政治的なあれこれ 4
息を整える。なんだかずっと、息が苦しい気がしている。
わたしは官吏を見た。「計測します」
ざわめきが起こった。どうやら皆さん、わたしが「聖女」だとは考えていなかったようだ。わたしだってそう思ってはいない。だけれど、やるしかない。
官吏が頷いて、再び下位コンバーターを調べる。三人がかわるがわる計測し、促されて宮廷魔導士達もそうする。軒並み、MP現在値が減っていた。
続いて、ランベールさん、王太子護衛隊隊長、王室護衛隊の兵達、王太子護衛隊の兵達が次々計測していく。ランベールさんの〈器〉は、3021もある。
「流石だな、ランベール、暴れ者め」
エドゥアルデさまは嬉しそうに云う。「王室護衛隊のなかでお前が一番の古株だものな。そして、いつだって先陣を切る。出発前は3000を越えていなかったのを僕は覚えているぞ」
「……お誉め戴きまして」
「おや可愛くない」
エドゥアルデさまは肩をすくめ、下位コンバーターへ近付いた。それから、くるっと、妹を振り返る。
「レディーヌ、お前もはかるといい。病人の看護で〈器〉をもらえたのじゃないか?」
レディーヌさまは、ぎゅっと両手を握りしめていた。小さく頭を振るが、エドゥアルデさまは、レディーヌ、と優しく呼びかける。
侍女のひとりが云った。「王太子殿下、おおそれながら」
「黙れ。僕は妹と喋っている。レディーヌ、聖女さまに疑いがあるのなら、王家の人間である僕らは積極的にそれを晴らそうとすべきだ。それとも、君自身が聖女さまに対して疑念を持っているのか? そういえば昨夜も、聖女さまの髪や瞳の色がどうこう云っていたが」
「いいえ!」
レディーヌさまが叫ぶように云い、自分でも驚いたような顔をして、それからあしばやにこちらへやってきた。ランベールさんがわたしの腕をとって促し、下位コンバーターから離れさせる。「わたくしもはかりますわ……聖女さまの為に」
サレイレスさんが幼い王子に、険しい表情でなにか云っていた。王子さまはぶうたれている。わたしがイメージしていた聖女と違い、がっくりきたのだろう。
レディーヌさまは浅い呼吸で、〈器〉を計測した。表示された数値を見て、ごくんと唾を嚥む。
「やあ、やっぱり前よりも大きくなったじゃないか。783もある。たいしたものだ」
エドゥアルデさまは大きな声でそう云い、妹のせなかを撫でた。「平均が550くらいだから、それより200以上も大きい。……まあ、最低でも1000を越えないと、戦では役に立たぬそうだが」
レディーヌさまははじた様子で、さっと走って戻っていった。
エドゥアルデさまは自分も、簡単に〈器〉をはかる。
「ロウセット子爵のところで、化けもの狩りをしたのだが、大して増えていないな。官吏、きちんと記録したか」
官吏達が頭を下げた。エドゥアルデさまの〈器〉は、1823。とても大きい……のだろう。
王太子殿下は低声で毒づく。「まったく、あの子は思慮が足りない。〈器〉の小ささがはずかしいなら、僕のようにばけものを殺せばいいのだ。僕の〈器〉がもとはたいしたものではないと知っているだろうに、病人に感謝されていい気になっている」
「殿下」
「なんだランベール? 僕がなにか問題になるようなことを云ったか?」
ランベールさんは黙っている。兵や官吏、宮廷魔導士、侍従達は、頭を振って否定した。
エドゥアルデさまはにっこりする。
「可哀相な病人を世話して、〈器〉をさしだしてもらえるような妹を誉めたんだ。違うか?」
「……違いません」
ランベールさんが渋々答えた。




