表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/5

第二話

 __________________________


【速報】東ヶ丘市立東ヶ丘中学校で放火の疑い 1人死亡


 16日午後5時32分ごろ、東ヶ丘市桜町3丁目の東ヶ丘市立東ヶ丘第一中学校で火災があり、特別棟2階の教室約40平方メートルが焼損した。


 東ヶ丘署によると、現場の状況から何者かが火をつけた疑いがあるという。校内にいた生徒43人と教職員5人は避難したが、同校3年の桃瀬在音さん(15)が意識不明の状態で発見され、搬送先の病院で死亡が確認された。


 警察は放火の疑いも視野に入れ、当時校内にいた関係者から事情を聴くなどして詳しく調べている。


 __________________________


 一年前のニュースをドキュメントにコピペする。そして、部分部分を消しては付け足して、削除しては挿入していった。モニターに映るのは、無機質な事実の羅列。一度大きな伸びをしてから、カーソルを動かした。


【削除】東ヶ丘

【挿入】〇〇


 ・・・・・・・・・・・・


【削除】何者かが火をつけた

【挿入】放火の


 ・・・・・・・・・・・・


【削除】桃瀬在音さん

【挿入】Aさん


 ・・・・・・・・・・・・


「できた。これで特定されないかな」


 __________________________


【速報】中学校火災で「奇跡の救出劇」 女子生徒に感謝状が


 17日午後5時28分ごろ、〇〇市△△町×丁目の〇〇市立〇〇中学校で火事が発生し、空き教室複数が焼損する事件が発生しました。


 〇〇署によると、校内にいた生徒82人と教職員7人は校庭へ避難しましたが、逃げ遅れた同校3年のAさん(15)が一時孤立する事態となりました。


 しかし、現場に居合わせた同級生のRさん(15)が、煙が充満する校舎で意識もうろうとしていたAさんを発見。自身の危険を顧みずAさんを背負って脱出し、奇跡的に一命を取り留めました。


 同署は、Rさんの勇気ある行動が尊い命を救ったとして、後日感謝状を贈呈する方針を固めました。


 なお、警察は放火の疑いも視野に入れ、引き続き詳しい出火原因を調べています。


 __________________________


 自室の窓枠に一人の少女が座り込んで、足をブラブラさせている。在音、いやAさんは顔も制服も綺麗に整っていた。


「うん!ありがと!ウチを助けてくれて!あーそうだ、この勢いのまま、あのお話書いてよ。修学旅行の『おそろいヘア』!」


 私は吐き気をこらえるように、大きく息を吸って、吐いた。

 私は画面に向かう。指先が走る。手首が震える。

 ____


「Rちゃん。そんな風にしたいの?」


 鏡越しに目が合うと、Aは優しく微笑んだ。

 自信なさげに頷く、Rの手から、そっとヘアアイロンを受け取った。


「大丈夫!ウチが魔法かけたげる!」


 ____


「あ、それいいね!可愛い! 梨花ちゃんのそういうマニアックなとこ、嫌いじゃないよ」


 在音は私の手からアイロンを奪い取り、新しいオモチャを手にいれた子供のように微笑んだ。


 ____


「ウチとお揃いなら、独りじゃないよ!」


 Aは、Rと同じ髪型に自らの髪を結い上げていった。

 ____


「見て見てみんなー! 今日は梨花ちゃんと『病みカワ』で合わせてみましたー!」


 重めの姫カットに、インナーカラーを覗かせたウルフヘア。


 男子たちがどっと沸きあがる。


「うわ、在音ちゃん何その髪! 新鮮!」「ギャップ萌えってやつ?」


 そして、私を見る冷めた目。


「隣に並ぶと、梨花ちゃんも綺麗だけどさ、やっぱり暗く見えちゃうよな」

「在音ちゃんがやるとオシャレだけど、梨花ちゃんは、なんか近寄りがたいよなあ。雰囲気がさあ」




 私はサイドの姫カットの髪を指でくるくると回しながら、保存をタップする。


「在音はもういない。だからこそ、こんなふうに思い返せるんだ」


 私はAさんを冷視した。


「死人に口なしってね。都合よく上書きしてあげるよ」

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ