第九十六話 バルモス攻略の糸口(二)
イレーネに乗り込むと、アリスがカレンにお説教を始めました。
「もう、カレン様ったら!」
「虫が怖かったら、下に降りずにイレーネちゃんに乗っていたら良かったのに!」
「いやだって、オレだけ何もしないのは悪いだろ?」
「いいえ、プラズマバーストをぶっ放されるよりましですから!」
「おい、オレが見境もなく、そんな事を・・・」
「ギルドの執務室を全壊させたのは、どなたでしたっけ?」
「あっ!そ、それは・・・」
「とにかく、巨大バクダンオオアリの回収は、私と大魔女さんでやりますから、カレン様は下に降りないで下さいね!」
「う、うん!わかったよ・・・」
「えっと、あと言いたかったのは・・・」
「!!!」
「と、ところで魔女ママ、グリムホルンを捕まえてどうするの?」
アリスの小言がまだ続きそうだったので、カレンは慌てて話をそらしました。
「ひっ、ひっ、ひっ・・・」
「グリムホルンは、狩の天才でね!」
「恐ろしいくらいに、聴覚が優れているんだよ」
「耳がいいの?」
「そうだよ!」
「暗闇の中で3キロ先にいる獲物の音を、瞬時に聞き分ける能力を持っているそうさね」
「すご~い!」
「つまり壁の中を動き回る、巨大バクダンオオアリの居場所を知るには、グリムホルンが必要なのさ」
「そして爆発音のした場所を、瞬時に特定出来れば・・・」
「そっか!バルモスの隠れている場所が分かるんだね!」
「「やったー!」」
カレンとアリスは、ハイタッチをして喜んでいますが、ことはそう簡単には運ばないようです。
「ところがね、そのグリムホルンを手なずけるのが、この作戦の一番の難問なんだよ」
「「えっ!?」」
「つまり、手ごわいって事さね!」
「そこで質問だけど」
「カレン嬢は、相手を従えるのに、どんな手を使う?」
「いうことを聞くまでぶん殴る!」
「えっ、はやっ!」
アリスはカレンの返答の速さに驚きましたが、モルティナは何故か頭を抱え込んでいます。
(し、しまった!聞く相手を間違えたさね・・・)
「あははは・・・」
「そ、そうだね、それが一番手っ取り早いかもね?」
「でもそれは、相手が人間だったら・・・の話だけどね!」
「アリス嬢なら、どうするさね?」
今度はアリスに、同じ質問を投げかけました。
「う~ん、私ならアメとムチを使うかな?」
「そう!いい事を言うね~!大正解だよ!」
「グリムホルンは闇の賢者と言われるほど、頭が良くてプライドの高い鳥さね」
「そいつを利用するには、アメとムチを使い分ける必要があるのさ!」
「えへへっ!褒められちゃった!」
「あ~っ、良かったね~」
カレンは自分の意見が通らなかったので、ちょっとだけムスッとしています。
「とにかくグリムホルンを手なずけるのは、一筋縄では行かないからね」
「その前に、カラスの王様コルヴァスを見つけるさね!」
「「はぁ?」」
「魔女ママ、こんどはカラスなの?」
もう訳が分からなくなった二人は、黙ってモルティナの言う通りにする事にしました。
一行がグリーンホロウの町に帰り着いたのは、もう陽が西に沈みかけていた頃です。
屋敷に着いたモルティナは、真っ先にジャックに声を掛けました。
「ジャック、コルヴァスの居所は分ったかい?」
「分かったよ!近いうちに行くから、待っている様に言っておいたよ」
「そうかい、それはご苦労だったね」
「で、あいつは何か言っていたかい?」
「うん、お宝をいっぱい持って来いって!」
「ふん、相変わらず、がめついカラスだね!」
「そう言う訳で、カレン嬢とアリス嬢、今日はもうゆっくり休むさね」
「明日は忙しくなるからね!」
「「は~~~い!」」
返事はしたものの、カラスの事が気になったカレンは、ジャックを呼びました。
「ジャック、ちょっと、ちょっと!」
「はえ?」
「ねえ、コルヴァスって、何者なの?」
「あぁ、あいつはカラスの王様だよ」
「いつも偉そうにしているけど、怒らせちゃダメだよ!」
「なんで?」
「あいつを怒らせたら、森中のカラスが襲って来るぜ!」
「それに今度の作戦は、あのカラスの協力が必要だって、モルティナ様は言っていたぞ」
「ふ~~ん・・・そっか!」
「分かった、ありがとね!」
そう言うと、カレンは自分の天幕へ戻って行きました。
「大丈夫かな?あの娘、人の言う事なんか、まったく聞かないタイプだよな・・・」
ジャックは、心配そうにカレンの後姿を見ています。
明けて11月22日。
カレン達はジャックの案内で、森の中へ入って行きました。
「カレン嬢、コルヴァスは生意気なヤツだけど、怒っちゃダメだよ」
「グリムホルンを手なずけるには、あいつの協力が必要なんだからね」
「うん、オレは温厚な性格だから、大丈夫だよ」
(((いや、どの口が言っているの?)))
ここにいる全員が、心配そうにカレンを見ています。
「それから、コルヴァスとの交渉はあたしがやるからね」
「他の人は口出し無用だからね」
「「「は~い!」」」
(あれ?今日のカレン嬢は、何故か素直だね?)
その態度に、余計に不安を募らせたモルティナは、もう一度カレンに念を押します。
「カレン嬢も、その・・・」
「心配しなくてもいいよ、魔女ママ!」
「そ、そうかい?」
「じゃぁ、頼んだよ!」
(何だろう?ニコニコしているカレン嬢が、いつになく不気味なんですけど・・・)
でも、さすがにこれ以上何か言ったら、逆にカレンを怒らせそうなので、モルティナは諦めてコルヴァスとの交渉に集中する事にしました。




