政治的なあれこれ 3
空がくらくなってきた。雪が降るのかもしれない。
兵達が戻ってきた。それぞれ、年若い男女をつれている。官吏や侍従、侍女、も一緒だ。
全員、きちんとした仕立ての服を着ている。が、エドゥアルデさまや、レディーヌさまのような豪華さはない。
「剣聖どの」
五十代くらいの侍従がこちらへやってきた。ある程度の距離で停まる。「急な呼び出しですね」
「申し訳ない、サレイレスどの。詫びは何れ」
「いや、必要ありませんとも。なにしろ、聖女さまを直に拝めるのです。聖女さま付きになれないかと思っていたのですが、毛並みの悪さはどうしようもなかった」
サレイレスさんはにこっとする。「うちのぼっちゃんはわくわくしておいでです。聖女さまなら、もの凄い〈器〉だろうと、鼻息が荒いですよ」
そう云って、こちらへ向けて深くお辞儀すると、小学生くらいの男の子の許へ戻っていく。
集まっているのは、王子や姫、らしい。なかには年嵩のひとも居る。
女性は少なくてふたり、どちらも十代かそれ以下だ。可愛らしいドレスを着て、わくわくした顔でこちらを見ている。
男性は、十代以下から、三十代くらいまで。似たような外套を着ている。
王子や姫と云っても、全員が王さまの子どもなのではない。王さまの甥・姪、いとこ、はとこまではそう扱われる。場合によっては、それより遠くても。
姫は、ある程度の年齢になったら貴族へ嫁ぐので、宮廷を出る。なので、人数が少ないのだそう。王子達は、貴族へ婿入りしたり、功績をあげたら領地をもらえることもあるのだとか。それに、軍を指揮して土地を奪えたら、幾らかはもらえるものらしい。だから、あえて貴族へ婿入りせずに、宮廷へ残っている王子も居る。
「閣下」サレイレスさんが、小学生くらいの王子を追いかけている。「遊びに来たのではないのですよ」
王子は楽しそうにきゃっきゃっと笑って、漸くと落ち着いた。近くの小さなおひめさまが、くすくす笑っている。
遠くから、馬にのって、ナタナエールさんが戻ってきた。なんと、そのせなかに、エドゥアルデさまがしがみついている。
エドゥアルデさまの姿が見えると、皆、さっと姿勢を正した。馬が停まり、ナタナエールさんがひらりと飛び降りて、エドゥアルデさまに手をさしだす。エドゥアルデさまはにっこりしてナタナエールさんの手をとり、馬から降りた。
「ありがとう、ナタナエール卿」
「恐縮です」
エドゥアルデさまはナタナエールさんの手を握ったままだ。ランベールさんがそれを睨みつけている。
王太子護衛隊が、泡をくって、馬を飛ばしてきた。ろくに速度も落とさず飛び降りる。馬は賢く、大人しく停まった。
「王太子殿下!」
「ああ、いい、叱言はやめてくれ。王室護衛隊の騎馬技術を体験してみたかったんだ。僕とは桁違いに上手なのが解った。速度が違う」
エドゥアルデさまはにっこりして、漸くとナタナエールさんの手をはなした。それから、こちらを向いて、すたすたと歩いてくる。王太子護衛隊と、ナタナエールさんも来た。
「聖女さま」エドゥアルデさまは軽く会釈する。「妹が騒がせたようですね。あの子は歳の割、落ち着きがない」
「いえ……」
「聖女さまの目にとまらぬところで叱るとしましょう。聖女さまの用事がすんで、五つ葉の城へ戻って戴いてから」
エドゥアルデさまの笑顔がこわい。わたしは頷いて、下位コンバーターを振り返る。ランベールさんがエドゥアルデさまへ云った。「殿下」
「叱言は要らぬというに。それとも、やきもちか? ランベール」
ランベールさんは肯定しない。けれど、否定もしなかった。




