表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

92/1167

政治的なあれこれ 2


 ロッルさんが喘ぐように云った。「しかし、聖女さまらしからぬ、灰色でない髪の女人で、おそらくどこぞの田舎貴族の娘ではと」

 云ってから、はっと口を片手で覆う。エーミレさんとツェレスタンさんがそれを睨む。

 ランベールさんに表情はない。くるりと、宮廷魔導士三人を振り返る。三人が怯む。

「マルス師、タリエル師。おふたりが昨夜、麦穂の城へ呼ばれたと聴いた。まさか、今朝あめのさまがこちらで〈器〉を計測することを、誰ぞにもらした訳はあるまいな?」

 マルス先生が顔を伏せた。「も、も、申し訳ございません。侍女らに……」

「次、そのようなことがあれば、まっさきに我らに伝えるのだ。()()()?」

 ランベールさんはそう脅しつけ、宮廷魔導士三人は震えあがってはいと答えた。


 わたしはきょとんとしている。いまいち、話が見えない。

「大丈夫ですよ、あめのさま」ぼーっとしているわたしに気付いて、ツェレスタンさんが云う。「コンバーターは、どれも、壊れることなどありえません。計測結果は正しいのです。ならば、なにをおそれることがありましょうか」

 わたしは首を傾げる。おそれることはいっぱいある。わたしはこわがりだ。陛下もこわかったし、王太子殿下はずっとこわい。阿竹くん達を傷付けるかもしれないのもこわいし、戦わなくてはいけないのもこわい。

 エーミレさんが小さく、憐れむような声を出した。

「ツェレスタン。あめのさまは心根が清らかでらっしゃるのだ。あのように、賢しらに計略を弄し、自分で掘った穴に自分で落ちるような愚か者とは違う。それ故に、その手の者らの気持ちも、やることも、理解はされないだろう。だから、我らがきちんとまもらねばならぬ」

「エーミレの云うことには同意せざるを得ぬな」

 ランベールさんは息を吐く。「ロッル、夜には宮廷を追い出されていても仕方がないのだと、理解したか? お前だけでなく、今朝麦穂の城へ詰めていたお前の部下達も?」

 ロッルさんが泣きそうになっている。しかし、こっくり頷いた。

「責任は自分が負います。ラクールレル隊長、どうぞ、部下を救ってはもらえませんか」

「職務放棄する者どもを助ける義理があると……」

 段々、会話の内容が頭に染みこんできた。公主さまは、本当はここに居てはいけなくて、それを破ったから、護衛のひとと侍女達がくびになりそう……ということ?


「あの」

 おそるおそる声を出す。ランベールさんの緑の瞳がこちらを見た。

「なんでしょう、あめのさま」

「わたし、もどりましょうか? わたしが居なければ、問題、ありませんよね?」

 エドゥアルデさまは、わたしが女性に近付くことを禁じているのだ。わたしが、寝坊でもして、〈灰の広場〉に来ていなかった、となれば、問題はない。

 と、思ったのだが、ランベールさんは溜め息を吐いた。

「その必要はありません。ロッル、聖女さまはお前の愚かしい言動をゆるしてくださるようだ。それに免じて、巧くいく保証はないが、口添えはしよう。聖女さまへ感謝せよ」

「はっ」

 ロッルさんは感激したみたいで、目を潤ませてわたしへ向く。しかし、それ以上のことはランベールさんが遮った。「そうやってまた軽率な行動をとるつもりか? 公主殿下の面目を潰したと、公主殿下付きの侍女が喚くだろうに?」

「あ……申し訳ありません」

「お前はもう少し思慮深いと思っていた。陛下とエドゥアルデ殿下がお咎めなしと仰言っても、わたしは職務においてお前とは関わりを持ちたくない。簡単に云うと、わたしはお前を見限った。では、戻れ」

 ロッルさんは、哀しそうな悔しそうな表情で、はい、と云い、さっとレディーヌさま達の許へ戻っていった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ