30 藩主と会いました
「ハローハロー、あなたが藩主さんね」
藩主の屋敷。その庭園でアヤカ、ミステリアと藩主は顔を会わせていた。
アヤカたちは庭に敷かれた畳に座り込み、藩主は縁側で座布団の上に正座している。
「お主が今代のレイナか? 初代レイナの言伝ては残っておるか?」
ミステリアが〝レイナ〟と呼んだ若い女は、和風美人という言葉が良く似合う女性だった。
「はい。 わたくしの母、七代目レイナからあなたのお話は聞いております、黒金竜様」
「今は訳あってミステリア・ローレライを名乗っておる。 お主もミステリアと呼んでくれ」
「はい、では、ミステリア様。 長い旅でお疲れでしょう。 お連れの亜人の方と、お風呂にでも入ってゆっくりとご寛ぎください」
「ねえねえ、わたしなんか空気じゃない? ねえ」
「そうだ、紹介しておこう。 こちら、私の主のアヤカ・ローレライ殿だ」
「よろしく。 空気のアヤカでーす」
ここに来てようやく紹介されて、ブスッとした拗ねた表情でアヤカは雑な自己紹介をする。
スルーされたことが相当お冠のようだ。
「無視したのは悪かった。 レイナとの話が大切だったのでな……」
「ふーんだ!」
前世持ちとは思えないほど大人気ない対応。
世界よ、これが百六十才児だ。
「で、青金竜の情報はないの?」
「森林竜ですか? それならこの土地の最南端にある虚の祠が祀ってある洞窟に行けば、なにか分かるかも知れませんよ」
「それよ! そういうのが欲しかったの! ありがとう!」
「しかし、問題があります」
「どんな?」
「祠には百年前から凶悪なモンスターが住み着いており、ミステリアさまの助力が無ければ退治できないかと存じます」
「私程度で良いのか?」
「なら問題ないわね!」
ミステリアとアヤカは顔を見合わせて不適に笑いあう。
このくらいの障害なんて、なんてことないのよ!とでも言いたげだ。
「このくらいの障害なんて、なんてことないのよ!」
実際言った。
「あの、失礼ですが、あなたの魔力量ではかのモンスターには届かないかと思われますが………」
「魔力なんていいのよ。 わたしには〝気〟の力があるから」
「キ…ですか?」
「そう〝気〟。 生命の持つ神秘のエナジーよ」
アヤカの言うことが信じられないのか、レイナは疑いの目を向ける。
アヤカとしては、かなりストレスが貯まる面白くない状況だった。
「レイナよ、アヤカ殿の言うことは本当だ。 ここは私の言葉を信用してくれないか?」
「では、あなたの顔に免じて信じましょう」
爆発前にミステリアの助け船が入り、事態は事なきを得ることとなったが、あと少し助けが遅かったらアヤカはキレていた。
忍耐の二文字を知らぬアヤカに、我慢などできない。
ヤなことがあったらすぐ元●玉ぶちかまそうとするのがこの女だ。
「じゃ、今日はあなたのお言葉に甘えて休んじゃおうかな!」
長い旅で精神的に疲労が溜まっていたので、今日は休んで明日の朝一番に向かうこととなった。




