四十回目
「みんな、輝いてる!?」
「キャー!!」
会場の客席がどっと沸く。私はすっごい微妙な気持ちだったが、ファンサービスで手を振った。
私みたいな陰キャとは一番縁のないキラキラしたライブ会場。ファンの歓声、ラメ入ってるわけじゃないのにキラキラして見えるきらびやかな衣装。
私は、イケメンアイドルをやっている。
どうしてこうなった!?
振り返るとそんなに紆余曲折なく、本番前の仮眠から目が覚めたら私が入っていたらしい。なんで男性アイドルなんだよ。一応私女だよ? 転生先男率高くない? そうでもない? とりあえずこういうキラキラしたの自分でやるのは苦手なんだってばよ。
何の世界観かは知っている。姉がはまっていた音ゲーのアイドルだ。花丘真人、通称まーくんだったと思う。
よくわからないうちに本番を迎えることになってしまい、私は焦ったが、振り付けや歌詞、パート分けなどは意外と体が覚えているらしく、今のところ、支障はない。
まあ、花丘の記憶がないので、「まーくん、こっち見てー」「まーくんカッコいい」とかの歓声聞くと、どう反応したらいいかわからなくなる。
音ゲーは私がやっていたわけではないので、よく覚えていないのだけれど、姉の推しがこの花丘だった気がする。
ゲームのタイトルは「暗幕のスター」だっけ。変わったタイトルだな、と思ったけれど、音ゲーってそんなもんなのかな。
「みんな、今日は来てくれてありがとう!」
そう言ったのは、花丘の所属するユニットのリーダー的なポジションの真田悠莉だった。通称うりくん。私がぱっと見て好きだなと思ったキャラである。
曲が終わって、トークタイムに入るのだろう。たぶん。他メンバーと一緒に水を飲んでから客席に手を振る。きゃあきゃあ言われるのは慣れないが……
そう思っていると、頭上から大きな影が落ちてきた。
歓声が悲鳴に変わる。花丘の目で、霞む視界の中、最後に見たのは、どこまでも真顔な真田だった。




