさらに勘違いする。

(あの青年ではなく、この娘が本家筋か。)

アノイは最後に十枚の羽を布の上へ並べた。

夜空が十枚、静かに広がる。

「一本ずつ売れば利益は出るでしょう。」

「ですが、一本だけでは『珍しい羽』で終わります。」

「十本あれば、一つの作品群になります。」

「王侯貴族向けに揃いの装飾品を仕立ててもよし。」

「限定十名への特別注文でもよし。」

「商人様のお名前で物語を添えれば、さらに価値は増します。」

商人は羽から目を離さない。

頭の中ではもう、

青く輝く簪、

漆黒の扇、

銀細工と組み合わせた首飾り、

貴族令嬢の展示会まで思い浮かんでいる。

「一本、いくらだ?」

アノイは穏やかな笑みを崩さない。

「希少ですので金貨三枚でいかがでしょう。」

(あれ?一枚金か一枚と銀貨ちょっとなんじゃないの?)

「十枚で金貨三十枚か…。」

商人は少し渋る。

「ですが。」

そこで初めて少しだけ声色を変える。

「もし、十枚すべてをお引き受けいただけるのでしたら。」

「金貨十五枚でお譲りします。」

商人が目を丸くした。

「半額だと?」

「ええ。」

「僕たちは旅の途中です。」

「荷物は軽い方が助かります。」

「それに。」

羽を一枚持ち上げ、陽へ透かす。

青黒い光が流れる。

「希少品は、一枚だけ飾るより。」

「まとまった数を持つ商人の方が価値を生みます。」

「一本だけでは珍しい羽です。」

「十本あれば、物語になります。」

他の店は持っていない。

独占できる。

どうする!?


アノイは追い打ちをかけない。

代わりに羽を一本一本、丁寧に布へ戻していく。

「もちろん。」

「ご縁がなければ、それでも構いません。」

「必要な旅費があれば十分ですので。」

売り急いでいない。

その態度が、かえって商人を焦らせる。

列は進む。

あと一組で門だ。

商人は舌打ちにも似た笑いを漏らした。

「……やれやれ。」

「今日は仕入れの日だったらしい。」

腰袋から革袋を取り出し、重たい音を立てて差し出す。

「金貨十五枚。」

アノイはその場で丁寧に数え

「確かに」

と深く一礼した。

とこも一緒に礼をした。

「ありがとうございます。」

「どうか、良い職人との出会いがありますように。」

(やった!!!!)

トコは心の中でガッツポーズした。



身体検査や持ち物検査の後

「コモン一人とアンタ精霊かい?珍しい!」

こっちではいろんな種族がいる。人間はコモンというらしい。

アノイは、転移後は精霊として転移してきた。

精霊とは種族名というより魔法の素みたいな存在で、魔法は代償さまざまな精霊にお願いしてつかえるものらしい。特に実態を持った精霊を上位精霊というらしい。アノイはそれだ。

門番は笑って受付をコンコンと叩いた。

「上位精霊から通行料とったことねえよ!」

「コモン銀貨五枚。精霊は…銀貨二枚だ」

「お兄さんありがとう!美味しいお酒でも飲んで!」

トコは銀貨を二枚多く置いた。


さて、入国だ!!!!!!!!



チップっていくらが適正なの?

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