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私の命終わる日に ――終焉の女騎――  作者: 葉都菜・創作クラブ
第3章 輝けるマナ ――廃都グリードシティ――
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第45話 フウカ将軍

 【廃都グリードシティ 中央市街地】


 私を抱きかかえたミズカが、ゼリーと瓦礫だらけの地面を蹴り、後ろに下がる。今までいた場所に数本の雷が落ち、激しい衝撃波が辺りに伝わる。


「また逃げられたか」

「逃げる速度だけは一流ですね。そんなことでいいんですか、筆頭将軍さん。お姫様みたいに抱きかかえられちゃって」


 ルミエール政府のレク中将があからさまな挑発をしてくる。だが、無駄なことだ。今の私はもはや満足に動けない。私が挑発に乗ってレクに飛び掛かるなんてことはない。

 一方、レクの後ろから飛び上がるジュピター中将は、右腕に紫色をした閃光を放つ電撃をほとばしらせる。ラグナロク魔法を纏った電撃だ!


「…………!」


 私たちの前にフウカが飛び出す。彼女は右手を高く上げ、勢いよく下げる。同時に空から数本の雷が落ちてくる。ラグナロク魔法を纏った電撃は、空から落ちた雷によって打ち消される。


「……ダメですね。雷魔法じゃ攻撃が届きませんね」

「あの女……」

「あら、今更私の能力に気が付いたのかしら?」


 フウカが勝ち誇った笑みを浮かべながら言う。実際、ジュピターは雷魔法を得意としているらしく、雷属性以外の魔法攻撃はしてこない。その攻撃を、フウカはさっきのように全て打ち消している。


「能力の概要は知っていたが、その威力が予想以上だったということだ。お前は風のイノベーションだけじゃない。――『天候』のヴァルキュリア。お前のもう一つの能力、私たちが全く知っていないとでも?」

「あなたに期待されていたのはヴァルキュリアとしての能力で、イノベーションはオマケ的なシロモノでしかなったハズですよね」

「よく知ってるじゃない。そうよ。クラスタは最初、Vクローンを作っていたのよ。でも、私が風のイノベーションという能力を持って生まれたが故に、あの女はIクローンの開発を始めたのよ。そして作られたのがミズカたち」


 ……クリスター政府のクラスタは、最初はより強力なクローンを作ろうとして、Vクローンを作り出した。その第一号がブリュンヒルデとフウカだった。ブリュンヒルデは「重力」を、フウカは「天候」の能力を持って生まれた。

 だが、フウカは「天候」に加えてより高度な特殊能力――後に風のイノベーションと呼ばれる能力を持って生まれた。クラスタは彼女の能力に目を付け、新たにIクローン計画を始動させ、ミズカを作り出した。ミズカの成功後、クラスタは更にボルカ、ホノカ、ヒエカを作り、Iクローン部隊を創設した。

 私とパトラーは一連の計画に反対して、クリスター政府から離脱した。そして、ヴァルハラ帝国に入るまでずっと傭兵をやっていた。


「天候に風のイノベーション。ずいぶん、強力な能力を持っていますよね。あなた、本当は――」

「ふふっ……」

「――ブリュンヒルデよりも強いんじゃないのですか?」

「……なっ、そんなことありえるか! あの人は最強のクローン――」


 ブリュンヒルデを心から慕い、愛しているミズカが私を抱きかかえたまま、レクに向かって強い口調で反論する。だが、それを止め、レクの言葉を肯定したのは――


「――ミズカ、大好きな人だからって理屈抜きで擁護しても、意味はないわよ」

「…………!?」

「ええ、レクちゃんの言う通りよ。正直言って、私はブリュンヒルデちゃんに負ける気はしないわ。クリスター政府もそれを認めていたんじゃないかしら? 旧クリスター政府で私は将軍だった。でも、ブリュンヒルデちゃんは中将。Iクローン部隊とVクローン部隊の隊長も、私が兼任していたわ」


 フウカの事実に基づいた言葉に対し、ミズカは黙り込んでしまう。彼女も本当は分かっているんだろう。フウカとブリュンヒルデでは、前者の方が強いことぐらい。

 だが、ただ強いだけで統治することは出来ない。ルミエール政府だって、ブリジットが最強戦士というワケでもないだろう。そもそも彼女はただの人間だ。


「…………!?」

「…………!」


 急にレクとジュピターの顔が強張る。2人は身構えつつ、後ずさる。その視線は私たちじゃない。私たちの後ろを捉えていた。

 そのとき、別方向で爆発が起こる。私は爆発がした方に視線を向ける。2人の女性が走ってきていた。1人はクローン。もう1人は黄色の髪の毛にエメラルドグリーンの目をした人間――パトラーだ!


「フィルドさん!」

「パ、パトラー!? お前急にいなくなって――」

「話は後にしましょう? まずはお家に帰らなきゃね。――いくわよ!」

「はい、フウカ将軍!」


 何かから逃げながらこっちに走ってきているパトラーは私たちに手をかざす。途端、私たちの足元に青色に光り輝く魔法陣が現れる。


「魔法陣!? 転送魔法のようですっ!」

「逃がすな!」

「まだ勝負は終わってないぞ!」

「…………!」


 パトラーとアースの後ろからは、グラディウスとウラヌス、サターンの3人が追いかけてきていた。ルミエール政府の高位軍人が3人だと!?

 だが、追いつけはしない。やや距離がありすぎる。パトラーがこの魔法陣に入り、移転魔法を作動させる方が早いだろう。


「それじゃぁ、“可愛いあの子”の相手は任せるわ。遊んであげて」

「…………! しまった、お前まさか!」

「ワナでしたか……!」


 な、なんだ? どういうことだ? 私はミズカの後ろに目を向ける。ああ、なるほど。そういうことか。だから、わざわざ中央市街地まで逃げて来たのか。


「う、うわっ、アレ!」

「…………!」


 アースとパトラーもぎょっとしたような表情を浮かべる。まぁ、当然と言えば当然のことだろう。まさか、フウカの言ったか“わいい子”があんな怪物とはな……。

 パトラーとアースが魔法陣の中に入る。すると、魔法陣の輝きが一層強くなり、次の瞬間には周りの風景が流れていく。それは、ルミエール政府の高位軍人たちの姿だけでなく、高層ビル群を自身の巨体で押し壊しながら迫ってきていたゼリーの怪物――“エターナル・ウォプル”の姿も同じだった。

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