第六十六話 次の目標は
ロックの家に着いた一行をカミラさんが出迎えてくれましたが、カレンを見たカミラさんが、大変な事になってしまいました。
「まぁ!」
「まぁ、まぁ、まぁ、まぁ~~~っ!!」
「どうしましょう!!」
「ちょっと、ちょっとロック!」
「あの美しい女性は誰なのよ!?」
「あんな美しい女性が来るなんて、わたしは聞いてないわよ!」
「あっ、カレンさんの事か?」
「いや、実はオレもよく知らなくて・・・」
「何のんきな事を言っているの!」
「あんた!こんなチャンスは、一生に一度あるかないかだよ!」
「死ぬ気で頑張らなきゃ!!」
「いや、死ぬ気って・・・」
「あの人にちょっかいを出したら、本当に死んじゃうからな!」
「なにバカな事を言っているのよ!」
「母ちゃんがあんたなら、そりゃもう死ぬ気でアタックするわよ!」
「いや、あの親父と結婚した母ちゃんに説得力はねえよ!」
「とにかく、しっかりやりなよ!」
バシッ!バシッ!バシ~ッ!
「いって~~っ!」
カミラさんは今回特に気合が入っているようで、ロックの背中を三回叩いてガッツポーズをとると、おもてなしの準備のため、いそいそと厨房に走って行きました。
そして、その様子をワクワクしながら見ていたオリビアが、お腹を抱えて大笑いしています。
「オリビアって、愛のキューピットじゃなかったっけ?」
彼女の様子を見たカーナが、フレディアに尋ねました。
「そ、そうなんだけど・・・」
「最近のオリビア、ちょっとヘンなのよ~」
フレディアが困った顔で答えました。
「いや~っ!ほんまに、カミラさん最高やわ~」
笑い転げていたオリビアが、涙を拭きながらこちらへやって来ると、これからの事をどうするのか、フレディアに話を持ちかけました。
「それで、カレンさんも帰って来たし、これからどないするん?」
「そうだね!まず、戦力が今までと大きく変わったから、その整理をしたいわ!」
「シルヴィーとシラが、神様から加護をもらったでしょ?」
「カナちゃん、シルヴィーの様子はどう?加護を使いこなせるようになったの?」
「う~~ん・・・。まだ少し時間がかかるかなぁ・・・」
「わかった!」
「シラはどうなの?」
「私は炎の神イグナート様の加護をいただいて、炎の力が桁違いに強くなったわ!」
「それに新しい魔法も二つ覚えたの!」
そう言うと、いま使える魔法の説明をしてくれました。
<今まで使っていた魔法の威力が倍増>
・ファイア・・・・・・敵単体に炎属性の攻撃魔法
・フレイム・・・・・・敵グループに炎属性の攻撃魔法
<炎の神イグナートの加護で得た魔法>
・ヘルフレイム・・・・広範囲の敵に炎属性の攻撃魔法
・フレアバースト・・・敵単体に壊滅的な炎属性の攻撃を与える必殺技
「でも、まだ実戦で使っていないから、どんな感じになるのか不安なのよ~」
「大丈夫だよ!その魔法、すぐに実戦で使う事になるよ!」
「あと、ルナはセレイヤ様の加護はどうするの?」
「そうねぇ、わたくしは急がないから、まだ後でいいわよ~」
「分かった!」
「じゃぁ後は、土の女神テラシア様の加護をスージーにあげるだけね!」
「それで、これからの予定なんだけどね・・・」
「初めに、バルモスの監獄を襲撃したいと思っているのよ~」
「「「「え~~~っ!襲撃~~~?!!」」」」
フレディアがいきなり過激な事を言うので、事情を知らないメンバー達は驚きましたが、とにかく暴れたくて仕方のないカレンは、大喜びで賛成しました。
「いいね!襲撃!」
「あれっ?でも、セレスフィア様の泉を探すんじゃなかったのか?」
「うん、それも大事だけど、その前にやっておきたい事が出来たのよね・・・」
そう言うとフレディアは、皆にブランシェ村から来たラグナートの話をしました。
その後カーナが、いま天界でプラネットルームの復旧に努めている事を説明しました。
「その長老が持っている『ヘリオスの涙』なんだけどね」
「それがあれば、きっとプラネットルームが完成すると思うのよ・・・」
「プラネットルーム?」
「それって、なに?」
カレンが不思議そうな顔でカーナに尋ねました。
「プラネットルームは、天の守護神アトラー様が作った、太陽を中心とするこの世界の縮図なの」
「それがザキュエルの野望を阻止する唯一の手掛かりになるって、ルミナテス様が・・・」
そこまでカーナが話すと、そのあとオリビアが腹立たしそうに言いました。
「そのプラネットルームが、あいつに破壊されてしもてん!」
「ザキュエルのヤツ、ほんまにずる賢い天使やで!」
「天地創造の杖を盗んで、その対策の手掛かりも無くしてしまうんやから!」
プンプンと怒るオリビアを見て、シルヴィーが尋ねました。
「ザキュエルって、どうしてそんなに詳しいのですか?」
「その・・・天地創造の杖の事とか、プラネットルームが自分の野望の邪魔になる事とか・・・」
「あぁ、それな・・・」
「あいつ、アトラー様のお付きの天使と言うか、弟子やったんよ」
「そのアトラー様が、悪魔にそそのかされた人間に・・・」
「・・・・・・・・・」
「まっ、とにかく天界は今、プラネットルームの復旧が一番の課題なんよ!」
天界の事情を説明するのも、あまりよくないと思ったオリビアは言葉を濁しました。
そして、そのあとをカーナが引き継ぎました。
「いま天界ではルミナテス様が、ザキュエルに破壊されたプラネットルームの復旧に努めているのだけど・・・」
「何でもプラネットルームが破壊したのは、中心で輝いていた太陽をザキュエルが壊したからなんだって!」
「太陽が破壊された衝撃で、他の惑星たちは吹き飛んでしまったけど、惑星自体に損傷が無いので、太陽を復活させれば元通りに復旧出来るそうなの」
「それでルミナテス様は、いま必死になって太陽を作ろうとしているのだけれど、どうしてもうまくいかなくて・・・」
「そうやねん!うちもルミナテス様が顔を煤だらけにして頑張っているのを知ってるし!」
「何とか力になりたいと思ってるねん!」
「わかった!」
「あ、いや・・・。そのプラネットルームの事はよく分かんないけど、ヘリオスの涙があれば、ザキュエルに対抗できるんだろ?」
「だったら、やるしかないじゃん!」
カレンは腕を組んで納得しています。
カレンに続いて声をあげたのはシルヴィーです。
「私もフレディア様の考えに賛成します!」
「善良な国の民が、オッサムの悪政で苦しめられている事に、我慢できませんから!」
そして次に声をあげたのはポンポンです。
「うむ、わしも困っておる人を助けるのは賛成じゃぞ!」
「困っている人を助けると、良い事があるからのぉ!」
ポンポンはそう言うと、魔法のアイテムボックスから羊の毛で編んだ帽子とマフラーを取り出して、みんなに見せびらかしています。
(いや、その考え方は間違っているんじゃねえのか?)
(フレディア、ちゃんと教育しろよな!)
心の中でそう呟きながら、一応ロックも賛成してくれました。
「やってもいいけど、これって簡単にはいかねえよな?」
「キャハハ!」
「もちろん、今回はこの町の皆にも手伝ってもらうよ!」
「まぁ、それは大変ですわ!大ごとになりますわね!」
「でも、それなら、スージーもお呼びしないといけませんわねぇ~」
「だよな!頑丈な岩で出来た監獄をぶっ壊すんだからよ!」
ルナの意見にカレンも同意しました。
「じゃぁ、どうせ加護の事もあるし、オレがスージーを連れてくるよ!」
「それまでに、作戦とか考えといてくれよな!」
「あっ!それやったら、うちも一緒にいくわ!」
「すぐにスージーに加護を授けられるしな!」
「キャハハ!ラジャー!」
事情が分かったメンバー達は、フレディアの意見に賛成してくれました。
そしてカレンとオリビアは、イレーネに乗ってスージーを迎えに行きました。
こうしてバルモスの監獄を襲撃する事が決定し、町の皆を巻き込んだ大掛かりな作戦の準備が進められる事となったのです。




