表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
私の命終わる日に ――終焉の女騎――  作者: 葉都菜・創作クラブ
第3章 輝けるマナ ――廃都グリードシティ――
27/146

第25話 俺に水は効かない

 【廃都グリードシティ 上層 南部旧市街地 ファンタジア公園】


 電撃音が鳴り響き、私たちは目的地に降り立つ。目の前に広がるのは、……廃墟だ。崩れかけた建物が私たちの周りを囲んでいる。


「ここは……?」


 灰色の軍服に青いマントを纏ったクローン女性――ミズカが言う。彼女は持っていた青色の和傘を広げ、雨を凌ぐ。


「……ファンタジア公園?」

「確実?」

「うん。フィルドさん、あの銅像――スキピア=ファンタジア女帝じゃない?」


 パトラーは広場の中央にある半壊した女性の銅像を指さす。甲冑を纏った女性の銅像だ。確かにスキピア=ファンタジア女帝のだろう。


「残念。出現地点がズレたようだな。早いとこヴァルハラ軍の拠点に向かおう」


 ミズカはそう言い、左腕に装備した小型コンピューターを操作し、目の前に地図を表示させる。


「……行こう」


 場所を確認したミズカは、地図が表示された電磁スクリーンを消し、勝手に先に進み始める。私たちも彼女の後を追おうとする。

 だがそのとき、半壊の建物からゼリーが染み出してくる。水色のゼリーはそれぞれ1つに固体化し、魔物――ウォズルと化す。全部で3体か……。


「邪魔。さっさと消えろ」


 ミズカは和傘を閉じ、白い衝撃波を纏う。彼女は和傘を武器に、3体の中型ゼリー・モンスターに飛びかかる。


「ミズカ、ウォズプルに物理攻撃は効かないぞ!」

「…………」


 私の忠告を無視し、ミズカはウォズプルの身体に和傘を叩き付ける。水属性の魔物はその場から弾かれ後方に下がらされる。だが、ダメージはなさそうだ。

 ウォプル系モンスターはゼリーの塊。水属性の物理・魔法攻撃は無効化され、物理攻撃はほとんど効かない。


「きゅおおぉおぉぉっ!」

「…………」


 2体のウォズプルに、左右を取られたミズカ。彼女に向かって、ゼリーの魔物は水撃弾を撃ってくる。彼女の姿が水が弾ける音と共に消える。


「無効。俺に水は効かない」


 水しぶきの中から青い和傘が飛び出してくる。ウォズプルの1体が突き飛ばされる。だが、やはりほとんどダメージはない。

 ミズカは水属性のイノベーション・クローンだ。彼女に水属性の攻撃は一切効かない。だが、ウォズプルも水属性の攻撃を行う魔物。水属性は効かない。……勝負がつかない。


「もういい。ここは私が――」


 私はヴァルハラ帝国から貰った剣――エレメント=ソードを抜き取る。この剣は魔法発生装置と呼ばれる特殊な機械が埋め込まれた剣で、人工魔法を使うことが出来る。この剣で雷属性の攻撃をすれば――。


「不要。お前の手助けはいらない」


 ミズカは私に背を向けたまま言う。3体のウォズプルが彼女に迫っていた。ダメージはほとんどない。それどころか、雨水を吸収して完全に回復している。


「いや、違う。お前に任せていたら日が暮れるから私がやるんだ」


 私はエレメント=ソードを起動させ、刃に電撃を纏う。ウォプルは雷属性の攻撃には極端に弱い。水しか出せないミズカには任せていられない。

 だが、私がミズカの前に出ようとしたとき、彼女は和傘で私の行く手を遮る。


「どういうつもりだ?」

「…………」


 ミズカは和傘を手に、再びウォズプルに向かっていく。また同じことを繰り返す気か? 私がそう思ったとき、信じられないことが起きた。ミズカの和傘が電撃を帯び、光り始めた。

 彼女はウォズプルに向かって飛び上がり、空中で和傘を大きく振る。その途端、すさまじい電撃が降り注ぐ。電撃を受けたゼリーの魔物は断末魔を上げながら消えていく。辺りに蒸気が漂う。


「ミ、ミズカっ!?」

「バカな、水のイノベーション・クローンが電撃魔法だと!?」


 ミズカは和傘を振り次々とウォズプルを消していく。あっという間だった。私たちはその姿を呆然と見ていた。

 イノベーション・クローンは本来1つの属性しか与えられていない。ボルカなら雷、ホノカは炎、ミズカは水。2つの属性魔法を得られるなんて、そんなことあり得るのか……?


「コミット、これはどういうことだ?」

[……ミズカ将軍は水のイノベーション・クローンです。他属性魔法は基本的に使えません]

「だが、今まさに雷魔法を――」

[ええ、自己精製できるのは水魔法だけです。……ネタバレして申し訳ないんですけど、ミズカ将軍の和傘には魔法発生装置が内蔵されています。あの電撃は人工魔法によるものです]

「魔法発生装置……!」


 コミットの説明で私はようやく納得できた。ミズカは雷魔法を自己精製したワケじゃない。あの青い和傘に内蔵された機械を使って攻撃した。なるほどな。確かにイノベーション・クローンだろうと機械を使って他属性魔法を使うことは可能だ。


「一言」


 ウォズプルを消し去ったミズカが私たちの前にやってくる。


「俺は他のイノベーション・クローンのように、自分の属性が最も優れてるとは考えていない。だから、雷も炎も風も使う。例え機械に頼ってでも、だ」


 そう言うと、ミズカは和傘を雨避けにして歩き出す。私たちも後に続く。

 空は昼間だというのに薄暗い。大量の雨水を含んだ分厚い雲が立ち込めている。光は差しそうにもない。


「……俺だ。もうすぐ着く。俺1人だけで十分だが、他2人もいる。……ああ、よろしく」


 ……今回のミッションも前途多難のようだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ