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「そうです。ユク王。ユク王族もかつては純魔素保持者たちでしたが……。きっと血なのでしょうね。

 ギルバード王子のように、おっと除席されたので王子ではありませんね。ギルバード卿のように血や義務を忘れ、他の血を入れた祖先の因果ですね」


「ああ、当時、庶民と徹底的に壁をつくって貴族たちは暮らしていた。だが、そんなことはできないことだ。

 成人する前の王子や聖魔素保持者の多い上級貴族たちが、庶民や下級貴族の娘たちに惚れて結婚したことで、いっきに聖魔素保持者たちが減ってしまった。

 なんでも先祖の記録によれば、『国に縛られるなんて、かわいそう』とか、『あんな感情の乏しい親の決めた婚約者たちと結婚しても幸せになれないわ』と か、『あたしはあなたが一生懸命がんばっているのを知っているの。もう一人で苦しまないで。愛があれば親なんて、貴族のしきたりなんて、なんでも乗り越えられるわ』と言う台詞を言われたのが新鮮だったという」


 ヒルの嫌味に同意して、王さまが言った。

 それはメグとギルバードの台詞なの……?


「重圧に押されて貴族の義務を軽んじた浅はかな者たちには、そんな娘たちの自由論が新鮮で、本当に自分のことをあんじていると錯覚をした のだろう。

 親の反対を押し切って結婚する者たちがあとを絶たなかった。貴族として生きてきて、庶民の生活に今さら馴染める者など少ない 。大抵が、お互いの価値観の違いに戸惑い夫婦仲が悪くなったらしい。

 所詮、違う環境で生活をするのはむずかしい」


 王さまのため息がますます増える。

 

「王族で下級貴族と結婚した王さまの時代に直系王族が消えた。聖魔素保持者の跡取りが誰も生まれなかったからだ。

 たいがい貴族の教育を受けていない者たちは、側室に難色をあらわす。『あたしのことを唯一好きって言ったじゃない!

 あたしも好きで王妃になったんじゃないのに、毎日やりたくない公務をさせられて、あれはダメこれはダメって。こんなにあたしは頑張っているのに! もしあなたが側室をとったりしたら、あなたを殺してあたしも死にます!』などなど言うそうじゃあ」


 顔をひきつかせながら周りの人たちが、なぜかそこで全員いっせいにメグを見た……。


「我が王座も、所詮直系ではない。跡継ぎは傍系から入れた……。ユク国にはもう純聖魔素保持者はおらぬ。他国の消え去った国々も、また国が争いで分裂したりした国々も聖魔素保持者を重視しなかった結果だろう。


  周りの国々は新規国家ばかりだ

 ユク国もその道をたどる運命だったが、貴族と庶民を同じ場所で教育する環境をつくった。少なくとも、庶民の中に貴族が国を支えておると言う意識を持って、無闇に接することをしない。


 若い貴族令息令嬢も、庶民の考え方を知り、新鮮といって恋する者も、いなくなったと思っていたが。

 ましてや、貴族に対して無謀に対等に接しようとする者はいなかった。


 ……まあ、例外がいたようだが……」



 王さまがチラリとメグを見た。


「なっ、なにを馬鹿げたことをおっしゃるのですか。

 父上! メグは立派な令嬢です。近いうちに子爵への養女になります。これで身分の障害がなくなります。なによりメグには私の子供がいます。彼女は聖魔素を持っております。だから、安心してください。私は立派な王さまになります。

 ユリアはリューク叔父上と男女の仲であるようなので、二人が結婚して私を支えればすべて落ち着くではありませんか!」


「な、なにを言っているのですか!? わたくしは結婚前に誰かと同衾などしません!」


 さすがに切れた。俺さまでわがままな奴に、自分がメグとエッチしているからと、私とリュートまで一緒にしないでほしい。

 リュークとの関係をそんな風に見て欲しくない。

 第一誰があんたとメグの支援をするって? 私怨だったらしますけれど。こんなにコケにされた私が、ギルバードとメグを支えるなどと、どうしたらそんな考え方ができるのか。


「え~。男と駆け落ちしてリュークさまとも寝たんでしょう? 貞操がないわねえ~」


 メグがクネクネ体を動かしている。黄色いオフショルダー・ネックのドレスを着ているメグは、まな板胸だから残念なコーディネートだ。


「あんただけには言われたくないわ!! あんたなんて、あばずれじゃない!」


 ずっと王さまや王太后さまの前だと我慢してきたけれど、リュートとそんな関係に思われて、さらに私が軽い女と彼に思われたくなかった。


「キャー。怖い。またあたしをいじめるの……。クリス、トーマスこわい。くっすん」


 と、今度はクリスに抱きついた。ギルバードが王子じゃなくなるかもしれないからクリスに相手を変更したの?


「姉上。自分があばずれだから他の者もそうであるとは限らない。メグは違う。メグはギルバード王子の子どもがお腹にいるのだ。罵倒する などもってのほかだ! 

 姉上など、さっさとレディス公爵家から出て行ってください。父さまも、姉上と一緒に隠居してください。

 公爵家の恥です!

 これ以上、姉上がこの国にいると、生まれてくる大事な王族に悪影響です」


 以前から父さまとクリスには会話がなかった。でも、ここまでクリスが父さまを毛嫌いしているとは思っていなかった。

  外で生んだ子どもだったから、公爵家に迎え入れられるまで父さまの私生児だったことを恨んでいたのだろうか。


「クリス」


「レディス、わしが説明しよう」


 王さまが父さまを遮った。



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