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おまけ3 公爵家の後継ぎ事情!



「妹に近づくな! この変態がぁぁぁっ!」


 天下の往来に怒声が響く。

 割と聞き慣れた女性の怒声だった。

 その声に、王太子の護衛についていた騎士達が身構える。

 そして、怒声から十秒程は経った頃、王太子の目の前に、鈍い音を響かせ、何かが落下してきた。

 騎士達が王太子達を守る様に割って入る。


「待て。問題ない」


 王太子が、騎士達を制止する。

 そして、落ちてきた物体……、良く見ればボロボロになった年若い男性に声を掛ける。


「……何をやっているんですか? 義兄上」


 落ちてきた男性は王太子の義兄らしい。

 つまり……


「……お久しぶりです。お兄様」


 王太子妃の兄という事になる。

 王太子妃にしては珍しく、少し呆れた様な声音だった。


「おお。我が妹か……」


 落ちてきた男性……、公爵令息が(かす)れた声で王太子妃に言う。

 声は掠れていたが、その顔は喜びに満ちている。

 何があったのか分からないが、変態呼ばわりされていた事から、きっとろくでもない事だろう。


「妹よ……。兄は、ついに運命の人を見つけたぞ」


 公爵令息の言葉に、王太子夫妻が(わず)かに驚きの表情を浮かべる。

 そして、王太子妃が公爵令息に問う。


「私達の結婚式すら出席せずに探していた運命の人が見つかったというのですか?」


 王太子と自分の妹の結婚式を欠席してまで運命の人を探すのはどうかと思う。

 貴族家どころか、一般的な家庭でもアウトだろう。


「義兄上の運命の人という事は、我が妻に匹敵する攻撃力の持ち主という事ですか?」


 王太子が言う。

 運命の人が攻撃力の高い人間というのはどういう事かと思う。

 てっきり、結婚相手でも探しているのかと思ったが、もしかして、戦闘部隊でも編成するつもりなのだろうか?


「お兄様が、痛みから快楽を得られるのは知っておりますが、まだ、諦めておられなかったのですね」


 変態だった。

 痛みから快楽を得られるタイプの変態の様である。

 と、いう事は、運命の人というのも、素直に結婚相手なのだろう。


「そうだ……。妹達の攻撃力と比べて、満足いく攻撃力の女性に巡り合えていなかったが、ついに出会う事が出来た」

「条件に合う女性を探して、お兄様は、諸国を巡っておられましたものね」


 公爵家の姉妹を基準に考えたら、それは条件に合う者はいないだろう。

 あと、それで諸国を巡っていた意味が分からない。

 攻撃力の高い女性を探すなら、絶対にこの国で探すべきである。

 令嬢格闘技なる文化が根付いている以上、攻撃力の高い女性が居る可能性が高いのは、この国をおいて他にない。


「幸せを運ぶ青い鳥は、やはり、身近にいるものなのですね……」


 恍惚(こうこつ)とした表情で公爵令息が言う。

 完全にヤバい人である。

 何があったのか知らないが、半殺しにされたのである。

 そして、おそらく、自らを半殺しにした相手を運命の人呼ばわりしているのである。

 価値観が狂っているとしか思えなかった。


「それで、お相手は?」

「ああ、それは……」

「両殿下! どいてください!」


 会話を(さえぎ)って、頭上から声が響く。

 先程の怒声の主だった。

 王太子達が空を見上げれば、(はる)か上空から特待生が降って来るのが目視できた。

 それを確認し、王太子達は素早く公爵令息から距離をとる。

 次の瞬間だった。

 再び声が響く。


「これで止めだ! 変態野郎!」


 公爵家の令息に対してとんでもない罵声だった。

 だが、その罵声にすら公爵令息は喜びの表情を見せる。

 精神的なものもいけるらしい。

 大した変態である。

 だが、そんな事には構わず特待生が蹴りの態勢に入る。

 次の瞬間には、重力すらも置き去りにするかの様に特待生が急加速する。


「四神流! 青龍六式・改!」


 その声と共に、特待生の大技が公爵令息に炸裂する。

 公爵令息が石畳にめり込む。

 そして、公爵令息を中心に地面が(えぐ)れ飛んだ。

 天下の往来にクレーターの出来上がりである。


「二度と妹に近付くな! 変態野郎!」


 クレーターの中心に埋まった公爵令息に特待生が怒鳴る。

 かなりご立腹の様だった。

 そんな特待生に王太子が歩み寄る。


「特待生」


 王太子に声を掛けられた特待生が王太子に向き直る。


「お騒がせして申し訳ありません」


 そう言って、特待生は(うやうや)しく一礼する。

 だが、お騒がせするとかレベルではない。

 王太子の目の前で普通に事件を起こしている。


「それは構わないが、何があった?」


 何があったのかは気になるが、一応、構っておこう。

 公爵家の令息が、とんでもない大技でクレーターの中心になったのだ。

 放っておいて良いものではない。


「いや……、あの変態が……」


 特待生が、心底嫌そうな表情でクレーターに視線を向ける。

 おそらく相手の正体を知らないのだろうが、公爵令息を変態呼びはどうかと思う。


「あの変態、私の妹に、精霊の力で自分を痛めつけてくれって迫って来たんです」

「愛し子にか?」


 王太子の言葉に、特待生は無言で頷く。

 特待生のその表情は非常に苦々しげだった。


「愛し子である妹に近付こうとする連中は多いですけど、ああいう変態は初めてで、妹が(おび)えてまして……」


 特待生の言葉に、王太子妃が溜息を一つ吐く。

 そして、申し訳なさそうに口を開く。


「私の兄が申し訳ありません」


 王太子妃の言葉に、特待生が考え込む様に目を(しばたた)かせる。

 そして、(しば)しの後、恐る恐るといった風に王太子妃に問いかける。


「……公爵家の方ですか?」

「はい」

「あの……、どういう立場の方ですか……?」

「次期公爵になります」


 王太子妃の答えを聞き、特待生の満面に冷や汗が吹き出す。

 そして、勢いよくクレーターに駆け寄って、素手で掘り返し始めた。


「ヤバい、ヤバい、ヤバい、ヤバい!」


 かなりの(あせ)り様だった。

 まあ、次期公爵にとんでもない大技を叩き込んだのである。

 それは慌てると言うものだろう。

 だが、そんな様子の特待生に王太子妃は歩み寄り、優しく立ち上がらせる。

 そして、安心させる様に微笑んで見せる。


「安心してください。お兄様は痛みから快楽を得られる人間です」


 まったくもって安心できない。

 次期公爵が紛う事なき変態だという事実でしかない。

 この国の行く末が不安でならなかった。


「いや、でも、まずくないですか?」


 確かにまずい。

 次期公爵がクレーターの中心に埋まっている事も、次期公爵が変態である事も。

 その事に気づいたのか、王太子妃が、特待生の言葉に(うれ)う様に表情を曇らせる。


「お兄様は、私達姉妹を基準に女性を考えがちなのです」

「はあ」

「そのため、お兄様は、私達姉妹に匹敵する攻撃力の女性を探していました」

「え~と……」

「お兄様は、特待生さんの事を運命の人と呼んでいました」


 王太子妃の言葉に特待生が顔を引き()らせる。


「それって……⁉」


 特待生が後退る。

 そう、王太子妃が憂いていたのは次期公爵が変態である事ではなかった。

 その変態に、友人である特待生がロックオンされた事である。


「私は逃げます!」


 特待生が身を(ひるがえ)させる。

 そして、走り出そうとした瞬間だった。


「待ってくれ! 私の運命の人!」


 クレーターから変態が()い出してきた。

 満身創痍(まんしんそうい)の様相ながら、その顔は喜びに満ちている。

 その様に、流石の特待生も顔を青()めさせる。


「私には君しかいないんだ! お願いだ! 私と婚約してくれ! ついでに踏みにじってくれ!」


 婚約の申し込みのドサクサに紛れて何を言っているのか。

 婚約を申し込む時くらい、自分の性的嗜好(しこう)は表に出すな。


「絶対に嫌です!」

「そこを何とか! あと、(ののし)ってくれ!」

「無理です! あと、変な要求をしないでください! 殴りますよ!」

「望むところだ!」


 完全に変質者とその被害者の構図だった。

 しかも、殴ると喜ぶので対処し難いので質が悪い。

 特待生も頭を抱えていた。


「公爵家の財力で君の望む物を用意する! 美しい宝石でも、最新のドレスでも!」

「いらないです! そもそも、私は平民です! 公爵家に嫁入りなんてできません!」


 特待生の叫びを聞いて、王太子が前に出る。

 そして、特待生に向かって口を開く。


「特待生。君には爵位を与える事になっているぞ」

「はぁっ⁉」


 王太子の言葉に特待生が驚愕に叫ぶ。

 まあ、いきなり爵位を与えられるなどと聞いたら驚きもするだろう。

 しかも、教えられるタイミングが最悪だった。


「君は、帝国に対して、一人で攻撃を仕掛けていただろう」

「いや! まあ、やりましたけど!」

「その際、帝国軍一万を敗走に追い込んだだろう?」

「何で知ってるんですか⁉」

「勇者様の持ってきた帝国の書類に書いてあったのだ」

「……忘れてください」

「無理を言うな。……それで、我が国では、君は単独で一国に対して(いくさ)を挑める存在と認識されている」


 言われてみればそうである。

 特待生は、『帝国の悪夢』などと呼ばれ、一人で帝国と戦っていたのだ。

 一万もの軍勢を引っ張り出したら、それはもう戦である。


「そんな人間を国外に流出させる訳にいかない」

「……それで、爵位で縛ろうと?」

「まあ、そうだ」


 王太子の言葉に特待生は渋い表情を浮かべる。

 これで平民だから無理とは言えなくなったのだから仕方ないだろう。


「……いや! でも! 爵位は低いですよね⁉ だったら、公爵家に嫁入りは無理ですよ!」


 特待生が食い下がる。

 変態との結婚はそれほどに嫌らしい。

 まあ、当然だが。


「大丈夫だ!」


 公爵令息が叫ぶ。

 公爵令息に目を向ければ、彼は、真っ直ぐな瞳で特待生を見つめていた。


「父上から、人間なら誰でもいいから結婚しろと言われている! あと、周りの女性からキモがられているから、誰も文句は言わないはずだ!」


 何も大丈夫では無い。

 不良債権を売りつけようとしている様なものだった。

 押し売りでもここまで酷くない。


「王太子妃殿下! 助けてください!」


 特待生が、たまらず王太子妃に助けを求める。

 だが、助けを求められた王太子妃は、何やら考え込む様な表情だった。

 そして、(わず)かな時間の後、王太子妃が口を開く。


「特待生さんが義姉になってくれれば私は嬉しいのですが……」


 王太子妃、まさかの裏切りである。

 特待生が変態にロックオンされた事を憂いていたはずなのに、ここにきて、まさかの発言だった。

 その王太子妃の言葉に、特待生が絶望した様な表情となる。


「勘弁してください!」


 特待生が叫ぶ。

 王太子妃が敵に回ったら変態との結婚へ一直線だ。

 それは、まあ、叫ぶだろう。


「特待生さん。……よく聞いてください」


 王太子妃が、取り乱す特待生に言い聞かせる様に言葉を掛ける。

 王太子妃の目は真剣そのものだった。

 その視線に、特待生がたじろぐ。

 そんな特待生に、王太子妃は言葉を続けた。


「公爵夫人となれば、毎朝、白いご飯が食べられます」


 割とどうでもいい情報である。

 だが、特待生にとって、そうではなかったらしい。

 特待生が、それこそ落雷でも受けたかの様な衝撃を受けた表情を浮かべる。

 そして、ヨロヨロと後退った。


「あ、朝から白米! そ、そんな贅沢が許されるというのですか⁉」


 特待生の言葉に、王太子妃は静かに頷いて見せる。

 そして、追撃の一言。


「味噌汁も付きます」

「なっ……⁉」


 再び、特待生が衝撃を受ける。

 正直、衝撃を受ける意味が分からなかった。

 そして、本格的に特待生の食生活が不安になる()り取りである。

 だが、そんな事に構わず、特待生が(しぼ)り出す様な声で王太子妃に質問する。


「な、納豆をつけたり……?」

「できます」

「つ、漬物とか……?」

「勿論です」


 王太子妃の答えに、とうとう特待生が膝をつく。

 そして、(うめ)く様に言う。


「これが……、これが公爵家の財力⁉」


 いや、割と一般的な朝食メニューである。

 むしろ、少し物足りなく感じる者もいるかもしれない。

 後、今更なのだが、公爵家の朝食はご飯派の様だ。


「……魚の切り身くらいつけたらどうだ?」


 王太子が呆れた様に呟く。

 その呟きを聞きつけて、特待生は信じられないものでも見るかの様な視線を王太子に向ける。


「朝から魚⁉ そんな暴挙が許されるのですか⁉」


 別に暴挙でもなんでもない。

 彼女の家の食生活は、本当にどうなっているのだろうか?

 そんな疑問をよそに、特待生は驚愕のあまり全身を震わせていた。

 その特待生に、王太子妃は言い切って見せる。


「許されます。公爵家ならば」


 公爵家でなくとも許されるはずである。

 説得が雑にも程があった。

 それでも、特待生には効果抜群だった。


「くっ……! しかし、相手は変態……!」


 特待生が必死に(あらが)う。

 正直、悩む事なく断るべきだと思う。

 変態を相手にするにしてはリターンが少なすぎた。

 そして、邪念を振り払う様に特待生は大きく(かぶり)を振り、立ち上がる。


「私は、弟妹の学費を稼がなきゃいけないんです! 私の贅沢の為に使命を捨てられません!」

「公爵家が御支払いします」


 王太子妃の言葉に、特待生が再び崩れ落ちる。


「あの子達の学費が解決する……? それなら……」


 特待生、陥落寸前である。

 正直、特待生は、性格が無茶苦茶な割に長女として身を削りすぎだと思う。

 もう少し、自分の幸せを考えてほしい物だった。

 だが、割と自分の事は後回しな特待生は真剣に悩んでいた。

 そんな時だった。


「分かってもらえたようだね!」


 意気揚々と変態が現れた。

 これ以上無いくらいの笑顔だった。見ていて、とても腹が立つ。


「私と婚約してくれ! 後、殴って蹴ってくれ! 最終的に罵ってほしい!」


 婚約の申し込みなのか、変態的要望なのか。

 とりあえず、主張を一つに絞ってほしいところである。

 だが、そんな公爵令息の言葉に、特待生はフラフラと立ち上がる。

 既に正常な思考ができていない様な表情だった。

 その特待生に公爵令息は嬉しそうに言葉を続ける。


「では、婚約の手続きを……」

「お姉ぇぇぇちゃぁぁぁぁん‼」


 公爵令息の声を(さえぎ)って声が響いた。

 次の瞬間には、巨大な何かが突っ込んでくる。

 その巨大な何か……、良く見ればサラマンダーが勢いよく公爵令息を跳ね飛ばす。

 錐揉(きりも)みしながら公爵令息が飛んでいく。

 そして、近くの商店に頭から突き刺さった。

 正直、ざまぁ見ろとしか言えない構図だった。

 そんな公爵令息を無視して、サラマンダーの上から愛し子が飛び降りてくる。

 そのまま特待生に抱き着き、叫ぶ。


「お姉ちゃん! しっかりして! 相手は変態だよ!」


 その通りである。

 相手は紛う事なき変態である。


「皆の学費は私がどうにかするから、妙な気を起こさないで!」


 愛し子が必死に叫ぶ。

 公爵家への嫁入りを妙な気扱いである。

 相手があの変態なので仕方ないが。


「私だって、お給料を貰ってるんだよ! 一人で抱え込まないでよ!」

「それは……! それは、貴方のお金よ! 皆の事は私がどうにかするから!」

「だからって、あんな変態は無いよ! 皆、そんな事、望んでない!」


 そう言って、愛し子が涙を流す。

 特待生が身売りでもするかの様なテンションだった。

 ただ、相手が相手なので極めて妥当(だとう)な反応だと思う。

 そんな遣り取りを見て、王太子妃が恥じ入った様に口を開く。


「申し訳ありません……。特待生さんを義姉として迎えられるかも、と思って、無茶を言ってしまいました」


 そう言って、王太子妃が頭を下げる。


「見慣れていたので、兄が極度の変態だという事を失念していました」


 ……失念しないでほしい。

 かなり重要な事項である。

 ただ、まあ、生まれた時から傍にいたら忘れるものなのかもしれない。

 そう考えると、王太子妃も可哀そうだった。


「お詫びに、公爵家から御兄弟の学費を無利息で貸す様に手配いたします」

「良いんですか⁉」


 王太子妃の言葉に特待生が声を上げる。


「返すのに何年かかるか分からないですよ⁉」


 まず返済の事を考えるあたり、特待生の金銭へのシビアさが伺える。

 そして、そんな特待生に王太子妃は静かに頷いて見せた。


「良かったね! 返済は、私も協力するから!」


 愛し子が嬉しそうに声を上げる。

 それに、少し困った様に微笑んで、特待生は言葉を返す。


「……そうね。今度は、ちゃんと頼るわ」


 そう言って、特待生は優しく愛し子の頭を()でる。

 愛し子は、そんな特待生に嬉しそうに頷いて見せた。

 そんな中、会話の輪の外から声がかけられる。


「ちょっと良いだろうか?」


 王太子だった。

 王太子が、商店に突き刺さった公爵令息を雑に引き抜いて帰ってくるところだった。


「何ですか?」


 特待生が言葉を返す。

 言葉を返しながらも、引き抜かれた公爵令息を警戒していた。


「いや、先程、君に爵位を与える話をしただろう?」

「……ああ、してましたね」

(ろく)が出るぞ」

「……は?」


 王太子の言葉に、特待生が間の抜けた声を上げる。

 そんな様子に、王太子は小さく溜息を吐き、言葉を続ける。


「領地は与えられないからな。爵位だけを与えて忠誠を誓えは通らんだろう。給与くらいは出す」


 ごもっともである。

 そして、下位であっても貴族へ支払われる給与である。低額ではないだろう。


「後、君には、聖女の護衛などを頼む事があるだろう?」

「ええ……。まあ……」

「とりあえず、要人護衛官という官職として、正式に君を任官する事になる」

「……つまり?」

「そちらも禄が出る」


 王太子の言葉に特待生が目を白黒させる。

 完全に予想外の話だったらしい。


「少し後の話になるからな。今、必要な金額だけ借りれば良い。借りた分も、返済に一年もかからないはずだ」

「本当ですか⁉」

「ああ。私も、君が公爵夫人になってくれれば嬉しいが、相手があれではな……」


 そう言って、王太子は背後に軽く視線を向ける。

 その視線の先には、気を失いながらも恍惚とした表情で痙攣(けいれん)する公爵令息が居た。

 気を失ってまで変態性をいかんなく発揮する見下げた変態である。

 そんな変態を居ないものとして、王太子妃が口を開く。


「それでは、行きましょうか」

「そういえば、視察の途中だったな」


 そう会話して、王太子と王太子妃が歩き出す。


「じゃあ、私達も行きますね」

「行こう。お姉ちゃん」


 特待生と愛し子もその場を後にする。

 そうして、王太子一行が去って行き、人々の往来が再開される。

 あっと言う間に賑やかな街並みが戻って来た。

 その場に残されたのは、完全に放置されたクレーター。

 そして、気を利かせた護衛騎士の一人の手によって縛り上げられた公爵令息だった。




 その後、目を覚ました公爵令息は、自分が縛り上げられている事に勝手に興奮し、不審者として通報されていた。


公爵令息は構想にあったのですが、本編に入れる余裕がなかったので、おまけにしました。

これで、手持ちのネタはなくなりましたので、完結とさせていただきます。


おまけまでお付き合い頂いてありがとうございました。

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