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第一話 フレディアの災難

この作品は「フレディア戦記」のシリーズ第三弾で、前作「-セレノスの杖-」の続編になります。


ですがこのシリーズは、前作を知らない方にも楽しんでもらえるように作っておりますので、気にせずご一読頂きますようお願い致します。


でも、もしこの作品が面白いと感じていただけたなら、是非先に前作を読んで下さると幸いです、それではよろしくお願い致します。



はるか上空の巨大な雲の上に、美しい神殿がたくさん立ち並んでいます。

ここは神様たちの住む天空の神殿です。

そして、その中心にはひときわ大きく立派な神殿が建っていました。


それは神々を束ねる大神ダレス様の住む神殿です。

壮大な建物の外壁には美しく精巧なレリーフが施され、建物の中には輝かしい光を放つ巨大な柱がいくつも立ち並んでいます。

大広間に設置された大きな噴水からは虹色に輝く聖水が吹きあがり、神殿の内側からは天使たちの奏でる美しい音楽が、ここを訪れる者の心を満たしてくれるのでした。


今その神殿から一人の神様が杖を突きながら出てきました。

年老いた神様のようで、門から出ると一度立ち止まり、腰に手を当てて大きく伸びをしています。


「ふあ~~~っ!」

「やれやれ・・・」

「まったく、ダレス様はろくな事を言うてこんのぉ~」


「はて?そうなると、すぐにでもあいつに人の姿に変身できる力を与えてやらねばならんのじゃが・・・」


「う~~~む・・・」


「あいつはお調子者だから、まだこの能力はチト早いと思うのじゃが・・・」


「は~~~っ・・・」


「しかしダレス様からの許可も降りておるし、仕方がないのぉ・・・」


「まっ、あいつの実力は証明済じゃからの!」

「うひゃひゃ!それでは、あいつの喜ぶ顔を見てやるとするかの!」


門の前で立ち止まり、しばらく考え事をしていたこの神様、名前はスクラップと言う技術と創作の神様で、人間の年齢で言うとそうですね・・・。

頭もはげて、仙人のような白い立派なひげを伸ばしているので、80歳を超えたおじいちゃんでしょうか?

でも神様なので、本当の年齢は分かりません。


その技術と創作の神様が、杖を突きながら自宅に向かってトコトコと歩き出しました。

季節は夏が終わり、涼しい風が優しく老人の髭をすり抜けて行きます。


一方その頃技術と創作の神様のお家では、一人の天使が何やら大そう慌てた様子で、オロオロと部屋の中を歩き回っていました。


この天使の名前はフレディア。

人間の世界で言うと、11歳~12歳ぐらいのまだ幼さが残る少女のように見えます。

でも頭にはピカピカ光る天使のリングと、背中には立派な美しい純白の翼があります。


金色の少しカールした美しい長い髪をなびかせ、髪の色と同じ色の大きな瞳をクリクリさせながら、なにやら焦った様子で部屋の中をグルグルと歩き回っていますが・・・。


「お、落ち着くのよ、フレディア!」


「あなたならきっと大丈夫!」

「そう!いままで数々の困難に打ち勝ってきたじゃない!」

「こ、これぐらいの事で落ち込んじゃダメ!」

「きっと何か良い方法があるはずよ!」


そう自分に言い聞かせながらクルクル回っている彼女の足元には、無残にも首チョンパされた女神像の頭が転がっていました。


この女神像は、技術と創作の神様がとっても大切にしている、美の女神ヴィーナスの石像なのでした。


いつもにやけた顔で女神像を眺めているので、不思議に思ったフレディアがその理由を尋ねた事がありました。


「うひゃ、ひゃ、ひゃ、ひゃ・・・」


「フレディアよ!」


「このヴィーナスちゃんの像はのぉ!亡くなったわしの妻によく似ておるのじゃ!」


「そりゃぁ、わしの妻は美しい女神様じゃったのだぞ!」


というのが、理由を尋ねたフレディアへの技術と創作の神様の返答でした。

フレディアの焦る気持ちが痛いほど伝わってきますね。


そもそも事の発端は、フレディアが部屋のお掃除をしている時に飛び込んで来た、一匹のハチが原因でした。


最初は気にも留めなかったのですが、どうやらハチの方がフレディアを大変気に入ったらしく、彼女の頭の周りをしつこく旋回し始めました


最初は適当にあしらっていたフレディアですが、あまりにしつこく彼女の頭の周りをブンブン飛び回って来るので、とうとう怒ったフレディアがハチを追っ払おうと、勢いよく振り回したホウキが見事に女神像の顔にヒットしたという、まるでお約束のような不運な事故なのでした。


「ど、ど、ど、どうしょう!?」

「もうすぐ神様が帰ってきちゃう!」


「あわわわ・・・」

「早く何とかしないと!」


何か良い手段はないかと、フレディアはキョロキョロと周りを見渡します。

そして台所にあったお釜が目に留まりました。


急いで駆け寄り中を確認すると、運よく朝食のご飯がまだ残っています。


「やった~!!」

「良かった!まだご飯が残っているわ!」


フレディアは飛び跳ねると、急いでお釜をかかえて女神像の所へ走って行きました。


この大ピンチの時にフレディアが閃いたアイデアは、2年ほど前にロファ王国のミントの町で起きたある出来事でした。


人の姿に変身したフレディアがよく通っていたレストランに、モモちゃんと言うウエイトレスさんがいたのですが、ある日モモちゃんが、マスターのお気に入りの花瓶を落として割ってしまった事があったのです。


ガシャ~~ン!


「あれれっ?!」

「マスターが大切にしている花瓶を落としちゃった~!」


「テヘッ!」


ちょうどお昼ご飯を食べていたフレディアに向かって、モモちゃんは悪びれる様子もなく、頭をコツンと小突き、舌を出して笑っています。


「えっ!だ、大丈夫なの?」


大切な花瓶を割ったのに平然としているモモちゃんを見て、逆に心配になったフレディアが尋ねました。


「大丈夫、大丈夫!」

「わたし良い方法を知っているから!」


そう言うとモモちゃんはお釜からご飯粒を取り出すと、ペタペタと花瓶の割れ目に塗り込んでいきます。


そして割れた花瓶のカケラを上手に組み込んでいくと、見事元の姿に復元できたのでした。


「うわっ!すご~い!!」


「モモちゃんって、魔法が使えたんだ!?」


「えへへ、まあね!」


「後はマスターが落としそうな場所へ置いといて・・・」


そう言うとモモちゃんは、そっとカウンターの隅に花瓶を置いて仕事に戻ったのでした。


その事を思い出したフレディアは、さっそく行動を起こします。


急いで崩れ落ちた女神様の頭を拾い上げると、お釜の中のご飯粒を塗り始めました。

そして、恐る恐る女神像の胴体にくっつけてみます。


「お~~~い、いま帰ったぞい!」


「フレディアはおるのか!?」


ドキ~~~ッ!!!


心臓が飛び出すほど驚いたフレディアは、とっさに女神像の頭から手を放しました。

それと同時にフレディアは全身の力を両手に込めて、頭を支える仕草でパワーを送り込みます。


「落ちちゃダメ~~~!!!」


するとほんのわずかなズレが発生しましたが、何とか落ちずにとどまっています。


「何を騒いでおるのじゃ?」


部屋に入って来た技術と創作の神様が、真っ赤な顔で「ふ~ふ~」言っているフレディアを不審に思って尋ねました。


「キャ、キャハハ!」


「おかえりなさい神様!今日は暑いですね!」


手でパタパタと顔をあおぎながら、フレディアは慌てて答えます。


「そうか?そんな汗をかくほど暑くは無いと思うが・・・」


「まぁ、よい!」


「そんな事よりフレディア!ダレス様からお前へ頼みごとがあるそうじゃぞ?」


「えっ、わたしに頼み事ですか?」


「うむ!」


そう言うと技術と創作の神様は、ダレス様からの依頼の話をフレディアに聞かせました。



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