表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
30/54

■3-9


「あれはクビアカツヤカミキリ、バラ科樹木を食い荒らす外来種っす。一般市民にも駆除の協力を呼び掛けられているので殺して良いっすよ」


 仁が高い所の木の枝に止まっている昆虫を指差すと、郁人氏はリボルバー式のエアガンを構え、たった一発で見事にそれを撃ち殺した。


「そこの紫色の花、アメリカオニアザミだ。毒性は無いが茎と葉に鋭い棘があって怪我人が絶えない。繁殖力も強いため駆除要請のある外来種で間違いない。手で抜き取るのも危険ゆえ、一時しのぎでも刈っておく事を推奨する」


 藍が指差したのは人の親指ほど太い茎をした植物だったが、郁人氏は根本近くをこれまた一発で打ち抜き、自重に耐えきれなくして倒した。


「まだだ。花は無いが同じのが三株ほど周囲にある」


「よし把握した、任せてくれ」


 言った直後、引き金を引く動作を要求するシングルアクション式とは思えない早業で一息の間に三連射し、その全てを標的に命中させた。


「すごい連携プレー、何なのこの三人」


 BB弾を込めた薬莢型のカートリッジを郁人氏に手渡し、空になったカートリッジを受け取ってBB弾を装填する役割で付いて来た藤沢先輩は所在なさげだ。


「何でも詳しいランちゃんは当然虫の事も良く知ってるっすから、あの二人の連携っす。っと、そこのカブトムシの雌によく似たやつ、ヒメテナガコガネっすね。在来種と競合して生態を脅かせるので特定外来生物に指定されてます」


「そうやって補佐できるだけでなんだか羨ましい」


「いやまあ、やってる事は殺生っすからね。さほど気分良くも無いし、深入りしないで済むならそれが良いっすよ」


「僕は結構楽しいよ。磨いて来た腕が市民を守るために振るえていると思うとね。こうしていると腕も訛らないし」


「楽しいって聞いた瞬間、こいつサイコパスかと思った。倒置法で言うと危険な事ってありますよね」


「それは不味いな。銃器の免許は思想鑑定が厳しいんだ、気を付けよう」


「おいお主、あれを見給え」


 藍に呼ばれ、指差す先を見るとそこには誰もが見慣れた大型のバッタがいた。


「あれは、僕でもわかる。トノサマバッタだよね。元々日本に居るやつだから撃っちゃいけないんじゃないの?」


「そうだ、東京ならば主に河川敷などの広大な草原で見られる。それがどうしてこのような山間(やまあい)の丘陵部に居るかわかるだろうか?」


「どこで見てもそんな可笑しい気もしないけど、その言い方をするって事は、エクスプランターの影響って事かな?」


 藤沢先輩が答えたのを聞いて、仁はまさかと思いながら頭を振った。


「生息する草原の中でも主にイネ科植物が彼らの主食… それがエクスプランターで各所に豊富に蔓延するようになったから、って言いたいのか?」


「ああ、孤独相のようだから杞憂だろうが…」


「うーん、ランちゃんの言い回しは自分だけ理解が先に行ってて難しいよ。森山君まで最近そういうところあるなぁ」


 藤沢先輩の苦情を受け、深刻にしていた表情を和らげる藍。


「餌を得てトノサマバッタが各所で増えるようになれば、やがて新たな餌を求めて別の地へ移動を始め、個々のグループは気ままのように動いても、遥か高い所から俯瞰すればそれは希薄ながら大きな方向性を成している。その方向性がある密度を超えると蝗害と呼ばれるようになるのだ。それはかつて人々を幾度となく食糧危機に陥れ、近年になっても未だ太刀打ちし難い大災害だが、今のところ心配はなさそうだ。あのバッタは草花に紛れられる緑色をしているであろう。イネ科に関わらず手当たり次第の植物を食らうようになった仲間の餌食にならぬよう茶褐色の群生相という色に体色を変えていたら危険信号だったがな」


 銃を構える郁人氏に、「意味ないっすよ」と仁が制止した。


「蝗害の恐ろしさはその圧倒的な範囲規模っす。飛行機から殺虫剤を撒いたって焼け石に水というほどの。仮にここで目につく分を全て撃ち殺したとしても、発生を遅れさせる事もできない。起こる時は起こるものなので、起こらないよう祈るのが精々っすよ。まあそれを言えば外来種の個人的な駆除もあんまり意味ないか」


 そう説明した後も、郁人氏は引き金を引いた。

 撃ったのはバッタではなく、その奥に生えていたアメリカオニアザミだ。

 藍や仁も認識してないほどの距離だったが、郁人氏は距離などものともせずにまたも一発で命中させてみせた。










「もし東京で蝗害なんて起きたら、ランは狙われるのか?」


 藍と二人になったタイミングで、仁は聞いた。


「群生相になった奴らは肉食性をも獲得し手当たり次第の動植物に齧りつく。自ら振り払えない植物が主な餌食というだけの事だが… エクスプランターで猛威を振るう植物勢に自然界がその対抗策を打ち出したのは間違いなかろうな。よもやこのように邪魔建てしてこようとは、厄介極まりないよ」


 藍のその口ぶりからするに、どうやら蝗害の発生を避け得る未来はなさそうだった。





 ご愛読ありがとうございます、筆者です。


 いやあ、今回の邪魔者の正体が出せるまでに10ページで足りるかと思いきや、

 まさかの9ページに収まってしまい、

 場面飛ばしを多用して割愛した部分が悔やまれます。


 なにわともあれ、ここまでたどり着けましたので、

 次回から気を取り直して第4章、頑張ります!


 あと外来種の駆除をするシーンについてですが、

 普段はサバゲ―の会場という事だから良しとしていますが、

 普通の公園なんかでこんな事したらBB弾の不法投棄になります!

 絶対に真似しないでね!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ