表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

1/14

第1話:Brave Slave①

ここは、とある異世界。


どこまでも続く草原。


吹きぬける爽やかな風が、俺の身体を撫でる。


青空を見上げれば、4つの星が浮かんでいる。


白い太陽。


赤い惑星。

青い惑星。

黄色い惑星。


美しい光景だ。


壮大なロマンを感じる。




…………………………………………。


やめてくれ。


引き立っちまうだろ!?


勇者という、”最底辺の労働者” の空虚さが。






――死んだ魚のような目をした数十人の勇者たちが、集結している。


虚無を体現したかの様な表情を、その顔に浮かべている。


無言でうつむいた その顔からは、夢も希望も感じられない。


だだっ広い草原に整列させられている者たち。


短期離職を見越して大量に非正規雇用された勇者たちだ。




今日は、この異世界における、俺の ”入社” 初日。


懸念すべき初出勤日だ。新人研修が執り行われている。


物凄い、陰のパワー……いや、負のパワーで満ちあふれた空間。




「では、友好を深めるために自己紹介をしましょう!」


進行役である この異世界の ”重役” が、やたら元気に言い放った。


余計なイベント増やすんじゃねーよ。


最前列・左端にいる勇者が指名された。


……あっぶねー。端っこにポジションを取らなくてよかった。


俺の自己紹介は、24番目。奇しくも俺の年齢と同じだ。




トップバッターにされた勇者が立ち上がり、自己紹介を始める。


「あ、えーと……モブソ・ノタオーゼと申します。

年齢は22歳です。前職は……同じく勇者でした。

趣味はAヴi……えーと、映画鑑賞です。

……え、あ……よろしくお願いします……」


進行役が、高らかに拍手をする。勇者たちも釣られて まばらな拍手を贈る。


自然と、「名前・年齢・前職・趣味」という、自己紹介テンプレが出来上がった。


その後も、順番通りに、そしてテンプレに従順に自己紹介を始める勇者たち。


誰もが過去を語る。誰も未来を語らない。


時が停滞しているのに、一分一秒ごとに確実に老いていくという、恐ろしい空間だ。


俺の番が来たら……できるだけコンパクトに済ませよう。印象に残らない様にしよう。


いてもいなくても、意識されない存在になれ――




……俺の番が来た。


愛想笑いをしろ。噛むな。キョドるな。


印象に残る要素を、極力削ぎ落せ――


「名前はロード・カロウです。

年齢は24歳です。前職も勇者でした。

趣味はWe Tubeを視ることです。

頑張りますのでよろしくお願いします」


…………無事、完了。


”健康の為、筋トレしてる” とか ”身体を動かすのが好き” とか言ってしまうと、キツいポジションを割り当てられるリスクが跳ね上がる。


時給1100円で、極限までコキ使われてしまう。


なので、言わない。


自分の身は、自分で守らなければ。




前の異世界では、自己紹介の時にその間違いを犯して、キツいポジションを割り当てられてしまった。


キツいポジションほど、上司は「ここはすごく楽なポジションだよ!」と、平気で嘘をつく。

(本当に楽なポジションだったら、前任者はなぜ退職したの?)


そのポジションができなかったら、ミスをしてしまったら……無能扱いされる。


できたとしても、明らかに労働負荷が小さいポジションで 手が空いている同僚勇者たちが、必死こいて作業する俺を注視。


そして、作業をするだけで手一杯の俺に、上から目線で 重箱の隅をつつくような指摘をする。的外れなアドバイスをして、作業のリズムを狂わせてくださる。

(この現象に、何かしらの固有名詞を付けた方が良いんじゃないか?)


それでも努力して仕事を遂行しようとしたが――心身が、極限まで疲弊した。


辞職の意を伝えると、必死で引き留められた。


だが、辞めた。


「一人前になる前に 途中で逃げ出す奴は、一生 負け犬――」

などと宣っていたが、辞めた。


勇者という職業は、生きるために仕方なく就いている仕事だ。間違っても 情熱を注ぐような仕事ではない。


そこの線引きは明確にしておかねば、自分の人生がブラックな職場に喰い物にされてしまう。


俺は、より労働負荷が軽く、よりマシな報酬の職場を探すまでだ――




そして、公共職業安定所コンチワークに行った。


コンチワークでは、常に多くの異世界が求人を出している。


良い労働条件の異世界も あった。


例えば、ここ数年で爆発的に普及した生成AIを使う前提の求人などだ。


だが、俺は実務経験が無いとの理由で、書類審査でことごとく落ちた。


なので、誰でもできる仕事を出している求人を探した。


その中から、比較的マシな求人を選んだ。


それが、この異世界が出していた(……いやすぐに大半が辞めるから、今現在も出し続けている)

”勇者募集” の求人である。




午前中で、新人研修が終わった。


午後からは、それぞれの勇者は、配属先で実際の作業を教わる。


そして、俺の配属先には、俺含めて3人の新人があてがわれた。


配属先の昼礼で、朝と同じ自己紹介をする。面倒くさい。




俺に割り当てられたポジションについた。


……いよいよ、実際の業務が始まる。


はあああ……早く業務 終わんねーかなぁ……。




「どーも、指導役のサラ・リーロウです!よろしく~」


げんなりした表情のロードは、声のする方に目をやる。


そこには、この異世界の先輩勇者であろう女性が佇んでいる。


――その女性は、ロードと同年代くらいだ。


顔立ちは整っており可愛くて美人……なのだが、目にクマができている。


そのセミロングヘアは、やや明るめの茶髪に染められており、似合っている……のではあるが、手入れされておらずボサボサだ。


「あ、ハイ。本日からお世話になりますロードです。よろしくお願いします……」


「うん!よろしく!一緒に頑張ろうね!」


うわあ……テンション高えな……。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ