第百三十八話 セレスフィア様の神殿(三)
リヴァーヘイムの町を出て2時間ほど経った頃、先頭の幌馬車が急に止まりました。
それと同時に傭兵のリーダーのトリスタンが、スターバーストの所へ慌ててやって来ました。
「リオンさん!魔物が出ました!」
「ちょっと数が多いので、手伝って下さい!」
声を掛けられたリオンは、ニヤッと笑って返事をします。
「おぉ!俺たちに任せろ!!」
「キミたちは手を出すなよ!!」
トリスタンにそう言うと、すぐに仲間の方を見て嬉しそうに言いました。
「やったぜ!ロック!」
「さぁ、キミの出番だぜ!」
リオンのご指名に、シラとスージーも大喜びです。
「わぁ~楽しみだわ!」
「強い魔物だといいわね、ロック!」
「ロック、がんばれ~!!」
パシッ!
シラが大喜びで応援し、スージーがロックの背中を叩いて気合を入れます。
(おい!そんな変な応援はやめろ!)
(強い魔物だといいって、どういう意味だよ!)
ポンポンも面白そうだからと、リーファとジャックを妖精の里から召喚していますし、ズッコケ三人組も後ろでワイワイ騒いで、まるでお祭りのような騒ぎになっています。
その様子を見たトリスタンは、驚いて口をあんぐりと開けたまま突っ立っていましたが、すぐ我に返ると、慌てて先頭の幌馬車へ駆けて行きました。
魔物の数は全部で18匹います。
凶暴な狼の魔物ガルドウルフが、群れで先頭の幌馬車を取り囲んでいました。
ガルドウルフは単体ではⅮランクの魔物ですが、とても賢く、群れで行動するとその脅威は一気にBランクにまで上昇する厄介な魔物です。
トリスタンが剣と盾を、バレストが槍を構えてガルドウルフと対峙し、アーチャーのダリオスが馬車の上から弓矢を構えています。
騒ぎを聞きつけたカイエルも、剣を片手に慌てて飛び出して来ました。
「うわっ!いきなりこれほどの数の魔物が!?」
「よいかお前たち!命に代えてもお客様を守るのだぞ!!」
吠えるカイエルに、トリスタンがサラリと言いました。
「いや、それが隊長」
「リオンさんに、俺たちは手を出すなって言われてんすよ」
「はぁ?」
「それに、これだけの数じゃ、俺たちじゃ手も足も出ないっすよ!」
槍を構えたバレストも、トリスタンの意見に賛成しています。
「じゃぁ、どうすると?」
悩んでいるカイエルに、後ろから来たルナが楽しそうに声を掛けました。
「うふふっ・・・」
「どうやらロックが、皆さんに実力をお披露目するそうですわよ~」
「あっ、そう言えば!」
「あたしもまだ、ロックのゴーレムを使った戦闘は見た事がなかったのよね!」
カーナもウキウキしながら、ロックが戦うのを楽しみにしています。
(な、何なのじゃ、この御方たちは?)
(これだけの魔物の数に怯えないどころか、メッチャ楽しそうにしておるぞ!?)
そこへみんなの期待を一身に集めたロックが、トボトボとやって来ました。
(はぁ~・・・なんでこうなるんだよ?)
ため息を付くロックですが、さすがにこの状況では本気を出さない訳にはいきません。
それに手加減が出来るほど、ロックはまだ自分の実力を把握出来ていなかったのです。
パシッ!パシッ!
「よし!やるぞ!!」
ロックは自分の顔を叩いて気合を入れると、すぐにゴーレムの生成を始めます。
「出てこい!お前たち!!」
ゴ・ゴ・ゴ・ゴ・ゴ・・・・・・
そこらじゅうの岩や石がゴロゴロと集まり、次々と巨大なゴーレムの形を作って行きます。
以前は2メートルのゴーレムを2体作っていましたが、バルモス監獄の戦いでみじめな思いをしたロックは、さらに努力を重ねていました。
「「グオ~~~~~~~ッ!!!」」
あっと言う間に、3メートルを超える戦士型のゴーレムと、騎士型のゴーレムの2体を作ると、戦士型のゴーレムを仲間の防衛に当て、騎士型のゴーレムを使って巨大な剣で魔物を次々と薙ぎ払って行きます。
「「「「うっわ~~~!カッケ~~!!」」」」
ズッコケ三人組は、キラキラと目を輝かせて見ています。
「うわっ、すごい迫力ね!」
「ここまでリアルなゴーレムとは思わなかったわ~!」
シラとスージーも大喜びで見ています。
ところがロックの事をか弱い女性だと思っていた傭兵たちは、そのギャップと彼の作ったゴーレムの凄まじさに驚いて、その場で座り込んでしまいます。
「「「ひえ~~~っ!!!」」」
「あわわわ・・・」
「なんなんだ、これは!?」
「ヤバイ!ヤバすぎる!!」
3メートルを超える剣士型のゴーレムが振るう剣の威力と、守りを固めた戦士型ゴーレムの巨大な盾に弾き飛ばされたガルドウルフは、あっという間に壊滅してしまいました。
辛うじて攻撃を免れた数匹のガルドウルフは、シッポをまいて一目散に逃げてゆきます。
「「「「パチ、パチ、パチ・・・・」」」」
見ていた仲間たちから盛大な拍手が起こり、ロックは照れながらゴーレムを元の岩に戻しました。
「いや~!すごいなロック!」
「まさかあんな巨大なゴーレムを、2体同時に操るなんて!!」
リオンがロックの肩を叩いて褒めました。
ほかの皆もロックの周りに集まって、やいのやいのともてはやしています。
そんな中で、一人だけ浮かない表情で見ている者がいました。
ムスッ!
「ロックだけ目立ってズルいのじゃ!」
「次はわしがカッコいい所を見せるのじゃ!」
自分もみんなからもてはやされたいポンポンは、今度は自分が戦うと鼻息を荒くして言いますが、ジャックとリーファは意外と冷めた目でポンポンを見ています。
「なんか、おとな気ないなコイツ!」
「うん、ポンポンは基本ジコチュウなの!」
「なんか言った?」
「いや、ポンポンがんばれ~!」
「ポンポン、ファイト~!」
「いししし・・・」
「次はわしが目立つ番なのじゃ!」
そんなやる気満々のポンポンに気付いたルナが、ニコニコしながら声をかけました。
「あらっ?ずいぶんと気合が入っていますわね~?」
「むっ、ルナよ、次はわしが戦うのじゃ!」
「ただし!あんな弱い狼の魔物ではダメなのじゃぞ!」
「わしの実力に見合った、もっと大きくて強い魔物でなくてはのお!」
「うふふっ、それは楽しみだわ~」
「じゃあ、魔王の様な強い魔物が出てきたら、ポンポンお願いね!」
「うむ、ルナよ、わしに任せるのじゃ!」
こうして旅の初日は、大いに盛り上がって過ぎて行きました。
それからも頻繁に魔物の襲撃は続きましたが、ポンポンの期待するような大型の魔物は出現しなかったため、なかなか出番が回って来ません。
「む、む、む、むぅ~っ」
「失敗したのじゃ!」
ジタバタ、ジタバタ・・・。
「わしの見せ場が、一つも来ないのじゃ!」
「この際、適当な魔物が相手でも良かったのじゃ!」
グズグズと文句を垂れるポンポンに、ジャックとリーファもあきれています。
「自分から言い出したくせに、文句ばっかり言っているぜ!」
「うん、基本ポンポンはわがままなの!」
そんなポンポンをよそに、頻繁に襲って来る魔物を相手に他のメンバー達は、思い思いの戦術で、自分の技術を磨いてゆきました。
特に炎の使い手のシラは、イグナート様の加護を受けながら、なかなか実戦で使えなかった魔法を、ここでは思う存分に発揮し、その技術を確かなものにしてゆきます。
特に新たに習得した広範囲の攻撃魔法、ヘルフレイムの威力は凄まじく、群れで襲って来る魔物を一網打尽で殲滅してしまいます。
「これなら、アンデッドのモンスターが群れで襲ってきても、余裕で勝てそうね!」
シラの戦いを見ていたスージーが、期待の言葉をかけています。
またロックは、リオンに頼んで剣術の稽古をつけてもらっていました。
アルガの町では、鍛冶屋の元Bランク剣士のバルトに剣技を教わっていましたが、さすがに現役のAランク剣士のリオンとの力の差は歴然で、まるで舞うような華麗な動きで魔物を斬り伏せるリオンの剣技に憧れ、ロックが教えて欲しいと頼み込んだのでした。
リオンもまた、ロックの前向きな姿勢に好感を持ち、「それならば」と、時間を見つけてはお互い訓練に励むようになったのです。
それにロックとしては、今までずっと女性たちに囲まれて旅をしていたので、男の仲間が出来た事が嬉しかったようで、いきいきと訓練に励んでいます。
こうしてポンポン以外の仲間たちは、お互いが切磋琢磨をしながら旅を続けていました。
そして旅を続けて12日目に、ようやくポンポンの出番が訪れる事になります。




