表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
39/100

三十九回目

「先生、先生、目を覚まして」

「お願い、目を開けて」


 誰かが私にそう訴えかけてきた気がして、私はずきんと痛む頭を持ち上げた。

 すると、辺りは灯りのついていないオフィスだった。アルコールの独特な臭いが漂っているところを見ると、サラリーマンではないだろう。会社で酒盛りなんて言語道断だ。それはブラックだろうがホワイトだろうが、当たり前の話である。

 ということは、ここは病院だろう。見ると私は白衣を着ているので、「先生」というのは医者という認識で間違いないだろう。

 けれど、先程呼び掛けてきた少女の声の主を探したが、見当たらない。電気もつけていない部屋の中で、私は一人、机に伏せて寝ていたようだが、他に誰もいない。幻聴だったのだろうか。それとも、夢? 夜の病院というと、幽霊という可能性もよぎって、あまりいい予感はしない。

 ネックストラップから下がっている私のネームプレートには「伊賀崎(いがさき)(まい)」と書いてあった。顔写真も貼られている。温和そうな印象の黒髪の先生だ。見たことがある。

 確か、「氷点下で眠る病院」というホラー探索アドベンチャーゲームの主人公先生だ。

 現代的な世界観なのに、ファンタジー要素がちょろっと入っていて、心地のよい作品だったことを覚えている。あまり内容は覚えていないのだが。プレイしたの何年も前だからな。

 記憶を頼りに探索を開始する。机に揃えられたカルテには、一人の少女のものが一番上にあった。「茅崎(かやざき)道留(みちる)」という少女のものだ。ざっくり目を通すと、彼女は肺の病を患っており、喘息の発作が絶えない。更に過呼吸にもなりやすく、安眠ができないことに悩んでいた。

 精神病院を勧めようかとも思ったが、喘息の薬、肺機能補助の薬で安定したら、過呼吸の発作もよくなるのでは、という考えから、日々治療に努めている。

 伊賀崎は彼女の担当医だ。そして先程呼び掛けてきた声はお察しの通り、道留のものだ。道留により、伊賀崎は異空間となった病院を探索し、道留との関係を見直していく。これが通称「こごねむ」のストーリーである。

 よく覚えていないから、資料を見つけ、道留を探し、捕まえていく。夢遊病の患者の生き霊にぶつかるとSAN値が下がるので慎重に。

「ふふふ、先生、こっちだよ」

 追いかけっこを楽しむような少女の声に導かれ、追いかけていくが、彼女の姿は見当たらない。

 おそらく探索を全て終えた頃、彼女の病室に行くと、彼女はにっこり笑って月明かりの射す窓の傍に立っていた。

「先生、やっと来てくれた」

「ナースコールで呼べばいいのに」

「だって、これは夢だもの。私の描いた幻想」

 すると、夢から覚めればいいのだろうか。

 夢から覚めるためには……と私は彼女のベッドに身を委ねた。

 更に深い眠りへ、誘われるように。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ