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私の命終わる日に ――終焉の女騎――  作者: 葉都菜・創作クラブ
第4-1章 幻想の終わり ――ファンタジア遺跡――
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第58話 ドールと少年の恋人

「女王の間はこの先です!」


 私とネーヴェたちはサキュバス城の最上階に辿り着くと、女王の間を目指して下の階と同じような廊下を駆け抜ける。この先にフィルドさんたちがいる。

 グレイシアは最上階の女王の間から来た。彼女は「フィルドを始末した」と言っていたけど……。いや、そんなことあるハズがない。ただ、不安だった。今のフィルドさんはかつてのように強力な魔法は使えない。その事実がグレイシアの言葉に真実味を帯びさせる。


「あの部屋が女王の――」


 ネーヴェが指差す先に、私は移転魔法で先に飛ぶ。そして、すでに開いている扉に向かって地面を蹴り、部屋に転がり込む。


「…………!?」


 部屋には幻想的な光景が広がっていた。凍った海。一目見たとき、私はそんなことを感じた。床は氷で覆われ、無数の大波は部屋を飲み込む瞬間で凍っていた。


「いらっしゃい……」

「…………!」


 凍った部屋の奥から、1人のFクローンが私を出迎える。グレイシアとは異なり、彼女の服は白いスーツを纏っていた。紺色のスーツを纏うネーヴェたちとも違う。


「だ、誰だお前!?」

「私は『氷の兵団』所属コマンダー・バラス中将。ファンタジア派遣部隊の一員でもあります」

「バラス、中将……?」


 ネーヴェが一歩後ずさる。あれ、ファンタジア遺跡にいるクローンはネーヴェ“少将”が管理しているハズじゃなかったのか? なんで中将が……?


「君が探しているのはこの子でしょう?」


 バラスが右手の指を鳴らす。すると、彼女の後ろの氷が、私の左右にあった氷塊が音を立てて砕ける。氷の破片が床を統べる。


「…………!!」


 割れた氷塊に閉じ込められていたのは、白地に赤いラインの入った軍服を纏った1人の女性軍人――フィルドさんだ! 彼女の手足には鋭く長い氷柱が深々と突き刺さっていた。あれで身体を支えているらしい。

 左右の氷塊にはそれぞれサーガとスカジが同じようにして磔にされていた。3人とも気を失っているのか、何の反応もない。


「とても強くて可愛らしい方ですね。素晴らしい『姉さん』になるでしょう」

「貴様……! フィルドさんたちをいますぐ離せぇ!!」


 私は腰に装備した黄金色の剣を手早く抜き取り、氷の地面を蹴ってバラスとやらに飛び掛かる。バラスもすぐにその場から離れる。


「あなた、パトラー=オイジュスですね? “ファンタジアの敵”であるあなただけは『姉さん』になることは出来ませんね……」

「え、えっ?」


 ネーヴェは何のことを言っているのか分からないらしく、状況についていけていない。私は“ファンタジアの敵”という言葉の意味を知っている。後悔はしていない。

 バラスは浮遊魔法で浮かび上がり、フィルドさんの側に近寄る。色白の手でフィルドさんの右頬から顎にかけてゆっくりと撫でる。


「あなたの弟子を殺すこと、許してくださいね」

「いい加減離れろ、お前!」


 私はバラスに手のひらを向ける。途端、彼女の姿は部屋の出入り口に現れる。彼女は一瞬、驚いたような表情を浮かべる。移転魔法は初めてだったかな。


「コ、コマンダー・バラス中将、なぜあなたがここにいるんですか!?」

「ネーヴェ少将、愚問はやめてください。グレイシアがあなたごときを信じてるとでも思っているのですか?」

「…………!」

「グレイシアは表向き、あなたをリーダーとして派遣しましたけど、監視役として私も同行していたのですよ。でも、今はどうでもいいことです。なぜなら私は――」

「――僕と一緒に世界を奪うからですよね。ありがとう、バラス」

「…………!」


 私の後ろ――女王の間の奥から別の声が上がる。私はネーヴェと背中を合わせるようにして素早く後ろに構えを取る。


「お前がドール=ファンタジア……!」


 フィルドさんを閉じ込める氷柱の後ろから黒色のスーツを纏った少年が現れる。武器は持っていない。やっぱり格闘系の戦闘を……。


「私はこの地で初めて存在意義を見つけました。私のいる意味、生きていく意味、存在する意味、やっと見つけたんですよ……」

「ひぃっ、バラス中将! その魔法は――」

「…………!?」

「ドール卿と共に、クク、ハハハ……ファンタジア帝国を再生させる! そして、貴様らを支配する! それが私の存在理由だ!!」


 私の後ろにいるバラスの口調が突然荒くなる。禍禍しい闇のエネルギーが伝わってくる。女王の間に、暴力的なエネルギーを纏った空間が広がる。――ラグナロク魔法を使い始めたらしい。


「ありがとう、バラス。本当に、本当にありがとう……!」


 少年は目に涙を浮かべてバラスへの感謝の言葉を口にしている。バラスもドールも危険な空気を感じる。グレイシアとはまた違った空気だ。


「お前たちの首を斬って世界に対する宣戦布告としよう……! さぁ、死ぬ覚悟を決めろ!」

「ひぇ、私も!?」

「ファンタジア再生の第一歩です……!」

「…………!」


 私は剣を構えてドールに向かっていく。ネーヴェもバラスに向かっていく。私は狂気じみた彼らによるファンタジアの再生を見逃すつもりはない。――“あの時”と同じように、倒すだけだ!

 <<幻想の果てに ――9章――>>


 女侵略者の国が滅んだ後、皆殺しから逃れたとある姉弟の王族は、太古の遺構で再起を図る。

 だが、弟はもはや人の力で民を救い、この世に平安をもたらすことは不可能だと主張した。故に人外の力に頼るとも。

 姉は弟の献策に耳を貸さなかった。彼女は人の力で国を再興させようとした。

 紅の月明かりの下、弟は姉を殺す。

 そして、彼は歪なる商人と手を結び、女複製兵を手に入れる。やがて、彼はある女複製兵に親愛の感情を抱くようになる。

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