焼き芋作成
装飾的ではない、松材のベッドに、ふっかりふくらんだマットレス、触り心地のいい綿のシーツ、ふかふかのクッション、タオルケットと毛布。しっかりした天蓋と、二重のレースカーテン。火のはいったランタンが置かれたベッドサイドテーブルに、衣裳箱と、ドレッサー。
天井からはおしゃれな灯がさがり、壁には、白地に浅い緑で紋様の描かれたクロスがかかっていて、窓ははめ殺し。床は石張りだ。
隣は浴室で、壁にはりついたような、というか掘り出したような、不格好な浴槽があった。いや、壁から出現したような、かしら。
ナタナエールさんとコランタインさんに促されたので、早速お風呂にはいった。一応手を洗ってはいたけれど、まだランベールさんの血の匂いがする。服に血が残っているのだろう。
服を脱いで、洗った。泡が茶色っぽくなる。なかなか色がなくならないので、大きめのたらいに水を張って、沈めておく。
体を洗った。お湯を出すのは簡単だが、まだ、いきなり出てくると吃驚する。シャワーみたいで便利は便利なんだけど……。
服を洗い上げ、浴室から出た。それにしても……おなかが減った。
いい香りがする、と思ったら、ナタナエールさんがハーブティーを淹れてくれていた。りんごのような甘い香りだ。
「あめのさま、どうぞ」
「ありがとうございます……」
マグをうけとる。ベッドに腰掛けた。コランタインさんが、浴室へ這入っていく。コランタインさんはせっけんや油類をつくるのが得意で、船室に用意されていたせっけんと髪油は、コランタインさんがつくったものらしい。
お茶をすすった。ローズマリーとスペアミントがかすかに香る。今日は、こしょうははいっていなかった。わたしが気にいったと認めたからか、船では毎食、それに寝る前に、これが出てきた。毎回少しずつ味が違って、どうも、わたしの体調に合わせてくれているらしかった。
「いつも、おいしいです」
ナタナエールさんはにっこりした。
コランタインさんが戻ってくる。兵ふたりで、低声で喋りはじめた。内容は聴きとれない。
ハーブティーを飲むと、余計におなかが減ってきた。魔法でなにか出せるかもしれない、と考える。氷は出せるのだし。
木は、植物や、木の実、食糧、と云う意味もある。エーミレさんやアムブロイスさんは、食材を魔法で出して、それを調理しているらしい。調理済みのものを出すのは難しいのだそうだ。魔力消費が激しいのと、イメージが困難だから。
焼き芋……くらいなら、できないかしら。材料はひとつだし、調理も単純な方法で、味付けはしていない。焼き芋にお塩つけて食べるの好きなんだけど。
マグを両手で持ったまま、考える。ベにあずまかな、ベにはるかかな、シルクスイートもおいしいし、甘太くんも好き。
とりあえず、ほくほく系を食べたかったので、そういう焼き芋をイメージした。毎日焼き芋でもいいくらい焼き芋はおいしい。
「ミングレイ・パーズ・メット」
ベッドサイドテーブルにマグを置いて、そう云うと、掌にころんと焼き芋があらわれた。
ほかほかで、ずんぐりした形状で、蜜が垂れていて、両端が軽く焦げて甘ーい香りがしている。やきいもだ!
思わず、ぴょんと立ち上がった。焼き芋を掲げて、くるっとまわる。巧くいったのが嬉しい。
それから、ひとが居たことを思いだして、慌てて座った。はずかしい。
「あめのさま……」
ふたりが驚いた顔でこちらを見ている。わたしは顔を俯ける。
ナタナエールさんがやってきた。「これは、食べものですか」
小さく頷く。ナタナエールさんはコランタインさんを振り返って、ふたり揃って首を傾げた。
焼き芋があたたかい。




