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十九回目

「囚人番号七二三。起きろ」

 ばしゃり、と水をかけられる。檻越しだが、かなりの命中率でびしょ濡れだ。目覚めの気分は言わずもがな、最悪である。

 私はまたろくでもないところに転生したんだな、と思いながら、不機嫌に牢屋の外に目をやると、そこにいたのは人の形をした人ではないものだった。髪はなく、真っ白な肌を晒し、目であろう部分は瞳も光彩も白目もなく、ただ真っ黒く塗り潰されているだけである。瞼もない。

 口の中は紫色である。血は紫なのだろうか……というのはさておき、見るからに未知の生命体というか、宇宙人だな。

 囚人と言われたが……ああ。

 水をかけられたことでできた水溜まりに反射した自分の姿を見たことで納得する。看守と違い、淡いピンクの肌に赤い目を持つ宇宙人。こっちは私も知っている。

 ここは惑星テロール。どことも知れない遠い銀河の星である。「ソラノイロ」というほのぼの系SF(スペースファンタジーの方)作品だ。短い作品だが、映画化されたことでも有名な作品だ。アニメ版、実写版の二種類があり、CG技術がすごいとそういう方面から評価され、そういうジャンルに興味がない人の間でも広まり、一世を風靡した作品である。

 あらすじは、まだ見ぬ宇宙に存在するかもしれない宇宙人に憧れる地球の女の子、セナが様々な方法で宇宙人との交信を試していたあるとき、史上初の七色流れ星が空を埋め尽くす。その流れ星の欠片が落ちてきて、セナはそこでアルピカナという宇宙人との交信に成功する。

 宇宙人の存在を信じ続けるセナは周囲から浮いてしまっていたが、アルピカナと交流をするうちに、自分の身の周りの人との交流についても考えていくようになる。

 やがて、アルピカナとは交信が途絶え、けれど、アルピカナとの約束通り、自分の居場所も大切にすることを誓いながら、日常を送るようになる。

 まあ、アルピカナは惑星テロールの罪人で、処刑されてしまうのだが。まあ、セナへの言葉は遺言のような、過去の自分に向けてのような、切なさと後悔を孕んだものとなっており、映画を見たときはぼろぼろに泣いたものだ。

 ……そう、そうなのだ。今、アルピカナの私は処刑される。もちろん、死刑だ。

 セナはその可愛さで人気を誇ったのだが、一度も交信できず、終わるパターンかな? あの電波女子は私も好きだったのだが。

「おい、アルピカナ、もうすぐ処刑の時間だ」

 あ、無理っぽい。

「早く出ろ」

 うーむ、この世界に来たからにはセナとお話ししてみたかったけど、仕方ないか。

「今行きます」

「さっさと来いお前には恒星操作と異星交信の重罪がかかっているのだからな!」

 ああ、あの七色流れ星はアルピカナがやったんだっけ。それに他の惑星の生物との交信は禁止されているんだよね。

 アルピカナはこのテロールにおいて大罪人。けれど、彼は処刑台の上で叫んだ。

「僕は僕のしたことに後悔はない! さようなら、世界。また会おう!」

 私はそんなに幸せではなかったが、アルピカナはそう言い放って死んだ。

 ……そんなことが言えるようになりたい。

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