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■4-6


 紅葉狩りの目的も忘れてはならず、景観の良い場所を見つけて記念撮影を呼び掛けるのは美咲の役割だった。


「これ、こないだのサバゲ―会場で取った写真だよ。森山君、絶対ランちゃんの写真とか持ってないでしょ? ランちゃん自身も自撮りなんてしないだろうし、あんなに可愛いのになんて勿体ない。ランちゃんも受け取れるようにグループ専用アルバムにアップしておくね」


「そういえば全く無かったっす。一応大事な身内なんで感謝っす」


 今日は来てない藍という子は、美咲の元カレと破局の原因を作った人物だが、美咲はそのように受け止めてはいない。


 むしろこの仁との縁を結んだキューピッド役のように思っているらしい。


 不摂生が祟って覇気を失くしていた同僚男子があるときを境にみるみる健康的になっていって目を引かれ、何事だろうと気にしているうちに職場以外の場所で邂逅などして、何か縁があるのかもしれないと思い立ったその時から意識して仕方ないのだという。


 以前は仁の方が美咲にちらちら目線を向けている確証があったはずなのに、彼を意識しているとはっきり自覚した以降は自分の事をどう思っているのかわからなくなってしまったと言っており、複雑な思いを募らせている。


 人を好きになるきっかけなんて案外こんなものなのかもしれないが、恵から見れば二人の間にあるややぎこちないような雰囲気は両片思いのそれに違いない。


 藍という子が実は恋人なのではないか、などと疑ったところで意味はない。


 美咲のために用意された場所が仁の心にあるのならば、今よりもう少し踏み込んでそこを確固のものとするだけの事なのだ。


 他者の心に住み着く事は土地を開くようなもの。

 交流を持ち、通りを発見する事は既に成り立っている。

 自分たちが気に入ったその場所を大きく広げる事に遠慮がちだからいつまでも進展しない。


 未開拓地の地面を均して荒れた景観を整えてゆく事を"草刈り"と言うのだ。

 または草分けと言ったり、それを成した人の事を先駆者とも言う。


 当人たちじゃ頼りないその役割を代役すべく恵は今日ここに居る。

 今後の約束を持たせる大きな役割は既に果たしたものの、探せばもう少し手を貸してやれる場面もあるだろう。


「なんか、大半が毒盛り兄貴の写真っすね!」

 その高身長で美咲の背後からスマホ画面をのぞき込んだ薫が言った。


 有毒生物に詳しい事と、森山の森を"盛り"とかけて、毒盛り兄貴などという新たなあだ名が派生している。ヴェノメイザー森山はやめろと言われ、薫自身で安直に考えて作ったあだ名だ。

 何も知らぬ人が聞けば物騒極まりないが、仁は疲れた表情を見せて何かを諦めてしまいそれで許していた。


「そそそ、そんなことないよ! たたたまたまサムネイル表示が埋まってただけなんだから! ほほら、郁人さんがカラーガードを見せてくれた時のかっこいい動画も()()()()あるんだから!」


 あからさまに動揺する美咲が不意に愛おしかった。

 露骨に別の男を出して誤魔化そうとしたが、言い回しをしくじっており、これは支障にならないという事を教えているようなものだった。


 爆弾のような発言を用いたり、興味本位であらぬ所に突っ込んでいったりするのも、恋愛という名の開拓ゲームにおいては膠着した状況を打ち破る決め手にもなり得よう。


 相変わらず御し難いので活用しようは思わないが、自由にさせておくだけで存外使えるかもしれないと見直しが働いた。


 慌てふためく美咲に助け舟を出すように、峠道の各所にあるスピーカーから正午を告げる時報の鐘が鳴り響いた。


「あ、お昼だよ! 私お腹ぺこぺこ!」


 しかとこの機を見逃さずに場の空気を切り替えてゆく美咲。


「確かに、小腹が空いて来たけども、そういえばバーベキューの事ばかり考えて昼食の計画をし忘れてた。一旦うちの社宅に来てもらうのが良いかな」


「ううん、駆除作業を続けよう。三時からの予定なんだし、数時間くらい持ってきたおやつで凌げるよ。せっかくのバーベキューがお腹に入らなくなったら嫌だもん。みんなもそれで良ーい? きなこ棒あげるね」


 いの一番に空腹を訴えたはずの人物がそう主張し、男三人も難色を見せる事無く承諾したので恵も了承した。


 きなこ棒片手に駆除作業を続行し、抜いた害草を入れるための袋が十袋もパンパンに詰まり、もう誰もこれ以上は持てなくなった丁度その頃合いで一行はロッジのある場所に辿り着けた。


 腕時計で時間を見ると14時40分頃だったが、皆十分に働いてくれたのでもう切り上げて良いとし、いよいよお待ちかねのバーベキューを開催する事にした。




 

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