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十八回目

 目を覚ましたとき、「死んだわ……」と思った。

 起こしてくれたのはメメント・モリサーカス団の団員サーシャだったからだ。

 Memento mori CiRCUS──それはこの世で最も楽しく、愉快でスリリングなサーカスである。この世というのは「合成猛獣ワンダーランド」の世界ラドルフラである。

 合成獣……所謂キメラというものは誰でも聞いたことがあるだろう。様々な獣が混じりあった存在で錬金術で作ったとか、魔法で出したとか、冥界の番人だとか。ラドルフラではキメラが合法的に作られている。

 ラドルフラは科学の発展した世界だ。ただ、「非科学」という概念が存在しない。科学が発達しすぎた故に、魔法のようなものが横行している。魔法を否定する世界ではないのが特徴的だ。

 このラドルフラでの物語はゲームなのだが、何と言ったらいいのだろう。舞台はメメント・モリサーカス団、サンクス教会、レット研究所の三つから選ぶことができ、自分が選んだ舞台を発展させる……まあ、育成ゲームのようなものだ。

 デイリーミッションをこなして、報酬でキメラを作るための素材を集める。最初は小さいキメラから始めて合成能力のレベリングをし、やがて上等なものを作れるようになったら、それを選んだ舞台に展示する。他プレイヤーから拍手をもらえると、更にアイテムがゲットでき、拍手をもらえばもらうほど、アイテムや素材の質が上がり、やがて「合成猛獣」というラドルフラでも最も難しいと言われているキメラの開発ができるようになってくる。

 レット研究所は地道なレベリング向きのストーリー展開があり、サンクス教会はキメラを神の使徒として扱い、アイテムドロップ率が高くなる。そしてメメント・モリサーカス団は……

 サーカス団の名に違わず、キメラを猛獣として使役することができる。つまり、見世物にするのが得意というわけだ。キメラ御披露目の際に、アクセサリーをつけ、組み合わせが成功すると、拍手効果が倍になる。

 その分、猛獣使いの修行というものをして、キメラ製作とは別にレベリングが必要なのだが。

 で、私が転生したのはメメント・モリサーカス団の……清掃員である。

 先程起こしてくれたサーシャはお転婆な猛獣使いで、大事な決め事もオールフィーリングで決めてしまう天性に恵まれた女の子。私は今、そんな女の子に雇われたキメラ小屋の清掃員の青年である。地味にも程があるだろ。ゲーム内では名前すらなかったモブの青年だぞ。顔グラフィックもなかったキャラに転生なんて信じられない。頭イカれてるんじゃないの?

 ただ、死んだ、と思ったのは、モブとはいえ彼がストーリー中に出てくるからだ。

 「合成猛獣ワンダーランド」、略して「豪腕」は育成がメインだが、細やかながらストーリーもある。共通メインストーリーと舞台特別ストーリーとキャラクターストーリーの三つ。

 で、サーカス団の清掃員の青年はこのうちの共通メインストーリーに出てくる死亡確定キャラだ。

 サーカスの初御披露目を前にした合成猛獣の部屋を清掃中に食べられて死ぬ。なんて地味な……。

 ちなみに清掃員にされた理由はサーシャが彼を一目見て「この人とっても猛獣に好かれそうだわ! 猛獣使いの素質があるかも」という鶴の一声を上げたからである。なんて不憫な。

 それでも清掃に行かなければならない。もうすぐ御披露目だからだ。ちゃんとしないとサーシャの鞭によりお陀仏である。進むも止まるも死。地獄か。

 合成猛獣の部屋は変な唸り声がする。はあ……

 掃除するのは埃などもそうだが、毛並みを整えたり、糞尿の片付けなどである。ちなみにこの合成猛獣はサーシャ拘りの猛獣で、糞尿は臭くなく、薔薇の香りがするらしい。意味がわからない。

 まあ、汚い仕事なので、悪臭に悩まされないのはいいことなのかもしれないが……

 と、糞尿を片付けていると、のそり、と合成猛獣が動いた。

 事は一瞬だった。

 あぐり。

 私は悲鳴を上げることもなく一飲みにされた。

 できればサーシャになりたかったよ。

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