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六十九回目
ぐつぐつと煮だった鍋の中に、私は入れられようとした。釜茹でされるほど業の深いことを私はしていない。それならば何故、釜茹でにされなければならないのか。
それは私がとても青々として茹でたら美味しそうなほうれん草だからだろう。
うん、意味がわからない。広い目で見れば、ほうれん草は植物で、植物は生き物だ。眼鏡とかから比べたら、生物に分類されるものに生まれただけありがたく思うべきなのかもしれない。
だが、茹で上げて食べられるだけ、というのは死因としてあれだ。そもそも死因になるのか。収穫された時点で死亡認定にはならないのか。ちょっと自分でも何言ってるかよくわからない。
まあ、あの鍋に放られた瞬間、私はまた次の世界へ行くことになるのだろう。なんだかな。
鍋はさしずめ次元の扉ってか。
とりあえず、次は人間の形をしているものに生まれたい。




