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王太子からの貢ぎもの 1


 次の朝。顔を洗い、歯を磨いてから、ふっと気になったので、マーリスさんに訊いた。夜の間に見張りは交代したらしく、起きたらマーリスさんとアムブロイスさんが居たのだ。

 今日は何月何日か。四月十三日、らしい。わたしは首をひねった。冬がどうこう云っていたのは、なんだったんだろう。……もとの世界とは違って、今は秋なのかもしれない。

 ドレッサーに用意されていた木櫛をありがたくつかって、髪を梳いた。コランタインさんのつくった髪油を軽くなじませて梳くと、髪がまとまる。

 何度か梳いていると、白いローブのひとが訪ねてきた。


 ノックの音がして、マーリスさんが対応する。わたしは櫛を置いた。廊下に立っていたのは、昨日見た、白いローブのひとと、王室護衛隊に似た外套の兵ふたり。ローブのひとは三十代くらい、兵はどちらも高校生くらいだ。

 マーリスさんが云った。

「なんでしょうか、宮廷魔導士さま」

「殿下の命で、聖女さまのお召しものをご用意いたしました」

「こちらです」

 兵ふたりは、重たそうな衣裳箱を持っている。

 アムブロイスさんが顎をしゃくった。「そこへ。なかを改める」

 兵ふたりは頷いて、衣裳箱を降ろす。マーリスさんが蓋を開けた。衣裳箱は、縦40cm×横80cm×高さ50cmくらいの大きさで、ニスのかけられた明るい茶色の木製。花や細い葉っぱの彫刻が施され、ところどころ金を塗ってある。本体の左右に把手がついていた、かなりしっかりしたつくりで、蓋は重たそうだ。

 アムブロイスさんが屈み込んで、箱のなかへ手をつっこんだ。マーリスさんは兵達へ親しげに話しかける。

「マイズトライル軍だったか?去年は大変だったな」

 ふたりは感激した様子で、小さく頷く。「まさか、マーリス卿に覚えていてもらえるなんて」

「光栄です」

「俺はラツェレイユの出なんだ。お隣の領なんで、覚えていた。それに、お前達の働きはなかなかのものだったよ。王太子護衛隊へひきぬかれるのも解る」

 アムブロイスさんが立った。

「問題ないようだ」

 兵ふたりが頷いて、衣裳箱に蓋をし、把手を掴む。失礼いたしますと云って、這入ってきた。わたしは立ち上がる。


 マーリスさんとアムブロイスさんが、すでに部屋にある衣裳箱を脇へ避け、兵ふたりがそこへ新しい衣裳箱を置いた。エドゥアルデさまの云っていた、まともな衣裳と云うやつだろう。

 マーリスさんが蓋を開けた。わたしは傍へ行って、なかを覗きこむ。あんまり身をのりだしたら、蓋で首をはさまれてしまいそう。

 なかにはドレスが詰まっていた。ほとんどが暖色で、黄色やオレンジに金がはいったものが多い。寒色は少ないが、ペールブルーに黒でぬいとりがしてあるものと、若竹色に金のレースで装飾が施されているものがあった。

 兵達が、衣裳箱より小さな箱を持ちこんできた。サイズは幾つかある。再び、アムブロイスさんがなかを改めた。問題はなかったようで、その箱もこちらへ運ばれてくる。

 どれも、衣裳箱と同じような彫刻がなされていて、しっかりしたつくりなのも同じだ。マーリスさんが蓋を開ける。

 ふたつは、靴箱だった。ブーツ、短めのブーツ、パンプス、ベルトのついたローヒール、室内履きらしい布ぐつ、など、沢山並んでいる。

 ひとつは、ケープやローブなど、羽織るもののはいった箱。そちらも暖色が圧倒的に多い。わたしには暖色が似合うと、王太子殿下は考えているらしい。

 一番小さな箱には、宝飾品が詰まっていた。おもに、金や、黄色やオレンジの宝石のはまったもの。わたしに似合うかどうかでなく、単に、〈陽光の王国(スプロ・ルオ)〉のカラーだから、かも。


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