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十二話目  神官長ミゲール

12.


「さて、どこから案内するべきか……どこにあるか知りたい所や行きたい所はあるか?」


 ルイスさんからの質問の答えは簡単だ。


「そうですね。先ずは教会か神殿ですね」


 どこかのクランに入る予定でもない限り個人空間に戻る為に必要な石棺のある教会か神殿の場所は必須だろう。


「そうか、じゃあ、先ずは神殿に案内する」


 ルイスさんに案内されて神殿へと向かう。

 門をくぐった先がメインストリート、大通りだっけ? それとも目抜き通りって言うんだっけ? とにかく、それだと思う。

 露店や商店があって、それなりに賑わっていて真っ直ぐ街の内壁? 富裕層と一般層を分ける街の中にある壁の門まで続いている。

 賑わう人々の種族は雑多で、いわゆる人間だけじゃなく、俺と同じエルフっぽい人や獣人、ドワーフらしき人も居て少しだけテンションが上がってくる。

 ちなみに街の中には教会や神殿がいくつかあるらしいんだけど、ルイスさんが顔が利くと言う神殿に行く事になった。

 その神殿は内壁の門の近くに有るらしい。分かり易くていいね。


「しかし、誕生世界に来て早々に詐欺被害に遭いそうになるなんて運が悪いな」

「そうかもしれませんね……」


 テンションが上がって来てたのに挫かれてしまった。

 まあ仕方ない。


「数年前までは案内者が多かったから、ああいう奴らは出なかったんだけどな」

「案内者?」

「ああ、そっちの言葉だとナビゲーターとか言うんだっけか? 言葉通り案内する者、訪問者を案内する訪問者だな」

「ナビゲーター、案内する者ですか……みんな訪問者なんですか?」

「訪問者を案内する案内者になれるのは訪問者だけだそうだ。まあ、似たような仕事をしてる奴もいるけどな。とにかく、初めてこの地を訪れた人に色々と教えて導いていくんだ。街に知り合いが居なくても、案内者であれば親切に色々と案内してくれる。ただ周期みたいのがあってな。多く居る時とそうでない時がある」

「今は居ない時なんですね」

「ああ、だからああいう詐欺グループが出る。まずは橋で銀貨を何も考えずに払うような無警戒さを確認したら親切なふりをして街中で大して価値のないものを法外な値段で買わせたりするんだよ。搾るだけ搾ったらとんずらさ」

「そうですか」

「訪問者ってのは疑うって事を知らない奴が多いのか?」

「どうですかね。この世界に来た事で舞い上がって思考回路が鈍くなっているのかもしれません」

「困った話だな」


 ルイスさんはそう言うと苦笑いした。

 実際に騙されそうになった俺も苦笑いする。


「でも、お蔭でルイスさんと知り合う事が出来ました。運は悪くないかもしれません」

「ははっ、なかなか良い事を言うじゃないか」


 ルイスさんも俺も苦笑いから普通の笑顔に変わった。


「ここだ」


 暫く歩きながら会話をしていたら目的地に到着した。

 神殿と言うからパルテノン神殿みたいなのを想像してたけど敷地は広いけど建物自体は少し大きいだけの洋館だった。

 ズカズカと敷地内に入っていくルイスさんを慌てて追い掛ける。

 洋館の重厚なドアを開けると正面の奥にある神像が目立つ。

 神像の前に演説台、そこから入り口に向かって赤いカーペットが敷かれている。

 赤いカーペットの両脇には木製の長椅子がいくつか並んでいて、神殿と言うよりは教会のようだ。人は誰も居ないように見える。


「おい、ミゲールいるか?」


 ルイスさんはミゲールと言う人を呼んでいるようだけど……

 左右の奥にドアがあるから、そこに向けて呼びかけているのかな?


「あの男には思慮というものが少し足りない。そう思わないかい? 赤髪の純血エルフ君」


 後ろから声を掛けられ振り返ると、そこには金髪碧眼で長身痩躯の美男子純血エルフが居た。

 美男子だから純血エルフ、なんて単純な理論ではなくて、更に単純なんだけど俺の純血エルフとしての血が彼を純血エルフだと直感で教えてくれる。

 街中ではなんとなくな感じだったけど、今は確信が持てるくらいの直感だ。

 種族特性ってやつなのかもしれない。


「ミゲール・セルベトという。ミシェル・セルヴェと呼ぶ者もいるが、そう呼ぶ大抵の者は私を嫌っている。だからそう呼ばないでくれると嬉しいね。気軽にミゲールと呼んでくれ給え」


 な、なんかこの人、面倒くさい。

 台詞の最後にいちいちポーズ決めてくるのも強烈だ。

 呼んでくれ給えの給えの部分で片手でこっちを指差してもう片方ではフレミング左手の法則みたいな指の形をさせながら顔の下半分を隠してる。

 おまけにやや仰け反っている感じは相当うざい。


「訪問者のアルムと言います。宜しくお願いします。ミゲールさん」

「アルム君、君は純血エルフだよね? なんで赤髪なんだい? もしかして加護かい?」

「はい、火精霊の加」

「素晴らしい! ルイス聞いたかい?」


 ミゲールさんは食い気味に言った。

 しかしミゲールさんの言い分から考えるに純血のエルフは髪が赤くないんだね。

 みんなミゲールさんみたいに金髪なのかな? ちなみにルイスさんはいつの間にか近くに居た。

 この街の人達はナチュラルに気配を消して人の背後に来るよね。


「ああ、聞いたよ。アルムは混血じゃないんだな」

「純血のエルフ同士はそれを感じる事が出来るからね。間違いなくアルム君は純血エルフさ。しかも火精霊の加護持ちだ」

「貴重なのか?」

「この神殿に居る人々や私にとっては特にね」

「どういう事だ?」

「ルイス、ここが何の神を祀っていると思っているんだい? 知の神だよ? 知の神が司る者はなんだい?」

「なるほど、火か」

「そうさ、アルム君はここに来るべくして来たようなものだね」

「いや、あの、全部ルイスさんのお蔭なんです」

「ルイスも偶には賢いようだね」

「アルムが混血エルフだと思ったんでな。お前に紹介するのが良いだろうと思っただけだ」

「繰り返すけどアルム君は純血だよ」

「ああ、わかっている」

「そのアルム君がどのように加護を貰ったか気になるんだけどね……」

「アルムは訪問者だからな」

「訪問者だと何か問題が有るんですか?」

「訪問者には背景が無い」


 ルイスさんとミゲールさんが同時に言った。

 そして少しばつの悪そうな顔をしている。

 うん、言われてみれば確かに訪問者には背景が無いよな。

 どこで生まれ、どう育ったか。 母親は? 父親は?

 その全てに答えられるけど、それは地球人の丹沢稔としての自分の事だけだ。

 誕生世界人のアルムとしては、何も答えられない。

 まあ、どうやって火精霊の加護を貰ったかに関して言えば簡単に答えられる。

 でもそれは言っていいものなのかわからない。そこが問題だ。


「ルイスさんもミゲールさんも訪問者の事に詳しいんですね」

「ミゲールと俺は五年ほど訪問者と冒険者のパーティーを組んでいたんだ。その時に色々とな」

「だから俺みたいな訪問者に対して親切にしてくれるんですか?」

「まあ、そういうところもあるかもしれないな。とにかく神殿に関して言えば、訪問者、特にアルムの様なエルフにとってはここが一番良いと思うぞ。ミゲールなら魔法も教えてくれるし、それに神官長様だからな」

「ミゲールさんてそんなに偉い方だったんですね。失礼しました」

「失礼な事なんて何もないさ。気にしないでくれ。エルフは同胞だし、ましてやアルム君は火精霊の加護持ちだ。いつでも歓迎するよ。さて、この神殿に関して何か質問はあるかい?」

「ありがとうございます。ええと石棺の場所って教えて貰って良いですか? それと石棺は使う時に許可とか必要ですか?」

「許可に関しては不要さ。自由に使ってくれ給え。場所は右奥のドアを開ければ地下への階段があるからそこを下れば直ぐに分かるはずさ」

「分かりました。ありがとうございます。じゃあ後ほどまた伺いますね」

「では私は失礼するよ。二人ともまた会おう」


 挨拶を済ませるとミゲールさんは左奥の扉を開け入っていった。

 ルイスさんと俺は神殿の敷地から出る事にする。


「さて、じゃあそろそろ次の場所に行くか」

「次の場所ですか?」

「そろそろ腹も減ったかと思ってな。良い店に案内してやろう」

「はい。期待してますね」

「おう、任せとけ」


 ルイスさんと宿屋へと向かう。

 道中、話をしたのだけれど向かう先はルイスさんのお姉さんの店で、宿屋がメインだけど食事も出していると言っていた。

 ルイスさんが言うには、お姉さんの宿は礼儀に関して厳しいけど食事は美味いし宿のレベルの割には宿代が安いから、かなりオススメらしい。

 礼儀に関して厳しいって所に少しだけ不安を覚えたけど、ルイスさんのオススメだからね。

 神殿は素晴らしい所を紹介して貰った訳だし。

 その神殿からメインストリートを街の入り口の方に暫く歩くとメインストリートと同じ位の道幅の通りとクロスする。

 その通りに入って少し歩くとルイスさんのお姉さんが営む宿屋があるそうだ。


「もう直ぐ着くぞ」

「なんだか良い匂いが漂って来てますね」

「そうだな」

「お腹がかなり減ってきましたよ」

「あはは、もう着くからな。ほらあそこが」


 バーンッ!!

 ルイスさんが指差した方を見ると両開きの扉が開き人が飛んで来た。

 飛んで来た人は地面に落ちても勢いが止まらずにゴロゴロと転がり反対側の店の壁に当たるとようやく止まった。

 え? 今から行く所はとても危険な場所なのでは?

 不安しかないんですけど?


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