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「ギルバード。及びクリスとメグ。メグは庶民出身で、学園に入学できたのは魔力が高かったためだ。聖魔素保持者ではない。ゆえに、それはギルバードの子どもではない」


「う、うそよ! ギルバード、王さまはあたしのことが嫌いだから嘘を言っているのよ!」


 王さまを嘘つき呼ばわりしているメグを見る周りの人たちがこわい。


「メグ、どういうことだ!? 私一人と愛し合っていると言ったではないか!? 相手は誰だ!? クリスかトーマスか? まさかザックか? いや、彼らは聖魔素を持っている……じゅあ、相手は私の知らない奴なのか?」


「はっ、誰があばずれを抱くかよ」


 ザックのでかい声が響く。


「ザック。たしか騎士団長の長子だな」


「はい。陛下。この場で図々しい申し出と承知しておりますが、お願いがあります。

 ユリアさまの意志に反した婚約はなさらないでください。ユリアさまは王太子の婚約者として十分にこの国の義務は果たされました。彼女には幸せになる義務があります。

 わかっております。私が一番彼女を傷つけてしまったことを。

 今後は陛下をはじめ本当に大切な人を守る騎士になります」


 ザックは騎士の礼をとった。


「ふむ。我が国の若者たちも捨てたもんじゃないかもな。

 彼には聖魔素がある」


「その女の相手は、クリスだ」


 父さまが言った。


「なっ、なにをおっしゃっておるのですか!」


 顔を真っ赤にして今にも父さまになぐりかかろうとしたクリスをザックがとめる。


「クリスは私の本当の息子じゃない。クリスには聖魔素がない」


「う、うそだ! 私の魔力は学園でも一番強い!」


 確かにクリスの魔力は膨大で、彼が学園で一目おかれた理由だ。


「魔力と聖魔素は違う。私もお前のことを自分の息子と信じておったが、お前の母親と結婚した時に彼女が聖魔素を持っていないことを知った。

 男爵家でもたまに聖魔素保持者がいる。彼女は学園で魔力が多い方だから、てっきり聖魔素があるものとばかり思っておった。


 聖魔素保持者のことは家族か伴侶しか知ることができない。成人式でも何人かは聖魔素保持者じゃない者たちもいるので、たしかなことは分からない。

 彼女との結婚を先王が許可しなかった理由を、再婚した時に知ったよ。国はすべて知っていたようだが……。

 ユリアが生まれたから、王家は再婚について意見をしなかった」


 私とクリスは、血のつながった姉弟じゃないの? 

 ザックはクリスの拘束を解いた。クリス自身認めたくなさそうだけれど、義母の身持ちの悪さを彼が一番知っている。


「で、では私の父親は誰とおっしゃるのですか?」


「知らん。母親に聞いてみればいいだろう。ただその女メグと言ったか……そいつと、我が家で性行為をしていたことは執事からの報告でわかっている。

 なんなら日時を記した報告書を提出しようか?


 それともうお前を成人まで育てたんだから、家から出て自立しろ。お前の母親とも離婚する。理由は分かっているだろう。

 人が仕事で外国にいることいいことに、めったやたらに若い男と盛りついて。

 たしかに私があの尻軽女と再婚して一度も抱かなかったのがいけないが。

 再婚の話をあいつが持ってきた時に、私は彼女に魅力を感じなかったし愛していないから抱くことがないと伝えた。


 すると 『わたくしを女としてみなくてもかまいません。ただ幼いユリアちゃんにはちゃんとした母親が必要です。クリスはどうなるのですか? 公爵家の跡取りはあなたの血を受け継いだクリスがなるべきです』と、ユリアのよい母親になると言ったから結婚したのになあ」


 父さまは外交で家にいることがほとんどなかった。執事は先代から仕えている者で、私が目を覚ました時、すぐに馬車に乗って旅行をすることに最後まで反対した。


「あいつには慰謝料として存分な財産わけをした。贅沢をしなければ、一生生活できる分の財産分けをする予定だったが、調べによると、この一年クリスがユリアの私財の宝石をその庶民女に貢いでいたことが分かった。

 ユリアの所持している宝石は、シス国宝もあった」


 母さまの形見の宝石がなくなっていると? まさか……。せめて一つくらい残っていて。

 


「メグ、その宝石を返してくれ!」


「いやよ! もうあたし持っていないわよ! お金にして、いままでの借金を返済したんだから!

 ギルに会うまでかかった衣装代の借金がたくさんあったの。

 あたしはギルに会うまでお下がりの服ばかりで。だから学園でみんなに愛されるために綺麗な服をたくさん買ったの。


 クリスだって、あたしのことをかわいくて綺麗で、服のセンスがとてもいいって言ったじゃない。

 ユリアさまはたくさんの宝石を持っているんだから、クリスがあたしに少しだけ譲ったて別にいいじゃない。なんてケチなの。


あたしの方が服装のセンスがよくて綺麗だから羨ましいからって、クリスからもらったやっぱり宝石を返して欲しいなんて! なんてことを言うの!

 みんな変! イジワル!」


「違うんだ。メグ。メグは綺麗だ。ただシス国宝だけを返してもらいたいんだ。シス国宝盗難……」


 クリスが絶望的な顔をした。メグが孤児院出身で見栄をはって借金をしたことは気の毒に思う。でも国宝よりさらに高額の借金をしていたのだろうか。

 換金した時に騙されたのだろうか。



「私も一応一時でもひきとった息子だから、シス国へクリスを渡すつもりはない。だがしかしお前に用意していた財産は宝石代として返してもらう。

 残りの財産は、お前の母親が男たちに貢いだ借金返済とする。これがかなり高額だから離婚後も私が返済しなければいけない。

 わかったか。今後お前がレディス公爵家との関わりを口にすれば、すべての肩代わりをした借金を支払ってもらう」


「ちょっと! どういうことなのよ! クリスが公爵じゃなくなるの!? じゃあ、あたしの子はどうなるの?」


「め、メグ! クリスと関係を持ったことを白状するのか!?」


 ギルバードが玉座から降りてきてメグの肩をつかんで揺らす。


「ちょ、っと。ギル。ギルだって知っているでしょう? あたしが寂しがりだって。みんなに愛されていないと不安になって涙が出るって。

 ギルだって、それでいいよって言ったじゃない!

 親に捨てられて孤児院で育ったから、親にもらえなかった愛情をたくさんの人からもらえばいいって言ったじゃない!」


「いや、たしかにそう言ったが、性行為までは……」


「いや。その女の赤ちゃんはトーマス殿の子供かもしれないなあ。宰相、孫ができてよかったですね。諜報員の報告によると、トーマス殿もその女と情交していたようだ」


 父さまが隣にいる宰相に笑いかけた。


「トーマスともだと!?」


 ギルバードは衝撃を受けている。



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