■3-4
カウンターで話して少しばかり時間を潰したら、バイトで雇っている子が出勤してきたので店番を丸投げし、今日の練習場へ向かう準備を始めた。
郁人としてはいつも通りの予定進行だ。
自分の連れという事にして仁君と藍ちゃんも見に来てみないか、と誘ってみた。
今日はサバゲ―の戦略会議だ。初心者が見て楽しめる要素はあまりないだろうが、友人が居ないというこの二人には仲間と信頼関係を育む姿を見せておくのも悪くないだろう。下手すれば逆効果だがそこは如何に紹介するかの工夫が鍵だ。
仁君の方は勉強ぐらいしか今日の予定はないのであまり遅くならないのであれば全然構わないと言い、藍ちゃんは畑の世話があると渋っていた。
「そういやサイバーバーゲンってのは何か特別な行動とかするのか? 完成したらすげぇとは言ってたけど、具体的にどうすんのかは聞いてなかったから」
「何だその電脳特売所というのは。ザウバークーゲンの事なら、対話をして”加護”を与えるという形で、破滅効果を受けなくさせる方法を試している。美咲殿の家に行けば今日にでも早速成果は現れているはずだが」
ゲームの話か何かだろうか。
まさか畑というのも牧場系ゲームなどではなかろうか。
そんな事を理由に断られでもしたら流石にプライドはズタボロだ。
「そんなわけで今日は都合が悪いのだ。出来ればまた今度にでも誘ってくれ給え。連絡先は交換しておこう」
思った傍から断られた。
畑というのはちゃんとした畑なのだろうとして意思強くを保った。
「というか近く、我の方からまた来て良いだろうか? 残念ながらその時も客にはなれないが」
SNSのメッセージアプリのアカウントを相互登録し合ってる間に、藍ちゃんがそんな事を言ってきた。
「え? まあ、そんなのは全然」
人の好奇心などそう強く保たれないものなので、この娘は今日ここで帰したらもう銃への興味は消えてしまうものと思っていた。
「では、次回は履歴書を持ってくる。日程はメッセージで詰め合おうではないか」
「はあっ!?」
言い終わるが早いか、仁君がカウンターに身を乗り出す形をしてダイナミックに藍ちゃんの顔を覗きに行った。
「何か問題があろうか? バイトの募集はカウンターの奥に張り出しているぞ」
土日祝日限定で働いてくれる人を募る窓口だが、確かにバイト募集はしている。
先ほど店番を投げたバイトの子が出られない部分を埋める人材を欲していた。
別れた彼女に店番を頼むこともできなくなって募集を出したのだ。
郁人は経理と競技の練習だけに集中したかった。
「こんな受ける側が仕切った面接の取り付けがあるか! 俺が郁人氏なら絶対雇わねぇ! 銃の知識は確かにお前ならいくらでも取り入れていけるんだろうが、営業スマイルなんて出来る柄じゃねぇだろ! 何よりその見た目だけで客受けが大分裂する!」
「そもそもこの業界というだけで客足は大分裂されていよう。それでも足を運ぶ者らは、多分我を気に入ると思うぞ」
「だとしても、その喋り方は直せねぇだろ。藤沢先輩の前でもそれだったよな。っていうかお前は都民ですらねぇ! 宝泉市在住のままだろ。イタズラ癖だって暴露してやる。今朝また俺はテレビの前で片頭痛に頭を抱えたんだからな」
見ていると、何を取り上げてでも藍ちゃんの印象を悪くしようとわざとこき下ろしている風に思えた。
藍の突拍子もない提案にただただ唖然としていた郁人は、「まあ、雇うかどうかを決めるのは僕だから、ね?」と言って仁を落ち着かせた。
「藍ちゃんは銃の知識を取り込める自信はどれほどあるんだい?」
仁も否定しきれなかった部分を拾って聞いてみた。
別れた彼女はそのあたりが全く無関心で頼りなかった。
「必要なら、筆記テストなど用意してくれても構わない。と言える程度には」
本来なら好きが高じて詳しくなってゆくところを、地頭の良さだけで挑もうというのなら頼もしいを通り越して普通に尊敬できた。
仁が心配した独特な口調を郁人は気に入っているし、この娘と定期的に会える関係性を作るのに絶好の提案だった。無知な元カノに任せていた程度の仕事という事もあってテストを施すまでもなく既に雇っても構わないと思っていた。




